はじめに
日本では多くの歯科医院でホームホワイトニングが勧められています。自宅で寝ながら手軽にホワイトニングできるメリットがありますが、意外な落とし穴もあります。せっかくマウスピースを作っても、続かずに途中でやめてしまう方も少なくありません。ホームホワイトニングを始める前に、注意しておくべきことを書いておきますので、後で後悔しないように参考にしてください。
ヒント
- ホームホワイトニングは特殊な機械が不要で設備投資がかからず、型を取るだけで他の患者さんの治療に影響が少ないため、多くの歯科医院で扱われています。
ホームホワイトニングは白くなるまでに時間がかかります
ホームホワイトニングに使用される薬剤は、自分で行えるようにかなり低濃度になっています。通常2~3回の使用で1段階くらい白くなりますので、平均的な歯の色の方が白くなるまでには毎日頑張って使用して数週間~1,2カ月かかります。結婚式など、この日までに白くしたい!という期限がある場合は、お勧めできません。また白くなるまでにはかなりの根気が必要です。
ホームホワイトニング期間中は食べ物飲み物に注意!
ホワイトニング後24時間は着色性の食べ物は避けることが必要です。これは歯の表面を保護しているタンパク質の膜が一時的に消失してしまうため、着色しやすくなっているためで、ホームホワイトニングでも同様です。ホームホワイトニングを毎日行う場合は、その期間中ずっと着色性の食品を摂ることができなくなります。
着色性食品)コーヒー、紅茶、ウーロン茶、ココア、コーラ、赤ワイン、ベリー類、カレー、たばこ、 チョコレート、キムチ、ソース、しょうゆ、ケチャップ、合成着色料を使用した食品、色の付いたうがい薬など
本当に日中2時間、マウスピースができますか?
日中にホワイトニング後をする場合、マウスピースを2時間装着します。その間はもちろん飲食はできません。またマウスピースを入れていると、うまく発音ができなくなります。自宅での仕事の人や、全く人と喋らなくていい人なら問題ありませんが、通常の仕事をしている人は、本当にホームホワイトニングが可能かどうかよく考えたほうがいいでしょう。マウスピースを作ってしまってから、2時間の装着が必要である説明を受けてトラブルになるケースもあります。
意外!?ホームホワイトニングは本当はしみます
ホームホワイトニングはオフィスホワイトニングに比べてしみにくいと言われています。これはホームホワイトニングに使用する薬剤の濃度がオフィスホワイトニングの約1/10~1/5程度とかなり弱いためです。
しかしホームホワイトニングでは、薬剤がしみる最大の原因である歯がすり減った部分(特に下の前歯の先端部分)や歯のひびを避けて薬剤を塗ることができないため、低濃度の薬剤でもしみてしまいます。これが原因でしみている場合、ホームホワイトニングをするたびにしみてしまいます。特にすでに知覚過敏がある方はホームホワイトニングは向きません。
注意
- ホワイトニングを行う歯に虫歯がある場合、オフィスホワイトニングでは虫歯の部分をガードすることができますが、ホームホワイトニングでは虫歯の部分を避けてホワイトニングを行うことができません。虫歯がある歯にホームホワイトニングを行うと、歯の神経が炎症を起こし、激痛を伴うことがあります。
注意
- 20%以上の高濃度のホームホワイトニング剤を使用する際は、マウスピースの形が低濃度のものと変わってきます。高濃度のホワイトニング剤が歯ぐきに付くと、炎症を起こしたり、歯ぐきが下がる場合があります。また自分でお湯で作成する簡易型のマウスピースは、薬剤が漏れて危険ですので使用しないでください。
- ※30%以上のホワイトニング剤は、アメリカでも家庭用ではなく歯科医院内で行うオフィス用です。使用方法などによっては歯や歯ぐき、全身に重篤な影響が出る場合がありますので、絶対にご自分の判断で使用しないでください。
ポイント
- ホームホワイトニングの中断理由は
- ・毎回しみてつらい
- ・自分で行うのが面倒
- ・時間がかかる割に白くならない
- ・毎日の食事制限が厳しい
- などです。
虫歯がある場合または虫歯の治療痕に隙間がある場合は、ホームホワイトニングができません
虫歯がある場合、ホワイトニングを行うことで激痛が起こったり、虫歯を悪化させてしまう場合があります。オフィスホワイトニングであれば、虫歯の部分をガードしてホワイトニングを行うことができますが、ホームホワイトニングは虫歯の部分をガードすることができないため、必ず虫歯の治療を行ってからになります。また虫歯の治療痕と天然の歯の間に隙間ができている場合は、ホームホワイトニング前に詰め直しを行う必要があります。ご心配な方は事前に担当の歯科医師に相談してください。
白い斑点(ホワイトスポット)は目立ってきます
ホワイトスポットはエナメル質ができるときに、何らかの原因で石灰化ができていない部分で、乾燥やホワイトニングによって白い色が濃くなります。 オフィスホワイトニングはこのホワイトスポットを避けてホワイトニングを行うことができますが、ホームホワイトニングはホワイトスポット部分を避けることができないため、ホワイトニングをしていくと、ホワイトスポットがさらに目立ってきます。
歯並びによってはホームホワイトニングができないことがあります
ホームホワイトニングは歯の型を取って、その歯にぴったり合ったマウスピースを作製します。歯並びが悪い場合、マウスピースが入らない場合があり、ホームホワイトニングができないことがあります。また同様に矯正中の方もホームホワイトニングはできません。このような場合はオフィスホワイトニングを選びましょう。
歯ぎしりをする方、かみしめ癖がある方はホームホワイトニングは向きません
夜寝るときに歯ぎしりがある方や、日中かみしめ癖がある方は、マウスピースにすぐに穴が開いてしまい、薬剤が漏れてしまいますので、ホームホワイトニングは難しいでしょう。また歯ぎしりなどがあると歯が削れていることが多く、しみてしまいます。
全身的な疾患がある方も注意が必要です
妊娠中や授乳中の方はもちろん、胃に障害がある方、糖尿病の方、甲状腺異常(バセドウ病)の方はホームホワイトニングは避けたほうがいいでしょう。
犬を飼っている方は要注意です
実は意外にも犬はホームホワイトニングで使うマウスピースが大好きです。ホームホワイトニングが終って、うっかりマウスピースを犬の届くところに置いておくと、噛まれてぐちゃぐちゃになり、二度と使用できなくなってしまいます。マウスピースは高価なものですので、ホームホワイトニングが終ったら、ケースにしまうか、犬の届かないところで保管しましょう。また夜寝ているときにホームホワイトニングをされる場合、知らないうちにマウスピースをはずしてしまう場合があります。これも犬が見つけると噛んでしまいますので、注意しましょう。
ヒント
- ホームホワイトニングのほうがオフィスホワイトニンより透明感がある自然な白さになると説明する先生もいらっしゃいますが、実は科学的な根拠(エビデンス)はありません。昔のオフィスホワイトニングは酸性のものが多かったため、表面のみが白っぽくなっていましたが、現在ではオフィスホワイトニングでも透明感のある自然な白さにもできますので、一概には言えなくなっています。
ポイント
- ホームホワイトニングはテトラサイクリン変色歯など、長期間ホワイトニングを行うことで、オフィスホワイトニングでは白くできない歯でも効果がある場合もあります。
ホームホワイトニングを行う際は、後で後悔しないためにも、メリット、デメリットを十分に理解した上で行ってください。