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金色の文字使い ~勇者四人に巻き込まれたユニークチート~ 作者:十本スイ

第八章 激化する戦争編

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第三百七十五話 聖地へ訪問

「あ、あのヒイロさま! ミミルにも教えて下さいますか?」
「当然だろ。お前自身のことだ。聞いたら教えてやる」
「ヒ、ヒイロさま……」


 ミミルが嬉しそうに頬を染めて笑みを浮かべている。ミュアが隣で「良かったね」と言って喜びを分かち合っている。


「それならミミルについてはヒイロに任せるとしてだ、問題はその神のシステムについてだ」


 レオウードが話を戻す。


「本当にアヴォロスは、我々の意志が誰かに操られていると本気で思っておるのか?」
「さあな、ただそうとしか思えない状況を味わったから、奴は戦争なんて起こしてまで何かをしようとしてるんだろ」


 その何かが分からない。何故戦争を起こすことが神のシステムを乗っ取ることに繋がるのか……。


「とにかく、奴の動機は分かった。問題は奴が多くの力を求めていて、世界に痛みをばら撒こうとしていることだ」


 ララシークが不愉快そうに言葉を述べると、


「師匠の言う通りですね。ミュアやミミル様みたいな特別に力の強い者を集めているし、確か《初代魔王の核》や《ナーオスの灯》とやらも奪われたんでしょ?」


 《ナーオスの灯》というのは【聖地オルディネ】の《オルディネ大神殿》の地下に安置されていた、過去の勇者が命を張ってまで守ろうとしたものだ。


「そういや《ナーオスの灯》ってどういうものなんです?」


 アノールドが傍にいるララシークに尋ねると、彼女は着用しているよれよれの白衣のポケットに手を突っ込みながら答える。


「詳しいことは秘匿されてるぜ」
「そうなんですか?」
「ああ、というよりも多分《ナーオスの灯》が存在してるってことを知ってんのは極僅かだ。その上アレが何のために存在しているか知ってるのなんて数えるほどの奴らしか知らねえんじゃねえか?」
「師匠でも……ですか?」
「まあな。ワタシも興味があったから以前【オルディネ】に行って調査したことはあるが、結局何も分からずだった」
「そっかぁ、師匠でも……ヒイロは何か知らねえのか?」
「実物があるなら調べることはできるが、あいにく見たこともないから調査しようがない」


 ここにあるのなら『解析』や『調査』の文字などを使えば存在理由も証明できるが、手元に無い情報を調べても詳しくは調査できないのだ。一度目にしていれば別なのだが。


「ただ居場所はやはり【シャイターン】にあるようだな」


 居場所くらいは調べられたので、一応どこにあるかは探ってある。あのアヴォロスがわざわざ手に入れるほどのものだからこの戦争でも貴重なものだということは把握している。


 だからこそ今回の日色の【シャイターン】破壊でともに壊れていれば僥倖なのだが、それほど楽観はできない。
 恐らく《初代魔王の核》とともに厳重に保管されているであろう。


「とにかくまだまだ戦争は始まったばかりだ。今はオレの奇襲で先手を取ってるが、部隊の様子はどうなんだ?」
「城が落ち始めた瞬間が合図だとヒイロに言われてたから、ワシらは一気に人間界へ部隊を送り込ませた」


 レオウードの言う通り、事前に城を落とすから、その前兆を感じたら一気に人間界を攻略し始めろと日色はアノールドを通してレオウードに言っておいた。
 その通告通り、レオウードは人間界へと繋がる両橋から大部隊を次々と侵入させた。恐らく敵側は城の防衛に集中して侵攻することはできなくなると踏んだ日色の作戦だった。


 作戦は見事にハマり、人間界にいた黒衣の者たちも次々と城へと帰還していき、人間界にいるゾンビ兵の動きにも統率がなくなり倒して突き進むのが容易にはなった。
 今は《奇跡連合軍》が人間界にかなりの数が攻め入っている。そして【シャイターン】を囲むように部隊を待機させることができている。


「しかし現在届いた情報によるとだな……」


 レオウードから、突然【シャイターン】を守るように出現した森のことや、その上空に現れた謎の黒衣の人物のことなどを聞いた。


「なるほどな。やはり黙ってやられっ放しじゃないってわけか。それじゃ急務はその奇妙な能力を使う黒衣を叩くことだな」


 日色の言葉にレオウードが頷く。そしてオーノウスがその対処に動き始めたという情報も耳にする。


「一人でか? 敵は本陣の中にいるも同然だぞ?」


 そう、上空とはいえ黒衣は【シャイターン】が落下した領域にいるのだ。しかも罠のように作り出した密林もその周囲には茂っている。一人で森を突っ切り、ましてや幹部クラスであろう黒衣と戦うのは無理があるというものだ。


「無論援護はする。だが密林の敵を阻む能力が厄介でな、なかなか近づけん」


 レオウードが険しい表情を作ると、日色は思い切って幾つかの部隊に森を突っ切らせたらどうだと提案する。
 このまま手をこまねいているわけにはいかない。しかし外から相手にダメージを与えられないのであれば、やはり危険を冒してでも中に侵入し内部から破壊した方が良いと思った。


