学校のトイレと家庭のトイレとのギャップ
POTTON:トイレというものがメディアにとりあげられにくい原因って、何なのでしょう?例えば、小学生の頃とか、トイレに行くのが恥ずかしかったり、イジメられたりということがあった。もしかすると、そういった幼い頃の影響があるのかな、と。加藤さん自身、小学校に行って、トイレの意識をかえるための活動などもされていると思うのですが、どういった話をするのですか?なかなか難しいと思うのですが。
加藤:ポイントは、トイレは恥ずかしくない、ウンチは大切だということを伝え、トイレのことを話題にできる空気をつくることです。小中学校の校舎は、築数十年たっているものが多く、老朽化が進んでいます。一方で、家庭のトイレや商業施設などのトイレはどんどん改善されていきます。学校のトイレとのギャップが、子どもたちのストレスになり、学校のトイレを嫌な空間として認識させるのだと思います。排泄することが冷やかしの対象になったりもします。やるべきことは、トイレや排泄に対するマイナスイメージを変えることと、トイレを楽しく行きやすい空間にかえることです。
POTTON:トイレに行きやすい空間づくりとは?
加藤:「臭い」「暗い」「和式しかない」といった状況をかえることです。和式がダメで、洋式が良いというわけではなく、選べる環境をつくることが望ましいと思います。家庭のトイレは多くが洋式です。しかし、学校のトイレはほとんどが和式です。このギャップをうめつつ、トイレの大切さなどをていねいに伝え、子どもたちと一緒に明るいトイレ空間づくりにとりくむことができたら素敵ですね。
POTTON:震災と学校というものを考えたとき、学校は避難所になりますよね。ボクは、小学校などのトイレは、避難所になることも考えたうえで、お年寄りや滅多に小学校に来ないようなひとのことも考えて設計する必要があるのではないか、と思うのですが。
加藤:その通りですね。小中学校の多くは指定避難所になっています。先ほども触れましたが、災害時には、お年寄り、障がい者、乳幼児、妊産婦、外国人も避難所に来ます。そんな中で、どのようなトイレ環境を整えるかを考え、そなえることが重要ですね。学校のトイレ改善は、子どもたちだけでなく、地域のニーズでもあるのです。とくに子どもたちは毎日、多くの時間を学校で過ごしています。トイレに行くのが嫌でウンチを我慢する子どももいます。ウンチをガマンしていたら、給食を美味しく食べることはできません。授業に集中することもできません。運動もできません。生活リズムもくずれていきます。だからこそ、一刻も早く改善しなければならないのです。改善の予算が十分に確保できなければ、部分的改修でも良いと思います。壁を明るくしたり、ニオイ対策をしたり、子どもと保護者がちからを合わせて徹底的に掃除してみたり。みんなで一緒にとりくむことで、子どもたちはトイレに愛着をもつはずです。