欠陥エアバッグ問題で経営が悪化したタカタは26日、東京地裁に民事再生法の適用を申請したと発表した。リコール(回収・無償修理)対象となった同社製エアバッグは日米で約4千万個が未回収だ。法的整理によりリコールに伴う債務支払いなどの機能を分離し、シートベルトなどの健全な事業はスポンサー企業が買い取り新会社で継続する。
タカタは2018年1~3月までに、中国・寧波均勝電子傘下の米キー・セイフティー・システムズ(KSS)が設立する新会社にエアバッグ組み立てやシートベルトなどの事業を譲渡する。寧波均勝は中堅自動車部品メーカーなどを買収し急成長している。
KSSのジェイソン・ルオ社長兼最高経営責任者(CEO)は日本経済新聞の取材に「出荷済みのエアバッグで発生した問題は旧会社が責任を負う」と話した。リコール費用などの弁済義務を負わない代わりに、新会社は旧会社に約1750億円を支払う。
自動車メーカー各社の未回収分を含めたリコール費用は約1兆3千億円にのぼるとみられる。米司法省と合意した自動車メーカー向けの補償基金などに充てる1750億円の弁済原資はリコール費用を大きく下回る。
ただ、自動車各社は17年3月期までに費用の大半を引き当てており今後の業績への影響を「軽微」としている。
エアバッグを膨らませる「インフレーター」と呼ばれる基幹部品の事業は旧会社に残す。リコールに必要な交換部品や受注済みの全量を作り終わる20年3月まで新会社を経由して自動車メーカーに供給を続ける。高田重久会長兼社長ら現経営陣は来春までに事業譲渡のメドが立った段階で退く。
日米当局がリコールを求めている対象個数は世界で約1億個に上るが、回収率は上がっていない。
タカタによると、米国ではリコール対象約5200万個のうち64%が未回収だ。事故車の修理時に流用された欠陥のある中古エアバッグが異常破裂を起こすといったケースもあった。
日本でも対象となる1882万個の27%が未回収で、日米合計で約4千万個の未回収分が残る。
自動車メーカーもタカタ製エアバッグを載せた車のリコールを急ぐ。
タカタの最大の取引先であるホンダは、約5100万個のリコール対象を抱える。直近の回収率は米国が59%、日本は87%。米国では中古市場に出回る対象部品を買い取っているほか、探偵を雇って対象車の転売先をたどり修理を促している。