これまでの放送

2017年6月19日(月)

支持者の票が消える…

高瀬
「今月(6月)16日、改正公職選挙法が公布されて、衆議院の小選挙区の区割りが見直されることになりました。
これによって、次の衆議院選挙が大きく変わることになります。
対象は、19の都道府県97の選挙区で、実に全体の3分の1にあたります。
このうち6県では、選挙区が1つずつ減ります。
この「区割り見直し」を、今日(19日)と明日(20日)2日連続で見ていきます。」

和久田
「過去最大の規模となった見直し、その目的は『1票の格差』を縮めることです。
見直し前は、最大2.176倍でした。
これは、最も人口の少ない選挙区の1票が、最も多い選挙区の2票分以上の価値を持つことを意味します。
こうした格差について最高裁判所は『違憲状態』だと判断しました。
これが、今回の見直しによって、最大で1.999倍に。
『2』を切ることになります。」

高瀬
「この2倍を切るために大幅な見直しをしたことで、これまでの支持者の票が失われると、立候補予定者に戸惑いが広がっています。」

シリーズ 衆院“区割り見直し”① 支持者の票が消える…

区割りの見直しで、最も多くの住民が、ほかの選挙区に編入される東京7区です。

この見直しに戸惑いを隠せないのが、7区で長年しのぎを削ってきた現職の衆議院議員2人。
当選3回の自民党・松本文明さん。
前回の選挙で比例代表で復活当選しました。
そして、民進党の長妻昭さん。
当選6回です。
 

7区の範囲は中野区と渋谷区でした。
今回、中野区の北半分が隣の選挙区に移って、代わりに杉並区、目黒区、品川区の一部が加わります。
およそ14万人が編入される代わりに、16万人が流出。
これまで関係を築いてきた有権者の票を失うことになるのです。

自民党 松本文明さん
「“1票の格差を無くせ”っていう方へ賛成するよね。
賛成した結果、こうなっちゃった。」

自民党の松本文明さんです。
32年前の都議会議員選挙で初当選して以来、後援会などの組織を固めて選挙を戦ってきました。

この日の会合に集まった、およそ100人の支持者。
そのほとんどが、隣の選挙区の有権者になり、松本さんに投票することができなくなります。

自民党 松本文明さん
「1票の格差を、パズル的に、この選挙区も、この選挙区も、だいたい同じ数に抑えようとすると、こういうやり方しかないのかな。」

自民党 松本文明さん
「ここは、わが町内会です。」



 

選挙区内をくまなく歩き、要望を聞き取ってきた松本さん。
地域の課題を解決することで、支持基盤を広げてきました。

自民党 松本文明さん
「2年に1回は、あふれていた。
常に気にかけておかなきゃいけない河川。
だから激甚対策の指定を取り付けて。」

区割りの見直しによって支持基盤が失われることに強い危機感を抱いています。

自民党 松本文明さん
「選挙区ではなくなる。」

有権者
「残念ですね、本当にね。」

 

自民党 松本文明さん
「ここがね。」

さらに、自宅のある地域も見直しの対象になりました。
松本さんの自宅があるのは、選挙区の北部。
区割りの見直しによって、わずか200メートル東京7区からはずれて、隣の10区に編入されることになったのです。
この家に住んで41年。
自分自身に投票することもできなくなりました。

自民党 松本文明さん
「人に1票入れてくれって言って、自分に1票入れないなんて、そんなばかな話ない。
長い間、僕を応援し続けてくれている人たちに対して、自分がやったせいではないけれども、申し訳ない。」

一方の民進党・長妻昭さん。
高い知名度を武器に、支持政党を持たない無党派層からの支持も集めて、当選を重ねてきました。
今回の見直しは、有権者に分かりにくく、無党派層の投票行動に影響を与えるのではないかと心配しています。
 

その理由は、区割りのし方にあります。
例えば、中野区野方2丁目。
南北で7区と10区に分割されます。
1から31番地は7区、32から40番地は10区というように番地ごとに細かく分けられるのです。
長妻さんは、この日開いたミニ集会で、区割り見直しの説明に時間を割きました。

民進党 長妻昭さん
「だいたい皆さん、大和町ですか?
若宮?
若宮も投票できなくなる。
相当混乱する可能性があるので、せめて“丁目”単位で。
丁の中の番地で区切るというのは、なかなかきつい。」
 

有権者
「いま初めて聞きました。
びっくりしました。」

有権者
「迷う方も多いんじゃないですか?」
 

長妻さんは、有権者の混乱が、投票率の低下につながるのでないかと考えています。

民進党 長妻昭さん
「投票率が下がると、どうしても組織選挙。
組織に所属している人たちの意向が色濃く反映される。
組織力という面では、われわれ、少し後塵(こうじん)を拝しているのではないか。」

新しく自分の選挙区になる地域で無党派層の支持をどう獲得するか。
効果的に名前と顔をアピールする戦略を練っています。

民進党 長妻昭さん
「目黒駅、不動前駅、これ五反田駅。
五反田駅は、ちょうど(選挙区の)境目。
“ある番地はこっちで、ある番地は向こう”というのは、大変わかりにくいので、リストも配布をしながら、いろいろ周知をしていく必要もある。」

早速、自分の選挙区に新たに加わる品川区内の駅を訪れた長妻さん。
都議会議員選挙を前に、応援演説の中で、区割りの見直しについて取り上げました。

民進党 長妻昭さん
「この地域が、私が選出されている東京7区になる。
今後、この駅で、朝となく昼となく、私が街頭演説をするようになる。」

民進党 長妻昭さん
「知っている人は全然いないし、お店の方も、皆さん初めて。
これから誠心誠意、皆様に、いろいろお話をしていきたい。」


 

東京7区には、共産党からも医師の谷川智行さんが立候補する予定です。
今の選挙制度の問題が、今回浮き彫りになったと主張します。

共産党 谷川智行さん
「小選挙区という制度自体が、死票が非常に多く、根本的な矛盾が、もともとある制度。
比例代表中心の制度にして、民意を反映する制度にしていかないといけない。」
 

和久田
「自分自身に投票ができなくなったり、番地ごとに選挙区が細かく分かれたりと、ずいぶん大きく変わるんですね。」

高瀬
「これまで組織を固めて戦ってきた自民党の松本さん、そして、無党派層に訴えかけてきた長妻さん。
違う戦い方をしてきたどちらにとっても、影響というのは大きいようです。」

和久田
「こうした区割りの見直しを有権者はどう受け止めているのか。
そして、自治体はどう対応するのか。
明日、お伝えします。」
 

<関連リンク>
■特集ダイジェスト
「有権者・行政に戸惑い」