2017年6月27日05時00分
自動車部品のタカタが、民事再生法の適用を申し立てた。エアバッグの異常破裂によるリコール費用の負担に耐えられなくなったためだ。負債の総額は1兆円を超えそうで、製造業では戦後最大の倒産になる。
タカタは、日本での自動車シートベルトの草分けであり、エアバッグでも独自技術で世界的なメーカーに躍り出た。自動車の安全に貢献することを掲げて成長してきた企業が、製品の欠陥によって、自らの基盤と存在意義を掘り崩してしまった。
1年前の株主総会で、創業家出身の高田重久会長兼社長は問題を謝罪し、再建のめどがついたら辞任する考えを示した。その後、再建策づくりは迷走を重ねた。経営陣が、関係者の話し合いに基づく私的整理を望んだことも一因とみられる。高田氏は製品の安定供給を続けるためと説明したが、結果として判断が遅れたのは否めない。
しかもその間、高田氏らは経営責任や再建の方向について、公的な場で説明をほとんどしてこなかった。昨日の会見でも関係者らに「心より深くおわびする」と述べたものの、社内体制や経営判断のどこに問題があったのか、具体的な分析や教訓は示さなかった。
問題の根本も依然、不透明だ。エアバッグ問題では関連事故で米国だけで11人が亡くなっている。米司法省は今年1月、タカタの元幹部3人を詐欺罪などで起訴したと発表。法人としてのタカタに巨額の補償基金や罰金を科した。
このとき、連邦検察官は「利益ほしさにデータを改ざんした」とまで批判した。だが、この際もタカタは簡単な声明を出しただけで、「米司法省との取り決め」を理由に、発表文以外の説明は拒否したままだ。
今後は民事再生法の下で再建が進む。裁判所が関与する法的整理の一つであり、透明性の高い手続きを期待したい。高田氏は経営から退く意向を表明し、創業家の保有株式も無価値になると見られる。遅きに失したとはいえ、当然のけじめだろう。
再建の過程で、関連事故の被害者への対応に遺漏があってはならない。米国での被害者には補償基金が積まれているが、その他の国ではどうなるのか。
問題のエアバッグの改修率も日本でも7割強、米国では4割以下で、早急な対応が必要だ。
自動車は生活を便利にし、経済活動を支える一方で、人を傷つける存在にもなる。自動運転など技術が高度になる中で、関係業界は安全性の向上に努める姿勢を改めて確認してほしい。
トップニュース
新着ニュース
あわせて読みたい