「それも考えたが……ララ、どう思う?」
「実は兵士たちの中にも森の中に入ることを勧めてくる者たちがいます。一度ヒイロの言うように最大限の注意をもって侵入させてみるのも手ではないかと」
「ふむぅ……」
「それにあの森とて魔法で生み出したもののはず。あれだけの規模、そう複雑な能力を持たせるのは無理があります」
「……よし、ならこうだ」


 レオウードがテーブルの上に地図を広げて【ヴィクトリアス】の位置に指を差す。


「ここに【シャイターン】が落下した。そして城を中心として円を描くように密林が生み出されている」


 その規模は半径三百メートルといったところだ。これがもし一人の魔法使いの仕業だとしたらとんでもない所業である。


「この森の周りにはすでに多くの部隊が待機している。そうだな……では幾つかの分隊に、最初は、三時、六時、九時、十二時の方向から侵入させるか。そして時を見て今度は一時、四時、七時、十時の方向から新たな分隊を送る。分隊の構成は三人一組で様子を見る。これでどうだ?」


 レオウードが皆に意見を窺うように顔を見回す。ララシークが一早く頷きを返す。


「そうですね、とりあえずはそれで様子を見てみましょう。ただし、さっきも言ったように、兵士たちには最大限の注意をさせるように厳命して」
「うむ、ではララ、そのように言伝(ことづて)を」
「はい」


 ララシークが踵を返して白衣を揺らしながら室内から出ていった。


「ならオレらも行くか」
「え? ヒイロさま、戻られるのですか?」


 不安気にミミルが見上げてくる。


「ああ、少し調べたいこともあるからな」
「そ、そうですか……」
「もう少しいてほしかったです……」


 ミュアもミミル同様に悲しげに顔を俯かせている。


 トン……トン……


 そんな彼女たちの額に軽く指先で押すように触れる。


「「あ……」」


 日色は二人の顔を交互に見てから一言。


「じゃあな」


 ミュアとミミルは互いに額を嬉しそうに破顔しながら触っている。そんな様子を見てレオウードは納得して言うようにウンウンと頷いているがアノールドはどこから取り出したか分からないハンカチを噛み千切らんばかりに咥えて悔しがっている。


 日色は『転移』の文字を使用してテン、カミュ、ニッキとともにある場所へと向かった。三人は【魔国・ハーオス】へと戻るのだろうと思っていたのか、目の前の光景を見て目を見開いている。


「ヒイロ……ここって?」


 カミュが当然のごとく聞いてくる。


 彼らの眼前に広がっているのは、白亜の神殿。壮麗な様式美を備えたその造りは、一目見て心が奪われるほどの美観を伝えてくる。周りの建物も城を基調とした建物が多く、まるで穢れを許容しない聖域に足を踏み入れたと錯覚さえ起こさせるような場所だ。


「ここは【聖地オルディネ】だ」
「……! それって確か……」


 カミュが思い出したかのようにハッとなるが、ニッキとテンは理解できていないのかポカンとしている。


 以前日色はここに魔王イヴェアムを助けに来たことがあったので、こうして転移してこられた。その時はイヴェアムが瀕死の重体で危ないところだったが、日色がさくっと彼女を正常へと戻したのだ。


 日色は周囲を確認する。ここ【聖地オルディネ】は勇者の威光が造りだした聖なる土地ということで各地から多くの参拝者も毎日やって来るのだが、今は閑散としていて風が寂しく吹いていた。


「誰も、いないね」


 カミュの言う通り、目を凝らそうが人気を発見できない。それどころか……


「お前ら、注意しろよ」


 日色の言葉を皮切りに、周囲の地面がボコッと盛り上がり、中から青白い肌をした明らかに生気の感じられない存在が出現した。


「ゾンビ兵ですぞ!」


 バカ弟子ことニッキが瞬時に戦闘態勢を作る。


(どうやら人間界にある街や村は全て牛耳(ぎゅうじ)られてるってわけか)


 ここに住んでた人物も、アヴォロスによってゾンビ化させられている可能性が高くなった。というよりも、今ここに出現した彼らがそうなのかもしれない。


「こうなった以上、救う術はないな。お前ら、手加減するなよ」
「うん!」
「はいですぞ!」


 カミュとニッキは返事を返すと同時に大地を蹴ってゾンビ兵を蹴散らしにいった。


「なあヒイロ、俺もやった方が良い?」
「いや、お前はある奴を探しに行ってもらう」
「ある奴?」
「神官長だ」
「神官長? それ誰さ?」
「名前は確か…………何とかギルビティという奴だ」
「……アバウトじゃね?」
「いいからさっさと行け!」


 肩に乗っているテンを振り落とすように肩を動かす。テンはクルクルと身体を回転させて着地する。


「ま、いいけどさ。そいつもゾンビ化してたりして?」
「それならそれでいい。ここにはそいつの生存を確かめに来ただけだ」
「ふ~ん、まいっか! んじゃ探してくるわ! ウッキキ!」


 テンはその小さな身体を動かしゾンビ兵の攻撃をスルリとかわしながら神殿へと入って行った。


「さてと……」


 日色は《絶刀・ザンゲキ》を抜いて全身から無駄な力を抜いて自然体に構える。


「まずは掃除してやる。かかって来い」


 ゾンビ兵がまるでホラー映画で出てくるワンシーンのごとく一斉に日色に群がって来た。


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