にしきよさんの「売れないVALUはココが悪い、やってはダメな共通点」という記事に触発されてこれを書きます。
その記事で指摘されているポイントは、すべて正しいと思います。
それに加えて、一歩さがっていま起こっている事全体を見回し、大局観を持つことが大事なのではないかな? と僕は考えています。
僕はシリコンバレーの企業がIPO(新規株式公開)する際、売り出し価格をどうする? 上場後の初値をどう設定する? などに関する仕事を昔、やっていました。
だから「初モノ」のプライシング・ストラテジーに関しては、経験があります。
しかし……
VALUは株ではありません。
だからテックIPOで通用する方程式が、そもそも株じゃないVALUで通用するという保証はありません。
さらに……
テックIPOの引受け慣行は「因習」とさえ言えるような、さまざまな明示的、ないしは暗黙のルールが確立しています。
それに比べるとVALUは未だひと月足らずのサービスなので、わからないことだらけです。
いまの段階で「正しいアプローチ」を論じるのは無意味かも知れません。
ただ、そういう今だからこそ、それについて考えてみることが大事だと思うのです。
皆さんはツイッターを初めて使った時(なにこれ? どうやって使うの?)と当惑しませんでした?
ツイッターの例のように、皆が、手探りで、新しいサービスを使いこなそうとしている局面は、ある意味、男と女の出会いの瞬間みたいなものです(笑)
つまり、惹かれ合い、気まずく、いとおしい瞬間だと思うのです。
いまのVALUには、ちょうどツイッター登場時とおなじようなワクワク感や戸惑いが満ちています。こういう瞬間は、人生で、そう何度も経験できることではないので、試行錯誤することは結構だし、そのプロセスを大いに堪能すべきだと思います。
VALUが登場したとき、まず堀江貴文のVAが時価総額(=正しくはネットワーク・バリュー、なぜならVALUは株ではないので時価総額という株式用語を使うのは適切ではないからです。少なくともアメリカではそれが定説)で第1位になり、それを「煽りのハヤト」があからさまな煽りで追い越しました。
しかし……
未だサービス開始ひと月であるにもかかわらず、今の時点で「誰が時価総額1位か?」を競い合うのは、ナンセンスだと思うんですね。
VALUは、堀江貴文やイケダハヤトより、もっとずっと大きい社会現象だと僕は思うんです。その大事なイノベーションを、ハヤトごときに振り回され、台無しにされたら、目も当てられません!
もしVALUが「流れ星」のような一瞬だけ輝いて、地平線の彼方に落ちてゆくサービスなら、イケダハヤトがやっているような「焼き畑農業」みたいなマネタイゼーションは、正しいアプローチだと言えます。サービスが終了する前に、最大限にムシるということです。

しかしそうでなくてVALUが今後5年も10年も定着するサービスになるのであれば、これからユーザー数が増えてゆくと思うのです。ユーザー数が増えるとそのサービス全体の価値も増えます。
いまの若い人たちはご存知ないと思うけど、昔、シリコンバレーにスリーコム(3Com)という会社がありました。スリーコムを創業したのはロバート・メトカーフという人で、彼は「ネットワークの価値はユーザー数の二乗で増える」と言いました。これが「メトカーフの法則」と呼ばれるものです。
すると、今後VALUの利用者が増えるのなら、VALUというネットワーク全体の価値が高まり、その中で蓄積される購買力が増大するでしょう。そのようにして、自分のVAがフェアバリュー(正当な評価)を獲得できる下地が整った後で、鷹揚に売出しをしても、遅くは無いはずです。
さて、VALUをはじめるにあたり申請を出すと、ツイッターでのフォロワー数などのソーシャルでの存在感を基準として、あなたの保有VA額が賦与されます。
この部分は過去のフォロワー数の積み上げが評価されるので、すぐに増やそうと思ってもムリです。だから提示された保有VA数は受け入れるしかありません。
ただ、そこからは自分で裁量の余地があります。もし高い株価からスタートしたいなら、初値を高く設定することができます。その代り保有VA数(=株式で言うところの発行済み株式数に相当)は少なくなります。
ここで重要なのは、少なくとも現在のVALUのしくみでは1)後から増資できない、2)株式分割できない、ようになっていると見受けられるという点です。(これは僕が間違っているかもしれないし、後からルールが変更されるかもしれません)
すると自分のVAを上場する際「原価0」で賦与される保有VA数は、これ限りであり、一度それを売り出してしまうと、二度とシニョリッジ(発行特権)は享受できないことを意味します。
そうであれば、最初からガンガンVAを売り出すのではなく、VAの値段がある程度上昇し、売り手に有利な値段になったところでより多くのVAを売った方が得ということになります。
そこで問題なのはVAの価格です。
VAはビットコインで建値が表示されています。1BTCといった調子です。
いまビットコイン価格は31万円しているので、もし自分が売り出すVAの建値が1BTCなら、1VAを買うのに31万円も払わないといけません。
フェイスブック株は今155ドルしていて、値嵩株に分類されると思うけど、それでも1万3千円程度で購入できるわけです。
その事を考えると、たかがお遊びに過ぎないVALUのゲームに「ポン!」と1VAに31万円も払うような御仁は、そう多くは無い気がするのです。
僕の庶民的な金銭感覚から言えば、VALUの美人投票で遊ぶ際、ワンコインか、スタバのラテの値段くらいなら(まあ遊んでみるか?)という気になります。しかし1回で10万円を超えるような博打は、狂気の沙汰ですね(笑)
