【社説】韓国政府は原発工事を中断する前に脱原発を再考せよ

 韓国政府は27日、文在寅(ムン・ジェイン)大統領主宰の国務会議(閣議)で蔚山市の新古里原子力発電所5号機と6号機の建設工事を中断することと、今後の建設再開については世論の動向を引き続き見極めていくことを決めた。また市民陪審員団を発足させ、判断に必要な情報を十分に提供した上でこの陪審員団に工事再開について議論させ、最終的に決めさせることにした。文大統領は今月19日、釜山市機張郡の古里原発1号機の永久停止宣言式で「新規の原発建設工事白紙化」や「既存原発の寿命延長はしない」などの方針をすでに明言している。

 新古里原発5・6号機は2011年の福島原発事故後に建設の審査が行われたこともあり、当時としては最新の設備が導入された。韓国水力原子力はその安全性について「古里1号機の10倍」と説明している。一方でこの建設工事には600社以上の企業が参加しているため、建設を中断した場合、すでに支払われた建設費1兆6000億ウォン(約1600億円)に加え、企業への補償に必要な1兆ウォン(約980億円)を含めて合計2兆6000億ウォン(約2600億円)の損失が予想されている。

 政府による脱原発政策は最初から納得し難いことの連続だった。「原発ゼロ」は文大統領の選挙公約だったが、その選挙陣営でエネルギー政策立案の責任者を務めた人物は河川環境を専門とする大学教授だった。そのため「原発ゼロ」というこの大きな方針も専門家による度重なる検討の末に出されたものとは到底言い難い。しかも政府は石炭火力発電所についても今後減らす方針を掲げている。原子力発電と石炭火力発電を減らせばその埋め合わせに液化天然ガス(LNG)による発電の割合を増やさねばならない。しかしここ5年の1キロワット時当たりの平均単価を見ると原子力は53ウォン(約5.2円)、石炭66ウォン(約6.5円)、LNGは142ウォン(約14円)だ。そのためLNG発電の割合を増やせばそれだけ電気料金を高くするしかない。しかも国際情勢の変化により石油や天然ガスなどの供給が不安定化すれば、エネルギーの97%を輸入に頼る韓国としては致命的な打撃となって跳ね返ってくるだろう。

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