ソーシャルで話題になったこちらの記事を読んだ。(Yahoo!の記事は消えてしまうので元記事、はてなブックマークのコメントページも併せてリンクしておく)
避妊を教えた教師がクビ なぜ日本の“性教育”は進まないのか?
はてなブックマーク - 避妊を教えた教師がクビ なぜ日本の“性教育”は進まないのか? b.hatena.ne.jp
記事タイトルには「避妊を教えた教師がクビ」とある。本文より該当箇所を引用する。
AV女優の経験を持つタレントの総長ダリアさんは、1年ほど前に九州の学校の先生から相談を受けた。「保険体育の授業で自分は若いときに中絶をさせてしまった経験があるから、そういう悲しい思いをしないためにもコンドームを使わないといけないって教えたら、生徒の親に知れ渡って、PTAにチクられて。その先生がクビになっちゃったんです」と衝撃のエピソードを紹介。
違和感を覚えた。
「保険体育」は「保健体育」のことだろうがそこではない。つい先日、ドラマ「鈴木先生」を観て、中学校の保健体育ではしっかりと性教育がなされていると信じていたからだ。
ドラマ「鈴木先生」における性教育のあり方
Amazonプライムビデオに追加された「鈴木先生」。ドラマと映画をあわせて、577分。1話だけと思ったのにあまりに面白く最後まで一気に視聴してしまった。おまけに映画まで。
劇中の保健体育の授業、足子先生がコンドームの装着方法について説明するシーンがあった。たしか男女が同じ教室で聞いていたはず。別のシーンで「親御さんの中には文句を言う人もいる」という言及もあるが、避妊方法を教えるのは、現状の教育の正しい姿として描かれていた。
しかし、しっかり教育を受けても間違いを犯す子供たち。
エピソードの中には、小学校女児と関係を持つ中二男子を諭す回や、複数人と性交渉を持ち「ナマが好きなんだよー!」と叫ぶ中二女子を諌める回も。なかなかにタブーに切り込んでいる。もちろん、性教育がメインのドラマではない。ちょっとした学校生活の不満についてや、生徒がとる謎の行動の原因究明など、様々な問題と向き合う教師の姿を描いている。
鈴木先生は、間違った行いをただ「ダメ!」と力づくで抑え込むことはしない。冷静に、理知的に、かつ倫理に照らし合わせ、納得するまで議論する。教室ではまるで「これからの「正義」の話をしよう」(マイケル サンデル)のような熱い授業が繰り広げられる。
しかし、そんな鈴木先生はナマが好き。
つきあい始めの女性とデキ婚した鈴木先生、学級裁判にかけられるクライマックスは圧巻だ。性教育とは何か、生きるとは何か、生徒が泣きながら語る議論の行方に、心がブルブル震えてしまった。
まとめ
とはいえ、こちらはドラマの話。実際に、そんな授業をする中学教師はやはりクビになるかもしれない。
だからこそ、みんなで「鈴木先生」を観ればいいと思った。
コンドームの装着方法や、中絶シーンの映像で「性」を恐ろしいものと教え込む性教育ではなく、「鈴木先生」のようなその先にあるものが議論できればとても素敵なのに。
ちなみに「鈴木先生」は、テレビ東京の深夜枠で放送された当時、平均2.6%というテレビドラマ史上最低の視聴時間を記録。尖りすぎたテーマ設定は万人に受け入れられることはなかった。しかしこんなにも心を動かされるドラマはそうそうない。まごうことなき傑作である。
名だたる賞を受賞しまくったのが証左だろう。
- 第49回ギャラクシー賞テレビ部門優秀賞
- 平成23年日本民間放送連盟賞 テレビドラマ番組部門最優秀賞受賞
- 第38回放送文化基金賞 テレビドラマ番組賞
最後にあらすじを記しておく。
ドラマ「鈴木先生」のあらすじ
第1話
緋桜山中学2年A組の担任・鈴木先生(長谷川博己)は、同僚の山崎先生(山口智充)が開いた合コンで知り合った麻美(臼田あさ美)と距離を縮めていた。そんなある日、自分のクラスの岬勇気(西井幸人)が小4の女の子と性交渉を持ったと連絡を受ける。
第2話
普段は大人しい生徒・出水正(北村匠海)が給食中、頻繁に問題行動を起こす。見てわからないなら理由は言いたくないという出水の挑戦に、鈴木先生は5日間で原因を突き止めると約束する。
第3話
女子バレー部の顧問を務める山崎先生(山口智充)は、朝練中に足をつった河辺彩香(小野花梨)の介抱をしたことで、他の部員たちからセクハラだと反感を買ってしまう。そして、神田マリ(工藤綾乃)ら一部の生徒たちが、先生の人気投票を行ってワースト3を晒し者にしようと計画する。
第4話
昼休み、突然2Aから悲鳴が響き渡った。急いで駆けつけた鈴木先生(長谷川博己)は、血を流しながら倒れている中村加奈(未来穂香)と、そのそばでコンパスを握りしめながら興奮して立ち尽くす学級委員・竹地公彦(藤原薫)の姿を目にする。教室で一体何が起こったのか。
第5話
小川蘇美(土屋太鳳)の好きな人は誰なのか気になりながらも、それを断ち切る決意をする鈴木先生(長谷川博己)。その矢先、爽やかなイケメン体育教師・続木先生(夕輝壽太)がやって来る。続木先生を見た小川はなぜか激しく動揺。続木先生もまた、小川のことを知っている様子。
第6話
欠席を続ける竹地(藤原薫)が戻ってきやすいようにと、地ならしに着手する鈴木先生(長谷川博己)。竹地の家にプリントを届ける希望者を募った所、河辺彩香(小野花梨)が名乗りをあげ一人で行くと言い出す。竹地の家は共働きということもあり、悪い予感を覚える。
第7話
課外授業は足子先生(富田靖子)の乱入で、思わぬ展開へ…。そして、“鈴木式教育メソッド”の原点が明らかに!「今の学校教育は、手のかからない生徒の“心の摩耗”の上に支えられている」それは、教師になりたての頃に出会った、一人の生徒との日常の中にあった。
第8話
もうすぐ夏休み!鈴木先生(長谷川博己)のクラスでは、地元の夏祭りに生徒数名が参加するなど、教室内が活気づき始めていた。しかし、仕事も私生活も順調な鈴木先生に対し、足子先生(富田靖子)は苛立ちを深めていく。そのイライラは思わぬ形で爆発する。
第9話
恋人・麻美(臼田あさ美)の妊娠が発覚。結婚を決意した矢先、事態を知った生徒たちが鈴木先生(長谷川博己)をクラス会議にかける“鈴木裁判”を計画!鈴木先生を史上最大のピンチが襲う。
第10話
鈴木先生(長谷川博己)の“デキ婚”は罪か否か、ついに2-A生徒35名による“鈴木裁判”が開廷!足子先生(富田靖子)とB組の神田マリ(工藤綾乃)が隠しカメラで見守る中、議論は思いもよらない方向に…!鈴木先生の目指す生徒たちの心の変革は訪れるのか。
映画「鈴木先生」
2007年文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞した武富健治による原作を基に、どこにでもいそうな平凡な教師が、どこにでも起こり得る問題について過剰に悩みつつ、独自の教育理論によって解決していく様を描き、各方面で波紋を呼んだドラマ「鈴木先生」が、遂に映画化!