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日本トイレ研究所 <Part 1>

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トイレは、社会の本質を見るためのフィルター

今回、POTTON.jp をはじめるにあたり、『トイレから社会を良くしていこう』というコンセプトの NPO法人 日本トイレ研究所の理事である加藤 篤 氏にインタビューさせていただきました。


POTTON:まず初めに、加藤さんがどのような流れで現在に至るのか教えていただけますか?

加藤 篤(以下、加藤):学生時代は建築を学んでいました。その理由としては、「まちづくり」に対して、どのように関わっていくか考えたとき、建築設計というアプローチが効果的だと思ったからです。ひとつひとつ建築物をデザインして、その集合体がまちになると考えました。しかし、社会人として働いていくなかで、自分の思いと仕事とのあいだに少しずつズレが生じてきました。そんな中、図面をながめながら、何がもっとも暮らしに影響を与えているのだろう、と考えるようになりました。さまざまな切り口があると思いますが、私は「トイレ」という空間は、生活観が凝縮していて、暮らしをかえるチカラを持っていると思ったわけです。そうであれば、トイレを改善することで、社会や暮らしが良くなることにつながるはずだと。その後、まちづくりのシンクタンクを経て、現在に至ります。

POTTON:昔は建築を学んでいたんですね。それも、元々は「まちづくり」に興味があったということで。

加藤:私たちにとって「トイレ」とは、社会的課題にアプローチするためのフィルターなんですね。トイレから暮らしを良くする。トイレから社会を変えていく。トイレは、子どもからお年寄りまで、性別・国籍を問わず、誰にとっても共通するテーマです。共通するテーマだからこそ、そのフィルターを通すことで、本質が見えるのではないか、と。


「トイレ × 震災」 から見えてくること


POTTON:ボクは今回、加藤さんに「震災とトイレ」というテーマでお話を聞きたいと思っているのですが、被災地のトイレ問題はどのようになっているのでしょうか。

加藤:災害時は、水洗トイレが使えなくなります。また、普段使い慣れたトイレ環境が失われます。トイレに求める要素は、子ども、女性、お年寄り、障がい者など、それぞれ異なります。足腰が悪くしゃがめないひとだったら、どんなにキレイなトイレでも、和式では意味をなさないし、段差があったら車イス利用者は使えません。また、排泄は自律神経がつかさどっているので「はい、ウンチしてください」と言われて、すぐに出来るものではありませんし、過緊張の状態では排泄できません。排泄には安心できる空間を作るということも重要です。「安心」って一人ひとり異なりますよね。子どもにとっては、大人がトイレのドアをトントンと叩いたつもりでも、ドンドンと威圧的に感じるかもしれません。さらに、私たちはトイレに行くことが嫌になったり、行くことが困難になると、飲んだり食べたりすることをひかえてしまい、体調を崩します。死にいたることもあるのです。このように災害時のトイレは、さまざまな課題があります。ですが、トイレの悩みは声に出しづらいため、改善につながらないのです。本来ならば、水や食料と同じくらい重要で、まっさきに対策を考えるべきです。

POTTON:さまざまなメディアで震災について語られていますが、あまり「トイレ」といったテーマでは話を聞きませんよね。被災地のそのような状況をひろめ、伝えていくためには、どういったことが必要だとお考えですか?

加藤:多くの人が「災害時のトイレ」を話題にすることが必要です。私たちが講演先で「水をそなえていますか?」と質問すると、会場の7、8割は手があがります。しかし、トイレは1割以下。東日本大震災におけるトイレ問題の深刻さが伝わっていないのです。言いづらいことだけど、言わなきゃいけない。それが大事だと思っています。トイレの必要性が理解されれば、その次は、どのようなトイレをそなえるか、衛生面はどうすべきかを考えていくことになります。


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  1. designdailysmpottonからリブログしました
  2. pottonの投稿です
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