【社説】韓国の脱原発を歓迎する日本の産業界

 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権による脱原発政策で韓国の産業用電力料金が値上げされれば、日本の産業競争力が高まる――。日本経済新聞はそう報じた。これまで韓国は原子力発電のおかげで日本よりも相対的に電気料金を割安に維持でき、それが外国企業の韓国への進出や投資の呼び水となってきたとの見方だ。日本の産業界の立場で言えば、割高な電気料金のせいで韓国よりもコスト負担が重かったが、韓国の電気料金が上がれば、それだけ競争力の回復につながる好材料というわけだ。日本経済新聞は韓国の原発輸出も打撃を受けると予想した。

 実際に韓国の産業用電気料金は日本の58.6%という低水準だ。発電単価が安い原子力と石炭の割合が電力生産の70%を占めるためだ。エネルギー経済研究院によると、脱原発・脱石炭を骨子とする新政権のエネルギー政策が実行されれば、発電コストは少なくとも21%増加する。原油価格が上昇すれば発電コストは当然上がる。電気料金が20%上昇すれば、経済全般に影響を与え、物価は1.16%上昇し、国内総生産(GDP)を0.93ポイント押し下げるという試算もある。コストが増えるだけでなく、液化天然ガス(LNG)、再生可能エネルギーでは安定的な電力需給は期待できない。「エネルギー安全保障」にも大きな穴が生じてしまう。

 日本は福島原発事故以降、原発の稼働を一度中断し、最近になって再稼働へと方向転換した。原発の割合を大幅に抑え、石炭・ガスによる発電割合を高めたところ、5年間で家庭用電気料金が19%、産業用電気料金が29%も上昇した。貿易収支の赤字も膨らんだ。こうした中、関西電力は8月からの電気料金値下げを発表した。稼働を中断していた高浜原発3、4号機のうち4号機の稼働を再開し、来月初めに3号機の稼働も再開するからだ。

 電力は国民生活と産業全体に決定的な影響を与える重要インフラだ。韓国の産業競争力は安価で安定的に供給される良質の電力のおかげによるところが大きい。環境理想論に陥り、現実を無視していては、これまで積み上げてきた産業競争力が揺らぎかねない。そのしっぺ返しを食らうとき、脱原発の決断を下した政権は任期が終了しているはずだ。今からでも政党や派閥を超えた国家的なレベルでの論議を始めるべきだ。

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