今週のお題「もしも魔法が使えたら」
あきらとアーサー王の夢物語
「たのもう、たのもう。そこのお兄さん、ちょっとお願いがある。ワシに施しをくれんかね」
(誰だ、この汚らしいジジイは)
「腹が減って動けぬのだ。おぉ、そこにある松坂牛のステーキレストランで、ご馳走してくれんか」
(なんで、見ず知らずのジジイに、たまたま通りがかった僕が、そんなご馳走しないといけないのか?)
「いえ、急いでますので、無理です」
「お主はワシの事を知らぬのか。見てくれはぼろ切れのようなジジイかもしれぬ。しかし、ワシの本性は、ワシの本性は、、、」
「あっ、いたいた。ジイさんこっち、こっち。皆から離れたらダメじゃないか」
「おお、どこに行ったかと思ったら騎士の皆さんは、そこにいたか」
(騎士の皆さんですって? 変な格好のじいさんに騎士たち、コスプレ集団か。変なやつらに関わらないうちに、おさらばしよう)
「なあ、聞いておくれよ、騎士の皆さま方。この男、困っているワシが施しを求めても、断ってきたんじゃよ」
「ハハハ、それはマーリン、お主が余りにも汚いむさ苦しい格好をしているからじゃないか? 」
「なあ、マーリン。昔を思い出すなあ。俺も、この男と全く同じ場面に遭遇したことがあるぞ。その時のジイさんも同じ事を言われ、俺も、この男と同じ様に断ったっけ」
(マーリンですって? 汚いジジイがあの魔法使いのマーリン?)
「おお、思い出した。そうじゃったのう。これは騎士として困った人をちゃんと助けれるかのテストじゃ。外見ではなく、中身の人をちゃんと見なきゃ、騎士は務まらぬぞ」
「つまりマーリンは俺らを試したと言うことだな。汚い偽りの格好をして。マーリンこそ、人をだまして騎士失格だな」
「いやあ、ワシは魔法使いじゃて。騎士じゃないから、いいんじゃよ」
(なぜマーリンが、僕のそばにいるんだ? 魔法使って過去からやって来たのか? いや待てよ、まさか)
「あのう、つかぬ事を聞きますが、ここはどこでしょうか?」
「何を言っているんだ、ここは6世紀のブリタニアだぞ」
(げげげっ、中世のイギリスじゃんかよ。なんで僕がマーリンのそばにいるんだよ。一体僕はどうしちゃったんだ?)
「よく見ると、お前、実に奇妙な身なりをしているな。名はなんと申す?」
「☆彡アキラタナカです☆彡」
「ジャパン」
「ああ、シャンパーニュか。フランスではそんな奇妙な服が流行か?」
(どういう耳をしてるんだぁ? それに僕は現代人。君らのセンスじゃ理解はできないだろうよ)
「それはそうと、アリランとやら、お前もマーリンから俺と同じテストを受け、同じく落第した同士だ」
(魔法使いマーリンがいて、この立派な騎士は。まさかのまさか、、、)
「ハハハっ、アーサー王。まさか、この変な格好の男、俺たちの仲間に入れる訳ですか?」
(憧れのアーサー王!! アーサー王が目の前に。サインをもらわなきゃ。これはすごいお宝になるぞ)
「アーサー王! サインください!」
(い、言っちゃった!)
「はい、アリランも、ここにサインしてくれ」
「あ、はい」
(さらさらさら)
「はい、これで契約成立ね。あきらもこれから、俺たちの仲間ね。一緒に旅をしてもらうぞ。まず、甲冑に着替えて」
(アーサー王の仲間、それに甲冑。と言うことは、僕は憧れの円卓の騎士?)
「僕も、まさか円卓の騎士ですか?」
「ハハハ、まさか。円卓の騎士になろうなんて、君には100年早いよ。数々の試練を受けてテストに合格してからだ。まずは荷物持ちね」
(残念! でも、アーサー王と円卓の騎士たち、それに魔法使いマーリンと一緒に旅ができるなんて、信じられない。まるで夢の中にいる様だ。まさかドッキリじゃないだろうな)
「何だ何だ、あんな所に、剣が刺さった岩があるぞ」
「おお、なつかしい。これは、かつて俺が剣を抜き、ブリタニアの王となった、あの場面と同じではないか。よし、あの場面の再現をしよう。この剣を抜いた者こそが、真のブリタニア王だ。久しぶりだな、俺もワクワクするぞ」
(すげ〜。伝説の岩と剣に遭遇しちゃったよ。正に伝説のシーンが見れるかもしれない。なんだか分かんないけど、ラッキー)
「くそっ、ビクともしない。やっぱりアーサー王じゃないと、俺たちじゃ、抜けないわ」
「何だ、根性ないな。円卓の騎士は、全滅かよ。分かった、分かった。俺が手本を見せてやるよ。30年前に俺が抜いたシーンを見てなかったやつ、しっかり見ておけよ」
(これぞ伝説の歴史的瞬間。生で見れるってドキドキ。最高!さあ、始まるぞ)
「そ〜れ」
「うっ?」
「ううっ?」
「えっ? 抜けぬわ」
「よし、もう一度。うがぎぐげご〜っ!」
「おかしい、なぜビクともせぬのだ」
(えっ、これってNG大賞? まさか、にせアーサー王?)
「マーリン、お前何か魔法を使ってないか?」
「いいや、わしゃ、今は何もやってはおらんよ(昔はナイショよ)」
「変だなあ。お前たち、もう全員チャレンジしたか?」
「僕はまだですけど・・・」
「じゃ、アリラン、お前も剣を抜いてみろ」
「はい、いちにのさん、えいっ」
ス〜〜っ
(えっ、まさかっ)
これは夢なのか? 幻なのか?
今週のお題「もしも魔法が使えたら」、僕はアーサー王?
※おすすめ記事
- 作者: ジェイムズノウルズ,佐竹美保,James Knowles,金原瑞人
- 出版社/メーカー: 偕成社
- 発売日: 2000/07/01
- メディア: 単行本
- 購入: 3人 クリック: 16回
- この商品を含むブログ (5件) を見る
最後まで読んでくださり有難うございました。