2017年6月26日05時00分
五輪の行き詰まりを端的に示す話と言っていい。
東京の次の24年夏季大会をどこで開くかが、ことし9月に決まる。国際オリンピック委員会(IOC)は先日の理事会で、次々回28年大会の開催都市も一括して選ぶ方針を明らかにした。24年はパリ、28年はロサンゼルスになる見通しだ。
開催地は大会の7年前に選定するという規定があるなか、異例の判断だ。背景には肥大化した五輪への強烈な逆風がある。住民投票や世論調査で「五輪ノー」の民意を突きつけられ、撤退する都市が近年相次ぐ。
幸い24年大会にはパリとロスが名乗りを上げている。一方を有力候補のない28年にまわすのは、当面の対応としては良いアイデアかもしれない。
だが、どちらもすでに2回ずつ開催した実績をもつ。今や限られた巨大都市しか五輪を引き受けられないのが現実だろう。果たしてこの世界最大の祭典を今後も続けていけるのか。
わずか17日間の大会に、小国なら1年分の国家予算に当たる巨費がつぎ込まれる。それが今の五輪だ。豪華な施設を造ったのはいいが、大会後、廃虚と化している例は珍しくない。
「五輪は政府、スポーツ界、財界などが結託して公金を浪費する事業だと、市民から懐疑的に見られている」
バッハIOC会長自身の言葉を、IOCはもちろん、競技を運営する国際競技団体も真摯(しんし)に受けとめ、ともに抜本改革を急がなければならない。
1970年代にも危機があった。76年モントリオール五輪はオイルショックによる物価高騰で膨大な赤字を計上。返済に市民の税金が使われ、立候補をためらう都市が続いた。
IOCは84年ロス五輪から大胆な商業主義の導入に踏み切った。高額のテレビ放映権料などが入るようになって難局を切り抜けたが、その後も大会の巨大化は続き、現在に至っている。
IOCは3年前に、種目数を310、選手数を1万500人に抑える目標を掲げた。しかし東京五輪で早くも棚上げされ、疑問の声が出ている。大会規模の抑制と経費の削減は至上命令だ。施設の新設や改修にあたっても、大会後の利用見通しについて、これまで以上に冷徹な評価が求められる。
むろん東京も例外ではない。あわせて、会場に大観衆を集めなくても各地で迫真の競技を楽しめるよう、仮想現実(VR)映像を積極活用するなど、将来につながる工夫にとり組んでほしい。改革は待ったなしだ。
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