東芝が米WDに1200億円を請求、不正競争防止法違反で東京地裁に提訴
- 虚偽の告知や機密情報を取得・使用、不正競争防止法などに抵触
- WDもすでに米地裁で売却差し止め請求、両国で法廷闘争が激化
東芝は28日、米半導体ウエスタンデジタル(WD)がメモリー事業売却の入札手続きを継続的に妨害しているとして、1200億円の支払いなどを求める損害賠償請求訴訟を東京地裁に起こしたと発表した。WDは同事業の売却に反対しながら、合弁相手として共同開発などに関わる状態を続けているなどとしている。
東芝は発表文で提訴の理由について、WDは、4月に分社した東芝メモリの他社への売却にはWDの同意が必要で東芝は同意権を侵害していると虚偽の告知をしたり、合弁事業や共同開発に関するアクセス権を持つWDの子会社の従業員をWDに転籍させるなどして東芝メモリの機密情報を不正に取得、使用しているとした。
東芝はこれらが不正競争防止法や民法上の不法行為に当たるとしており、差し止めを求める仮処分命令も申し立てた。今回の訴訟と合わせ同日から合弁事業や共同開発に関する情報からWDのアクセス遮断することも決めた。一方、WDは東芝メモリの売却は合弁契約に違反するとして、米裁判所に差し止めを請求している。
マッコーリー証券アナリストのダミアン・トン氏は、東芝が提訴した狙いについて「東芝はWDに反対されることなく、東芝メモリの売却を進めたいという意思をはっきりさせた」と指摘。ただ「両社の関係悪化を際立たせるものになった」とし、両社の今後の交渉は依然として厳しいものになるとの見方を示した。
東芝は債務超過解消のため、東芝メモリの売却手続きを急いでおり、21日に優先交渉先に産業革新機構や米投資ファンドなどで構成する日米韓連合を選定。しかし、売却先との交渉が難航しているほか、WDの妨害行為などもあり、当初目標としていた株主総会前の売却契約の提携には至っていない。
同社広報担当の平木香織氏は、支払を求めた1200億円の根拠について「東芝メモリの円滑な売却手続きが妨害され、営業秘密の不正取得及び使用によって発生した損害」と説明した。
東芝はこの日の取締役会で、3次元フラッシュメモリー生産拡大に向け、東芝メモリの四日市工場に導入する生産設備と工場増築を承認。東芝メモリが今年度中に総額約1800億円を投資することを決めた。生産設備への米サンディスク(WD子会社)投資参加は協議中で、参加しない場合は東芝メモリ単独で導入するという。