トロッコ列車と2階建て車両で絶景を楽しむ「瀬戸大橋線の旅」!/古谷あつみの鉄道旅 Vol.3
鉄道タレントと鉄道ライターのコンビで巡る、古谷あつみの鉄道旅企画も3回目。今回のテーマは「瀬戸大橋」です!実は私、古谷あつみ、車窓風景ではJR瀬戸大橋線がいちばんのお気に入りなんです。「瀬戸大橋線の車窓の魅力」を土屋武之さんと、「鉄道ジャーナル」表紙撮影などで活躍している鉄道カメラマン・久保田敦さんに伺いながら巡ります。
今回の見どころはここ!
2. 瀬戸内海の風を感じる!瀬戸大橋、トロッコ列車の旅
3. 久保田カメラマンに聞く、瀬戸大橋ヒミツの撮影スポット!
4. 大迫力、マリンライナー普通車指定席の旅
5. 365日楽しめる、瀬戸内海の絶景車窓
1. 高松駅で腹ごしらえ、連絡船うどん
土屋「懐かしいって?」
古谷「実は私、仕事やプライベートで香川県に来ることが多かったので、瀬戸大橋線はもう何回乗ったか数え切れないくらい乗っているんです。」
土屋「じゃあ、今回、僕はいなくてもいいんじゃ…。」
古谷「まさか!そんなことはありません!土屋さんにお伺いしたいことは山ほどあります!今回もいっぱい教えてくださいね!では、出発~!」
古谷「さすが、香川県。駅スタンプまで、うどんですね…。」
土屋「うどん以外にも魅力は沢山あるんだけどね。でも、香川県のうどんは美味しいよね。そうだ、まずは腹ごしらえに『連絡船うどん』でも食べない?」
古谷「腹が減っては、乗り鉄はできぬ!食べましょう!」
土屋「古谷さんは、『連絡船うどん』の歴史を知っているかい?」
古谷「1988(昭和63)年に瀬戸大橋が開通する前、岡山県の宇野駅から香川県の高松駅を結ぶ国鉄の航路があって、その船の中で営業していたうどん屋さんですよね?」
土屋「その通り。宇高連絡船だね。1988(昭和63)年に航路が廃止されるまで、船のデッキでうどんを食べることができたんだ。高松駅構内の『連絡船うどん』は、当時の味を再現したものなんだよ。さあ、食べよう。」
古谷「おいし~い!さすが、香川県クオリティーのうどんですね。」
土屋「僕は、昔の連絡船うどんを食べたことがあるけど、ここまで美味しくはなかったなぁ。当時は、うどんを船内で茹でる事ができなかったから、あらかじめ茹でたものを船に乗せ、提供していたんだ。だから、少しのびていたんだけど、それを食べると、連絡船に乗ったなぁ…という気分になったものさ。四国の人もそれは同じだったけど、帰郷を実感させる味で人気が高かったんだ。」
古谷「今は、高松駅の名物として定着していますね。ここに来たら食べたくなります。さぁ、腹ごしらえも済みましたし、出発しましょう!」
2.瀬戸内海の風を感じる!瀬戸大橋、トロッコ列車の旅
土屋「古谷さんの、とっておきって…なんだか、不安だなぁ。」
高松駅で流れる列車接近メロディーは「瀬戸の花嫁」。瀬戸内海を代表するご当地ソングで、小柳ルミ子さんのヒット曲です。このメロディーを聴くと、香川県に来たなぁ…と実感します。
古谷「じゃじゃ~ん!これです!」
土屋「『アンパンマントロッコ』号じゃないか!これは、さすがに乗ったことないぞ!」
古谷「ふふふ。瀬戸大橋を渡るとき、最高に気持ちいいですよ!大人だけでも乗れますよ?」
土屋「僕はちょっと恥ずかしいよ…。それに、高いところが苦手なんだ。」
古谷「まぁまぁ、そう言わずに乗りましょう!最高の席を取っていますから。」
また、琴平~岡山間(トロッコ車両利用区間は琴平~児島間)にも走っていますので、スケジュールに合わせて利用することができます。
