私家版「博多美人論」 〜「空気」が美人を作っている〜《5,063文字全文公開/期間限定》

なぜ福岡に美人が多いと感じてしまうのか?
福岡天神を貫く渡辺通という大きな通りがある。
百貨店の大丸や三越、パルコなどの商業施設が立ち並ぶ、福岡のメインストリートの一つで、この地下には、天神地下街があって、晴天の日でも多くの人が行き交っている。福岡のみならず、九州最大の繁華街といっていい。
僕は東京から福岡にいくと、午前中は、この渡辺通のスターバックスで仕事をしていることが多い。通りに面したカウンター席で作業をするのだが、ふと顔を上げてぼんやりすると、行き交う博多女子の美しさに、目を奪われ、心を奪われ、気づけば時間を奪われてしまう。
とにかく、やばいのである。もし、仕事をせずに、ぼうっとしてそこでコーヒーを飲みながら、見続けていいのであれば、きっとストレスの類は綺麗さっぱりと消えてしまうのではないかとさえ思う。行き交う美人が、心の何かを充足させるのだ。
あまりに「美人率」が高いために、最後には、イライラして舌打ちしたい衝動に駆られてしまう。何か、この街はズルいと思ってしまうのだ。
僕の本拠地は東京の池袋だけれども、池袋でこんな思いをすることは、ない。
いや、たしかに、池袋にも同じような美人が数多くいるに違いないが、その「率」が圧倒的に違うのだ。
それを感じるのは、渡辺通だけではない。電車に乗ると如実にそれを感じる。同じ車両に乗ったときに、福岡の地下鉄の場合は、車両における美人の割合が実に高い。東京の山手線ではそう感じることは稀である。それは、どうやら、僕だけがそう思っているわけではないらしい。
ある博多女子の方が、こんなことを言っていた。
「この前、東京に遊びにいったときに、始めて福岡には美人が多いと言っている意味がわかった」
そうである。生まれてからずっと福岡にいる人にとっては、周りに美人がいる環境は「日常」であって、「普通」以外のなにものでもない。けれども、一旦、それ以外の場所を体験すると、その差を感じてしまうことになる。
僕は元々、宮城県出身で、昔、帰省の際に田舎から新幹線で東京に戻ってきた際には、なんと東京の人は美しいことかと毎回驚愕したものだが、福岡から東京に戻ったときには、そうは思えないのだ。やはり、福岡は美人だったと再認識してしまう。
それでは、なぜ、福岡には美人が多いと体感的に感じてしまうのだろうか?
おそらく、それは「美人率」の問題である。
「美人率」の高い街
期間限定で表参道に店を出していたときに、頻繁に表参道に通っていたときがある。その際に感じるのは、雑誌に出てくるような「S」級の美人を、結構な頻度で見つけられるということだ。
実際に表参道にあった天狼院にも、誰もが知っている芸能人や有名なモデルさんが数多く来ていたという。それもそのはずである。東京は、決勝戦の街であり、全国の選りすぐりの美人が、決勝戦を戦うために集まってきている。そう考えると「S」級の割合は、間違いなく、東京が全国で最も高い。なぜなら、出版の9割は東京に集中していて、雑誌などの媒体を担うモデルや芸能事務所、カメラマンの多くも東京を拠点にしているからだ。
福岡は、そういうことはない。「S」級の、主にマスメディアを通して全国的に「商品」として通用する美人をみかけることはめったにない。
それなのに、福岡には美人が多いと感じるのは、「美人率」が圧倒的に高いからだ。「S」級美人の絶対数と「美人率」の関係性は、実際の気温と、体感温度くらいの差がある。
