ハーバード・ビジネス・レビューで、新規の採用者をどうやって組織にうまく順応させていくか、というなかなか面白いテーマの記事があったのでご紹介。
まず、70の心理学研究をメタアナリシスしたこの論文では、自分がその組織に「受け入れられている」と感じることが、組織での成功で重要な要因であることを示している。それに関連し、インドのソフトウェアエンジニアに対して実施された研究では、組織に「受け入れられている」と感じている社員ほど積極的に情報を求める行動をすることが明らかにされている。さらに、409人の新卒採用者に対して実施された研究では、最初の2年で上司から適切なサポートを受けたかが、その後の役割の理解度、仕事への満足度、さらには給与にまで好影響を与えたことが示されている。
つまり、組織に「受け入れられている」と感じていることが重要で、それは組織側にサポーターがいることで促進される。そしてその役割を期待されるのは、やはりマネージャーということになる。
一方で、マネージャーは非常に忙しく、新しく入社してきた人をきちんとサポートしていくのはなかなか難しいのが現実。
そこで面白いのが、インドのソフトウェアエンジニアに対して実施された心理学の研究。これは、マネージャーから入社後サポートを得られる人とそうでない人がいるのはなぜか、という仮説を調べた。結果として分かったのは、積極的で役割にコミットし、自ら情報を集めたり、広く社内コミュニケーションを深めていこうとする人ほどマネージャーのサポートを得られており、結果として組織への順応が高い、ということ。
これはなかなか興味深い結果で、動機づけが強く自ら情報の取得やコミュニケーションの構築に動く人ほど、結果としてマネージャーの信頼や共感も得やすく、組織にうまく受け入れられていく好循環を生み出す。その循環は心理的な安心感をも生み出し、実績を出していく支えとなる。
組織というのは常に流動的なので、その動的なサイクルに自らを位置づけることは重要だが、全く新しい組織に加入した時はなかなかそのきっかけを掴めずに、うまく実績を出せない人は多い。特に外資系は中途採用が中心となるが、前職では大きな実績を出してきたであろう人が、自らを新組織にうまく順応させられずに、1年も経たずに辞めていってしまうような事例はとても多い。
その観点からも、その組織に深くコミットし「自ら」能動的に動いていくことが、組織にうまく順応していく循環が回り出す鍵になる、というのはなかなか示唆的で、他の領域でも応用できる知見なのではと思う。