MuseとDreamweaverは設計思想から対象ユーザーまで明確に差別化されている
Adobe Museは、Illustratorで作図するように、マウスドラッグと数値入力だけでWebページを作成するためのツールです。
HTMLやCSSのソースコードを表示することもできませんので、Webデザイナーを対象とした製品ではなく、IllustratorやPhotoshop、InDesignなどで仕事をしているデザイナーがメインのターゲットになっています。実際は、デザイナーに限らず、企業の広報担当者や学校の先生、病院の職員など、さまざまな業界で使われています。
同じWebツールのDreamweaverとは設計思想から対象ユーザーまで明確に差別化されています。現在のAdobeのカテゴライズでは「DreamweaverはWeb製品」「Museはデザイン製品」となっており、Adobe MAXなどのイベントでも、MuseはDTPのセッション群に含まれていました。
Museを導入し、業務で実績を出しているのはデザイン制作会社や印刷会社などが大半です。手がける案件は、期間限定で公開されるランディングページやプロモーションページ、新製品・サービスなどの特設サイトなどが多く、Webデザイン制作会社と競合する「Webサイト構築・運用」にはあまり使われていません。
私の講座でも、シングルページサイト制作の要望が多く「いかにクオリティを落とさず、素早く作成するか」を追求したカリキュラムを提供してきました。Dreamweaverの講座もやっていますが、Museと共有できる学習は「Webの基礎知識」や「アクセシビリティの重要性」など実作業以外の概論しかなく、Webデザインの進め方はまったく異なります。ほんとに同じWebページ制作なのかと疑ってしまうくらい違いがあります。
最近は「Webデザイン制作会社」もMuseを使うようになってきた
ところが、今年に入って少し状況が変わってきました。2017年はすでに30回ほどMuseの講座を開催していますが、Webデザイン制作会社も増えてきたのです。
ただし、Museの用途は限定的です。バリエーションが多く頻繁に公開/非公開を繰り返すようなシングルページ制作が中心。さらに、Museを使うのは「Webデザイナーではなく」、PhotoshopでWebカンプなどを作成しているビジュアル系のデザイナーたちです。
「WebデザイナーがWebサイト構築にMuseを使っている」ということではありませんので、大きな変化とは言えませんが、Webデザイン制作会社が(コーディングできないWebツールを)割り切って使うというのは今までなかったことです。
Museが使われる理由は以下のとおりです。
- Museの高機能化が進み、レスポンシブWebデザインのページなども容易に作成できるようになった
- 高度なウィジェット/ライブラリが充実してきた
- 最低限のアクセシビリティをMuse開発チームが保証している(コード改善などのフィードバックも常時受け付けている)
- この分野の仕事では、クライアントとのやり取りの大半がビジュアルデザインの修正
- Webデザイナーはメインのプロジェクト(Webサイト構築)の方で使いたい
- Museなら、PhotoshopでWebカンプを作成しているデザイナーが容易に習得できる
- 効果測定や広告運用も手がけているので連携できる
参考:
Adobe Muse CC上級編の課題(Dreamweaverで制作した高度なWebページをMuseで制作)
Adobe Muse CC上級編の課題(Dreamweaverで制作した高度なWebページをMuseで制作)
ランディングページやプロモーションページ、特設ページなどは、ビジュアルデザインが占める割合が特に高く、Webデザイナーが高度な視覚表現に費やす時間が増えるほどコスト高となり、まったく儲からない仕事になってしまうことも大きな理由です。
Museが自動生成するコードについても、CMSなどと比較して大差なく、Webサイトのように長期運用するものではないため(公開できる期間が決まっている)、クライアントが要求する品質に十分応えられると判断したようです。
※実際はMuseから書き出したHTMLをコード編集ツールを使ってクリーンにしていると聞きましたが、必須の作業というわけではなく、あくまでWebデザイン制作専門の会社として「最低限やっておくべき作業」と考えているとのこと。
Webのチラシとも言えるマーケティングに密接なランディングページ、期間限定で公開されるプロモーションページ/特設ページなど、シングルページサイトの分野はビジュアルのクオリティを求められ、同時に効率化(制作時間の短縮)も達成しなければ割りに合わない仕事になります。
JimdoやWixでは要求に応えられない(クリエイティビティの高い)領域で、Museが使われているのは納得のいく話ですが、すでにレスポンシブWebデザインなどの高度なページ制作が可能になったMuseが今後のアップデートでどのように進化していくか注視しつつ、ベストプラクティスを試行錯誤していきたいと思っています。
Creative Edge School Booksが運営している「Museアカデミー」も、Museの進化に合わせて、だんだん高度な情報が増えてきて、初心者に取っ付きにくい外観になってきましたので、近々「超初心者」のための学習ページを目立つところに追加する予定です。
Museアカデミー
参考:
Adobe Muse and Dreamweaver CC offer two different solutions for designing and building websites. Learn which one is right for you.
Creative Edge School Books
ebookcast@gmail.com
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