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日本トイレ研究所 <Part 3>

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声にならないことは、問題なしとして片付けられる



POTTON:なるほど、学校のトイレを改善することの重要性はよく分かりました。他にも、改善を必要としている場所ってあるんでしょうか?

加藤:たくさんあります。観光地、病院、野外フェス、花火大会やマラソン大会など、ひとが集まる場所は、トイレ改善ニーズも高いです。また、山岳地のトイレも改善が必要です。富士山、屋久島、白神山地など、自然地域に大規模なインフラを整備することは好ましくないですよね。私たちが普段使っているトイレは電気が必要で、水もたくさん使用します。トイレットペーパーも使います。大小便を処理する設備も必要です。これらの条件が整ってこそ、水洗トイレシステムがなりたち、都会の衛生を保つことができるのです。これをそのまま自然エリアに持ち込むわけにはいきません。世界に視野を広げてみれば、衛生的なトイレにアクセスできないひとは世界中に26億人もいるのです。野外排泄などが原因で飲料水が汚染され、下痢で亡くなってしまう子どももたくさんいます。このようなことも、なかなかニュースになりません。声にならないことは「問題なし」として片付けられてしまうのです。だからこそ、もっと声にしていかないといけません。


何が重要なのか考える


POTTON:最後の質問です。日本のトイレはとても進んでいるそうなんですが、ボクはトイレがとても便利になっていくことでうまれる問題もあるんじゃないか、と思っています。例えば、和式トイレを使っていた子供と、使っていない子供とでは、足腰の強さがちがってきたりだとか。このままどんどん便利になっていくことが望ましいことなのか、加藤さんはどう思いますか?

加藤:便利さのみを追求するのは危険ですね。例えば、すべてが全自動になってしまったら、停電時には一切使用できなくなってしまいます。また、すべてを洋式トイレにしてしまったら、和式トイレで排泄できない子どもも増えてしまいます。災害用トイレには和式トイレが多くありますし、しゃがみ式トイレを主とする国も多くあります。和式がよいか、洋式がよいかではなく、大切なことは、いざという時でも戸惑うことなく排泄できるように子どもたちを教育しておくことだと思います。また、水洗トイレは快適性にすぐれていますが災害に弱い。一方で水も電気も必要としないボットントイレは災害に強いのですが、快適性に課題があります。今回の震災では、ボットントイレが活躍した避難所もありました。便利にすればするほど、災害が起きた時のダメージは大きくなります。それぞれの短所を改善して、水洗トイレとボットントイレを共存させることは、災害に強いまちづくりにつながります。全自動が悪いかと言えば、そうでもありません。病院の手術室などは、衛生を徹底する場所ではタッチレスが好ましいです。その場所、それを使用する人に、何が必要かを考えたうえで、便利さを求めていけたらよいと思います。

POTTON:なるほど、とても勉強になりました。本日は、どうもありがとうございました。

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加藤 篤 氏 Twitter : @pooprince / @TOILET_LABO

NPO法人日本トイレ研究所代表理事。野外フェス、山岳地や観光地、災害時などにおけるトイレ計画、途上国のトイレ・衛生調査、子どもにトイレやうんちの 大切さを伝える活動を展開。自らも王冠にマント姿の「うんち王子」として小学校に行く。2009年にCD『うんちっち!のうた』を作詞したほか、公衆トイレで「表参道トイレ美術館」を実施。

表参道の公衆トイレが「美術館」に変身-クリエーター8人の作品を展示 - シブヤ経済新聞 http://www.shibukei.com/headline/6489/

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