たとえば、美人というものを見た目だけで「S・A・B・C・D」とランク分けをするならば、全国に流通する雑誌のモデルやテレビに出る女優などの「S」級の数は、極めて少なく、そのほとんどが東京に集中している。「S」級は、東京でも、表参道や代官山などの、局地的な場所でしかみかけることはない。
福岡に多いのは、その手前の「A」級、「B」級の美人である。この割合が極めて高い。渡辺通や地下鉄でみかけるのも、この層である。人口比の関係で美人の絶対数は、東京に及ばないだろう。文化的な理由から、「S」級の数もそうだ。けれども、福岡は「A」「B」級美人の割合が多いので、体感的に美人が多いと老若男女問わず、感じてしまうのだ。
それでは、なぜ、福岡は「美人率」が高いのか。
前提「美人」は創ることができる
この特集を企画したのは、もう2年以上も前のことだった。
そこから、なぜ博多美人は美人なのか、という理由を、様々な人から聞いた。たとえば、それにはこんな説があった。
・大陸系とポリネシア系と日本系のDNAがミックスされているから、そもそも九州は目鼻立ちがくっきりしているなどの「DNA美人説」
・福岡市が発表している統計データにもあるように、結婚適齢期の女性の人口が男性よりも多いので、恋愛競争が熾烈になるために美人が多くなるという「人口統計美人説」
・「人口統計美人説」にも関係するが、九州の人は、娘を本州に行かせたくないが福岡までなら許すという感覚があるらしく、それゆえに福岡に九州中の「クラスで一番の美人」が集まったという「福岡までなら許す美人説」
・韓国や台湾などの整形大国が地理的に近く、その影響を受けているという「整形美人説」
・これも「人口統計美人説」にも関係するが、美容関係のコンテンツが質が高く値段が安く、費用対効果よく「美」を手に入れることができるという「美容コンテンツ美人説」
たしかに、そのすべてがもっともらしく聞こえた。そして、実際に、そのすべてがある意味正しいのだろうと思う。けれども、僕にはそれだけでは納得がいかないのだ。
実際に体感している「博多には美人が多い」という感覚を、どれも説明しきれてはいないような気がしてならないのだ。なにか、重要なピースが見つかっていないような気がした。
ここで、先程の仮説に戻ろうと思う。先程の仮説とは、博多には「S」級美人は東京よりも少ないけれども、「美人率」が高いということだ。それは、「A」級「B」級美人の割合が多いということだ。
そして、ここで重要なのは、「S」級の美人は創ることは難しいが、「A」級「B」級の美人は創ることができる、ということだ。たとえば、「S」級美人とは、175センチ以上身長があって、しかも細く、九頭身であるような美人のことで、これは高度な整形手術をもってしても、創り上げることは難しい。
けれども、「A」級「B」級美人は違う。髪型やメイク、あるいは、ダイエットなどのトレーニング、ファッションなどである程度創り上げることができるのだ。
つまり、福岡の街が「S」級の美人の絶対数を増やすのは難しいが、「A」級「B」級美人の割合、つまりは「美人率」を上げることは可能だということだ。
問題は、なぜ、福岡という街は、「美人率」を上げなければならないのか、ということだ。言い換えれば、福岡に住む女性は、なぜ「美人」にならなければならないのか。そのインセンティブ、つまり、動機は何なのか?
