2017年6月28日05時00分
原発をもつ電力大手8社がきょう、株主総会を開く。今年も株主の市民や自治体が脱原発を求める議案を計60件近く出しているが、8社の経営陣はすべてに反対を表明している。
23日にあった東京電力の株主総会でも、株主提案はすべて否決された。各社とも「社会の理解を得て原発の再稼働を進める」と繰り返している。
福島第一原発事故から6年あまり。再稼働に対する世論は依然として厳しい。昨年の電力小売りの全面自由化で、電力会社の経営環境も大きく変わりつつある。原発頼みの経営を続けていいのか。大手各社の経営陣が説得力あるビジョンを示しているとはとうてい言えない。
株主提案の中には、現状を打開する策として、検討に値するものもある。
たとえば再稼働への「同意権」についてだ。原発の周辺自治体は事故後、同意権を含む安全協定の締結を電力会社に求めたが、各社は拒否している。
四国電力や北海道電力の市民株主団体は、事故時に影響が及ぶ恐れがあるすべての自治体と安全協定を結ぶよう提案する。四電の株主の本田耕一さんは「原発を動かすならそれぐらいの覚悟が必要」と話す。
関西電力の筆頭株主の大阪市は今年も8議案を出した。再生可能エネルギーの積極的な導入で脱原発を急ぐ一方、国主導で検討している使用済み燃料の処分方法が決まるまで原発を再稼働しないよう求めている。
吉村洋文市長は「事故のリスクやコストを考えれば原発が企業価値を高めるとは思えない。大きな方向性として再エネに転換していくべきでは」と説く。
九州電力の市民株主団体は、専門家や市民が加わる委員会で、電源別のコストを検証することを提案した。電力大手が、原発にこだわる大きな理由として挙げる「安い」は本当なのかを問い直そうとする試みだ。
経営陣はもちろん、多くの株を持つ機関投資家も、前向きに検討してほしい。
株主総会は本来、会社の将来について、株主と経営陣が建設的な対話をするための場だ。株主から出た意見を、経営改革や信頼の向上に生かす道を考えることを、電力大手各社の経営陣に強く求めたい。
今年3月の朝日新聞の世論調査では、54%が原発の再稼働に反対と答えた。賛成のほぼ2倍という傾向が続いている。再稼働への「社会の理解」が得られていない現状を各社は直視し、異論に耳を傾けない姿勢を改める必要がある。
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