古谷「左側が眺めが良くて気持ちいいので、左側を取りました!」
指定席での鉄道旅行で忘れてはいけないのが、列車編成や席番のチェックです。トロッコのようなボックスシートの場合、席番などの振り方が新幹線などとは異なるので、事前に車窓を含め確認しておくと、より車窓を楽しめます。
交通新聞社から刊行されている「列車編成席番表」を1冊持っていると便利です。また、インターネットの予約サイトなどでもわかるので、きっぷを買いに行く前に見ておくのもいいでしょう。
交通新聞社の「編成表・席番表シリーズ」
古谷「四国の山々は、綺麗なお椀型で日本昔話に出てきそうですね!」
土屋「君は、そんな感想ばかり言っているね。」
古谷「そういえば、土屋さん…高いところが苦手なんですよね?(笑)瀬戸大橋の上は大丈夫ですか?」
土屋「君に笑われるとは…。トロッコで渡るんだろ?大丈夫さ。ところで、この列車は運転席にかぶりつくのもいい。迫力のある景色が見られるんだ!」
古谷「坂出に着きましたよ!トロッコ車両に乗り換えましょう!あぁ、久しぶりでドキドキする!」
土屋「瀬戸大橋からの眺めは、最高だからね。瀬戸大橋を渡る時間は約10分。こんなに長い時間、海の上を列車で渡れるのは、日本でここだけなんだ。」
古谷「うひょひょ~!風が気持ちいい!天気も良くて、本当に良かったですね!」
土屋「本当だね。こんな景色は、ここでしか見られないから。」
ガラス窓がないトロッコ車両の車内には、瀬戸内海の風が勢いよく流れ込みます。居合わせた人も皆、口を揃えて「気持ちいい!」と顔がほころんでいました。
古谷「うわぁ!絶景!瀬戸内海の島々がよく見えます!この景色は、瀬戸内海国立公園として指定されているらしいですよ!しかも、日本で初めて国立公園に指定されたのが、瀬戸内海なんですって!海がキラキラしていますよ!」
土屋「君は、高いところは大丈夫なんだね。僕は…。」
古谷「土屋さんにも苦手なものはあるんですね。ほら、見てくださいよ!床がガラス張りで、海がよく見えますよ!」
古谷「足元の窓も、海がよく見えるように工夫されていますよ!」
土屋「レポートは君に任せた!」
古谷「…。こんなにいい席を取ったのに、土屋さ~ん!」
土屋「そ、そうだね。右側も列車のすれ違いが見られて楽しいけど、瀬戸内海の景色を楽しむなら、左側だね。」
土屋「もうすぐ、下津井瀬戸大橋だ!列車がスピードを落とすよ!」
古谷「ほんとだ!ゆっくり景色を楽しめますね!」
古谷「土屋さん、記念撮影しましょうよ!これ!」
土屋「え…。これは、ちょっと恥ずかしくないかい?」
古谷「大丈夫ですよ!せっかくですし、撮りましょう!」
古谷「あっという間に、瀬戸大橋を渡り切りましたね。児島からは、また普通車ですね。」
土屋「高いところがどうもダメでね。古谷さんがレポートを頑張ってくれたから、僕からこれをご馳走するよ!」
古谷「あ!これは、私の大好物!ウィリーウィンキーのパンじゃないですか!四国へ来たら、必ず食べるんですよ。この車内でも売っているアンパンマンのセットですね。」
古谷「可愛いパンだぁ~!」
土屋「アンパンマンのキャラクターたちが、うまく再現されているね~」
古谷「うん。やっぱり、おいしい!」
瀬戸大橋アンパンマントロッコ
主に春~秋の土・日曜、祝日や春休み、夏休み期間中に運転。
全車グリーン車指定席で、乗車には乗車区間の乗車券も必要。
0570-00-4592(JR四国電話案内センター・8:00~20:00・年中無休・通話料がかかります)
3. 久保田カメラマンに聞く、瀬戸大橋ヒミツの撮影スポット!