福岡の女性が「美人」にならなければならない理由
それには「福岡までなら許す美人説」が大きく関係している。
この親、本州に行くのはダメだけど福岡までなら許す、という感覚は、女子だけに適用されるということだ。男子が首都圏や関西に出ることに、九州の親たちはそれほど抵抗がない。
この文化的な感覚が、結果的に福岡市も発表している、結婚適齢期の人口の男女比にも如実に現れている。が圧倒的に女性の方が多い。20代で区切って言えば、男性よりも女性の方が、約1万人ほど女性が多いという結果が出ているのだ。
たとえば、簡単な思考実験で福岡の20代同士が結婚するとすれば、女性が1万人余るということになる。
統計的に余るということがわかっていれば、女性たちはどういう行動に出るだろうか。
受験などを思い浮かべてみるとわかりやすい。定員が少ない大学や学科に対しては、必然的に競争率が高くなる。何としても数限りあるその定員に入ろうと、熾烈な受験戦争が起きる。
おそらく、福岡でも、そういうことが水面下で起きているのだろう。統計的に明らかに結婚適齢期の男性の数が少ないとなれば、パートナーを見つけることも、競争となる。競争を勝ち抜くために、もっとも簡単で効果が高い方法は、きっとTOEICの点数を上げることでも、料理を覚えることでもない。美しくなることだ。美しくなることほどの効果を、他のどれもが上げることはできない。
しかも、福岡の街には、費用対効果が極めてよく「美」を手に入れることができる美容関係のサロンやショップが数多く存在する。そうであるのなら、「美人」にならないという選択をするほうが難しい。もっとも、卵が先か鶏が先か的に、そういったニーズがあったからこそ、福岡の街は、費用対効果がよい「美」が提供されるようになったのだろうが。
多くの女性が「美人」を目指すようになると、「美人」を目指すこと自体が当たり前になる。逆に、「美人」を目指さないことのほうが、傍目からすると
異様に映るようになる。
こうして、「美人」になるための目に見えない「空気」が醸成されていったのだろう。
「空気」が美人を作っている
天狼院のスタッフは、女性が多い。東京から出張で来ることも多い。
東京から来るスタッフが、数ヶ月福岡に住むと途端に「美人」になるという現象があった。しかも、次に関西に赴任すると、福岡のレベルを保てなくなった。
これは、いったい、どういうことだろうか。
DNAが問題でないことは、明らかである。問題は、福岡で提供される「美」関係のコンテンツの質が極めて高いということだ。そして、東京・関西と福岡の大きな違いは、東京・関西では、変な言い方になってしまうが、「美人でなくてもいられる」優しい空気がある一方で、福岡では「美人でなければいられない」厳しい空気があるということだ。
これは、法律や条例で定められているわけではなく、これまで述べてきたような様々な要因、特に人口統計的な理由から、「美人」でなければ幸せが手に入れられない可能性が、福岡では高いということが原因している。
いつだって、どの世界でだって、「空気」は様々な要因が綯い交ぜになって醸成される。たとえば、戦中日本人は、軍人や政治家だけではなく多くの人が戦争をしなければならない「空気」に飲まれた。その「空気」は、太平洋戦争前後のみならず、おそらくは、少なくとも江戸時代まで遡らなければ発生原因を特定することは難しいだろう。
それと同様に博多美人を創っている「空気」は、様々な要因によってできあがっているので、一説を切り取って原因だと特定することはできない。
あらゆる原因が、絡み合い、必然として福岡の女性が美人にならなければならない「空気」があの街には充満しているのだろうと思う。
「空気」とは、意外に強い圧力を伴い、結果的に強制力が働く。
そうであるなら、この「空気」を効果的に利用する方法がある。
もし、美人になりたければ、福岡の街に住めばいい。
おそらく、あなたはこの街に充満する美人にならなければならない「空気」の圧力によって、しばらくすると美人になるだろう。ただし、美人になる目的がより良いパートナーを見つけるためなら、福岡はおすすめしない。
なぜなら福岡は、そういった美人たちが、数少ない男性の隣の椅子を巡って激しいデッドヒートを繰り広げる、修羅の国だからだ。
また、逆に博多美人の方々におすすめしたいことがある。
その「美度」を保って、東京に来たならば、より良いパートナーを簡単に見つけることができるだろう。けれども、そのためには、まずは両親を説得しなければならないだろう。その「福岡までなら許す」の呪縛を突破することができれば、恋愛的な幸せを掴むのはそう難しくはないが、その呪縛こそが強力で破り難いことを、あなたは誰よりも知っているだろう。そして、死闘をくぐり抜けて、東京に渡ったとしても、東京でその美を維持することは難しいことを思い知るだろう。たとえば、表参道や代官山で暮らしたり働いたりするのはコストがかかるし、東京で「美」を買うことは、福岡よりもはるかに高いからだ。そして、何より「空気」がない東京で、美への意識を高く保つことは、想像以上に難しい。
そう考えると、まさに、博多美人の美しさとは、シンデレラのように、限定的で儚いものなのかもしれない。
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