母親たちが手作り 口コミで広がり好評
発達障害や知的障害は見ただけでは分かりにくいため、周囲に理解してもらえずに悩む人は少なくない。子どもに障害があることをひと目で分かってもらえるようにと、群馬県と愛知県の母親たちがそれぞれ、感謝のメッセージをつけたバッジを手作りし、社会的な認知を広めようと普及に取り組んでいる。利用者からは「温かく見守ってもらえるようになった」「親も子も安心して外出できるようになり、笑顔も増えた」と好評だ。
群馬県桐生市の主婦、有家久美さん(38)は、長男(11)が1歳の時に脳症を発症し、知的障害が残った。9歳の頃まで、感情をうまく抑えられず、買い物中のスーパーや道路の真ん中で突然「疲れた」と寝転び、大騒ぎすることがあった。
周囲の冷たい視線に次第に外出が怖くなり、親子で引きこもるようになった。
そんな時のこと。障害のある子どもの親同士が集まるお茶会の席で、みんな同じような悩みを抱えていることを知り、「障害に気付いてもらえるマークを作ろう」と思いついた。デザインは、長男が小学3年の時に描いたハートの輪郭をベースに、「その思いやりに感謝します」というメッセージを添えた。
地元の母親たちと昨年3月、「ハートバッチの会」を設立し、メッセージ付きとデザインのみの2種類のバッジの販売を開始。口コミなどで全国に広がり、販売個数は1000個を超えた。バッジが社会的に広く知られることを目指している。
愛知県春日井市の障害がある子どもの親たちで作る「桃山会」も、同じような思いでバッジを製作している。「ありがとうマーク」と名付けたバッジには「幸せの青い鳥」が四つ葉のクローバーをくわえて飛ぶ姿が描かれている。「見守ってくれてありがとう。理解してくれてありがとう。思いやりをありがとう」。そんな気持ちが込められている。
桃山会代表の中村優子さん(41)は「障害者の子どもや家族が困っている時はそっと手を差しのべてもらえる環境になってほしい」と語り、販売方法は今後検討するという。
「ハートバッチの会」のバッジは、障害のある子どもやその家族の利用を想定した文字入りが1個300円。それ以外の人に利用してもらう「応援バッジ」(文字なし)が200円。注文・問い合わせは、メール(heartbatch@gmail.com)。桃山会への問い合わせはメール(momoyama_kai@yahoo.co.jp)。【鈴木敦子】