久保田カメラマン「その前に児島に行きませんか?下津井の近くにいい撮影スポットがあるんです。」
古谷「いいですね!行きましょう!」
JR児島駅から、下電バスの下津井循環バス「とこはい号」に乗って、目指すは鷲羽山(わしゅうざん)。約23分で到着する下電ホテル前(鷲羽山下電ホテル)バス停から、少し山を登った所に、久保田カメラマンお勧めの撮影場所はありました。
古谷「わぁ~!絶景ですね!いい鉄道写真が撮れそう!」
古谷「う~ん。難しいなぁ。どう撮ればいいんだろう…。」
久保田カメラマン「このアングルだと、画の重心が右にばかり寄っているので、列車が左側に来た時に撮るといいですよ!」
古谷「なるほど。右側に本州側の陸地と下津井の町があるので、左寄りに列車を置くと、バランスが取れるのか…。」
古谷「くぅ~!やっぱり、プロは全然違いますね。」
土屋「そりゃそうだよ…。プロなんだから。」
久保田カメラマン「でも、古谷さんも綺麗に撮れてるじゃないですか。瀬戸大橋は夕景も綺麗ですよ。」
4. 大迫力!快速「マリンライナー」普通車指定席の旅
土屋「この、鷲羽山という場所は、瀬戸大橋が開通する前から、眺めがいいことで有名だったんだ。元々、景色がいいところに瀬戸大橋がかかった、という感じかな。」
古谷「ここが、有名になるのはわかります。180度、瀬戸内海が見渡せますもんね!さて、今度は、『マリンライナー』に乗りますよ!児島に戻りましょう!」
古谷「ふふふ。これも、景色を楽しむために2階席を取りましたよ。」
土屋「君は、まだまだ甘いな。『マリンライナー』は、1階席の方が景色が楽しめるんだ。」
古谷「え!?でも、1階席だと、壁ばかり見えて、景色はあんまり見えませんよ?」
土屋「乗ってから説明するよ。」
土屋さんのアドバイスにより、1階席にきっぷを変更しました。土屋さんお勧めの景色とは一体!?
古谷「初めて1階席に乗りました。マリンライナーは何度も乗ったことがありますが、いつも2階席に乗るので。1階席、やっぱり壁ばかりじゃないですか…。」
土屋「まぁまぁ、もうすぐ見えるよ。」
古谷「わぁ~!海が近い!2階席よりも迫力のある海が見れますね!」
土屋「だろぉ~?確かに1階席は、景色がよく見えない我慢区間が多いけれど、そのぶん海に近くて迫力のある景色が見られるんだ。しかも、2階席はグリーン車、1階席は普通車だから、1階席の方が安いしね。」
古谷「これは、1階席と2階席どちらに乗るか迷いますね!」
古谷「瀬戸大橋の車窓って、本当に素敵ですよね。何度来ても、いつも違う顔が見られるんです。」
土屋「珍しく、思い出話かい?」
古谷「思い出ってほどではないです。それこそ、雨の日だったり、台風がくる前だったり、すごく綺麗な晴天の日だったり。色々ありましたが、どの日も綺麗でした。」
土屋「そうだね、いつ来てもいい景色が見られる。同じ日でも、時間によって見え方もまた違うしね。」
古谷「そうです!そうなんです!というわけで、高松に着いたら、夕景を見るために今度はパノラマシートに乗りましょう!」
5. 365日楽しめる、瀬戸内海の絶景車窓
古谷「さて、高松に着いたことですし、また岡山行きの『マリンライナー』に乗りましょう。今度は運転台のすぐ後ろにあるパノラマシートです!」
土屋「高松から岡山行の『マリンライナー』は、座席が逆になっているから、運転台の方に向けよう」
古谷「なんだか、緊張してきました…」
土屋「なんで緊張するの?」
古谷「取材で乗るのは初めてですし、どんな夕日が見られるのかドキドキして…」
