被害者の尊厳を踏みにじる「性暴力」。“女性が1人で人通りの少ない夜道を歩いていて・・・”といったイメージを持っていませんか。しかし内閣府の調査によれば、女性の15人に1人が同意なしに無理やり性交された経験があり、しかも加害者の75パーセントは面識のある人だといいます。被害者の7割近くが誰にも相談できないでいることも分かりました。性暴力の被害者は、「女性の側にもスキや落ち度があったのでは」「徹底的に抵抗しなかった以上、合意があったのでは」などといった非難にさらされ、さらに傷つくことが多いのです。
なぜ性暴力については、「被害者にも原因がある」と言われがちで、被害者が声を上げづらいのか。性暴力の実態を知るとともに、私たちの心の中にある誤解や偏見、その背景について考えました。
“同意のない性行為は暴力”
日本では、今国会で110年ぶりに性犯罪に関する刑法が改正され、厳罰化や非親告罪化(被害者の告訴がなくても起訴できる)などが実現しました。とはいえ改正後も、はっきりとした「暴行又は脅迫」があったと認められないと、加害者をごうかん罪や強制わいせつ罪に問えません。いっぽうイギリスやフランスなどでは、「同意なき性行為」が広く犯罪として位置づけられています。アメリカでも、大学内でのキャンパスレイプが社会問題化したことから、オバマ大統領(当時)と有名俳優やスポーツ選手が「同意なき性行為は犯罪である」と呼びかける動画が作られたり、州によっては「沈黙や無抵抗、我慢は“同意”とはみなさない」と法律に明文化されるなど、「積極的同意」を重視する流れが強まっています。
自分や家族が性暴力の被害にあったら?
国は現在、性暴力の被害にあった人が相談できる「ワンストップ支援センター」を各都道府県に最低1か所設置するよう促しており、現在38か所まで増えています。被害にあった人が電話をかけると、専門の研修を受けた相談員が、病院の紹介や、警察への同行、弁護士やカウンセラーの紹介、場合によっては裁判の代理傍聴まで、必要な支援を提供するしくみになっています。
家族や友人から被害を打ち明けられたときに、言ってはいけない言葉についても紹介しました。