妻へ
驚くべきことが起きました!
娘から
デートに誘われたのです
7月2日、日曜に
娘は本当は
友達と行くつもりだったそうですが
友達がどうしても行けなくなったので
代わりに僕を誘ったとのこと
でもまだ本決まりではありません
月末の金曜までに
誰か他の人が見つかれば
そっちと行くそうです
要するに僕は
ギリギリの
補欠要員です
僕は平静を装って
どちらでもかまわないよ
それじゃあ一応
日曜は空けておくよ
と言いました
しかし内心は
冷静なはずがありません
まさか娘が
僕をライブに誘うなんて!
そんなことは
一生無いと思ってました
娘が小5の時に
君が死んで
しばらくは父娘で
仲良くやってたつもりでしたが
やはり君がいなくなってから
家の中は
音楽も
テレビの声も
二人ではどうにもならなかった
カラ元気は余計に空しくなるので
気付けば僕は
無口になっていました
やがて娘は中学生になり
強烈な反抗期が訪れました
派手に暴れたりはしません
とにかく僕と
一秒でも口を聞くのが
嫌みたいでした
同じ家にいながら
娘は僕を見えないものとして扱い
僕もいつのまにか
それに慣れていました
娘は僕に対して
静かに怒っているようで
それはもしかしたら
君が死んで
数年後に
僕に新しい恋人が
出来たことが
原因かもしれません
その恋人とは別れましたが
結局娘と会うことはなかった
娘はもう高二です
以前に比べれば
僕らの関係は
ずいぶんましになりました
少なくとも
家の中で
挨拶ぐらいは交わすし
時々
お酒を貰ってきて
僕にくれたりします
ごくたまに
しかし!それにしても!
今回のライブの誘いには
驚いています
まだ実感がわかず
フワフワしています
浮かれているわけではないですが
どうにも顔がにやけ
仕事になりません
それで僕は
得意先にアポを取りに行くふりをして
外出して
喫茶店に入り
こうして驚きを綴っているのです
日曜のライブは
君が大好きだったアーティストです
それは当然です
娘は君の影響で
そのアーティストの
大昔の話です
その時に誘ってくれたのが
君でした
素晴らしいライブだった
そういえば
娘にもそれを自慢した事がありました
妻へ
僕も娘も