土屋「おぉ!見えてきたよ!」
古谷「これはもう…。言葉にできないですね…。」
土屋「赤い海も美しいね。」
古谷「はい。これが列車から見る風景だなんて、不思議です…。」
土屋「10分とは言わず、ずっと眺めていたい景色だったね。夕日が一番綺麗に見られる時間じゃないかなぁ…。一本前の列車でも後の列車でも、こんな景色は見られないはずだよ!」
古谷「褒めてください!日没時間を調べて指定席を取りました!」
土屋「…取材の基本だね。」
古谷「…(涙)」
瀬戸大橋から眺める夕景は、格別なものでした。真っ赤に染まる空と海の間に浮かぶ列車に乗っているような気分を味わえます。
土屋「古谷さんが急に黙ったね。」
久保田カメラマン「本当ですね、珍しくないですか?考え事ですかね…?」
土屋「瀬戸大橋の旅も終わりだ。あっという間だったね。」
久保田カメラマン「古谷さんが夕日を眺める写真も押さえましたよ!あの時、何か考え事をしていたんですか?」
古谷「あぁ、あの時ですか?岡山で取材終了ですし、東京までの新幹線で飲むお酒の事を考えていました!」
土屋・久保田カメラマン「…。(呆)」
土屋「そんなことじゃなかろうかと思っていたよ!まったく…。」
古谷「あははは!大事ですよ。新幹線にビール…。」
呑気な私と、高所恐怖症の土屋さん…。不思議なコンビの鉄道旅はまだまだ続くのでした。
快速「マリンライナー」
岡山~高松間に、約30分間隔で運転。
高松側先頭の1号車に連結されている2階建て車両の2階がグリーン車指定席、1階が普通車指定席。それ以外の車両は自由席となるのが基本。パノラマシートはグリーン車指定席で、グリーン券購入時にここを指定することができる。
0570-00-4592(JR四国電話案内センター・8:00~20:00・年中無休・通話料がかかります)
※記事内の価格表記は全て税込です
※記事内の「それいけ!アンパンマン」に関連する画像のコピーライトは、すべて「(C)やなせたかし/フレーベル館・TMS・NTV」
土屋武之(鉄道ライター)
鉄道を専門分野として執筆活動を行っている、フリーランスのライター・ジャーナリスト。硬派の鉄道雑誌「鉄道ジャーナル」メイン記事を毎号担当する一方で、幅広い知識に基づく、初心者向けのわかりやすい解説記事にも定評がある。
2004年12月29日に広島電鉄の広島港駅で、日本の私鉄のすべてに乗車するという「全線完乗」を達成。2011年8月9日にはJR北海道の富良野駅にてJRも完乗し、日本の全鉄道路線に乗車したという記録を持つ、「鉄道旅行」の第一人者でもある。
著書は「鉄道のしくみ・基礎篇/新技術篇」(ネコ・パブリッシング)、「鉄道の未来予想図」(実業之日本社)、「きっぷのルール ハンドブック」(実業之日本社)、「鉄道員になるには」(ぺりかん社)など。
古谷あつみ(鉄道タレント・松竹芸能所属)
小学生の頃、社会見学で近くにある車両基地へ行き、特急電車の運転台に上げてもらったことがきっかけで、根っからの鉄道好きとなる。 学校卒業後は新幹線の車内販売員、JR西日本の駅員として働く。その経験から、きっぷのルールや窓口業務には精通している。 現在はタレント活動のほか、鉄道関係の専門学校や公立高校で講師をしている。2015年には、「東洋経済オンライン」でライター・デビューし、鉄道旅行雑誌「旅と鉄道」等で執筆活動中。
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