それからVALUは一株当たり利益(EPS)に相当するものが無いので、ファンダメンタルズの裏打ちはありません。しかしチャートは存在すると思います。
実際、株の世界でもファンダメンタルズを無視し、チャートだけで投資する、いわゆるモメンタム投資という手法が存在します。フェイスブック、エヌヴィディア、アルファベット、アマゾン、ネットフリックス……これらの株は、すべてモメンタム筋が好んでトレードする銘柄です。
これと同じように、モメンタム筋がVALUで跋扈することが起きても不思議は無いと思います。
まとめ
1. 最初から沢山のVAを売り出すのは不利
2. みんなが買いやすい売り出し価格を設定すること
3. VALUにもチャート分析は存在しうる
4. たぶん株で言うところのモメンタム投資の手法が好まれる
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売れないVALUはココが悪い、やってはダメな共通点#VALU #バリュー #ビットコイン https://t.co/UVg2iGs8Wc pic.twitter.com/UO7J1ikH9B
— にしきよ(西村清孝) (@kiyotaka0222) 2017年6月23日
その記事で指摘されているポイントは、すべて正しいと思います。
それに加えて、一歩さがっていま起こっている事全体を見回し、大局観を持つことが大事なのではないかな? と僕は考えています。
僕はシリコンバレーの企業がIPO(新規株式公開)する際、売り出し価格をどうする? 上場後の初値をどう設定する? などに関する仕事を昔、やっていました。
だから「初モノ」のプライシング・ストラテジーに関しては、経験があります。
しかし……
VALUは株ではありません。
だからテックIPOで通用する方程式が、そもそも株じゃないVALUで通用するという保証はありません。
さらに……
テックIPOの引受け慣行は「因習」とさえ言えるような、さまざまな明示的、ないしは暗黙のルールが確立しています。
それに比べるとVALUは未だひと月足らずのサービスなので、わからないことだらけです。
いまの段階で「正しいアプローチ」を論じるのは無意味かも知れません。
ただ、そういう今だからこそ、それについて考えてみることが大事だと思うのです。
皆さんはツイッターを初めて使った時(なにこれ? どうやって使うの?)と当惑しませんでした?
ツイッターの例のように、皆が、手探りで、新しいサービスを使いこなそうとしている局面は、ある意味、男と女の出会いの瞬間みたいなものです(笑)
つまり、惹かれ合い、気まずく、いとおしい瞬間だと思うのです。
いまのVALUには、ちょうどツイッター登場時とおなじようなワクワク感や戸惑いが満ちています。こういう瞬間は、人生で、そう何度も経験できることではないので、試行錯誤することは結構だし、そのプロセスを大いに堪能すべきだと思います。
VALUが登場したとき、まず堀江貴文のVAが時価総額(=正しくはネットワーク・バリュー、なぜならVALUは株ではないので時価総額という株式用語を使うのは適切ではないからです。少なくともアメリカではそれが定説)で第1位になり、それを「煽りのハヤト」があからさまな煽りで追い越しました。
しかし……
未だサービス開始ひと月であるにもかかわらず、今の時点で「誰が時価総額1位か?」を競い合うのは、ナンセンスだと思うんですね。
VALUは、堀江貴文やイケダハヤトより、もっとずっと大きい社会現象だと僕は思うんです。その大事なイノベーションを、ハヤトごときに振り回され、台無しにされたら、目も当てられません!
もしVALUが「流れ星」のような一瞬だけ輝いて、地平線の彼方に落ちてゆくサービスなら、イケダハヤトがやっているような「焼き畑農業」みたいなマネタイゼーションは、正しいアプローチだと言えます。サービスが終了する前に、最大限にムシるということです。
しかしそうでなくてVALUが今後5年も10年も定着するサービスになるのであれば、これからユーザー数が増えてゆくと思うのです。ユーザー数が増えるとそのサービス全体の価値も増えます。
いまの若い人たちはご存知ないと思うけど、昔、シリコンバレーにスリーコム(3Com)という会社がありました。スリーコムを創業したのはロバート・メトカーフという人で、彼は「ネットワークの価値はユーザー数の二乗で増える」と言いました。これが「メトカーフの法則」と呼ばれるものです。
すると、今後VALUの利用者が増えるのなら、VALUというネットワーク全体の価値が高まり、その中で蓄積される購買力が増大するでしょう。そのようにして、自分のVAがフェアバリュー(正当な評価)を獲得できる下地が整った後で、鷹揚に売出しをしても、遅くは無いはずです。
さて、VALUをはじめるにあたり申請を出すと、ツイッターでのフォロワー数などのソーシャルでの存在感を基準として、あなたの保有VA額が賦与されます。
この部分は過去のフォロワー数の積み上げが評価されるので、すぐに増やそうと思ってもムリです。だから提示された保有VA数は受け入れるしかありません。
ただ、そこからは自分で裁量の余地があります。もし高い株価からスタートしたいなら、初値を高く設定することができます。その代り保有VA数(=株式で言うところの発行済み株式数に相当)は少なくなります。
ここで重要なのは、少なくとも現在のVALUのしくみでは1)後から増資できない、2)株式分割できない、ようになっていると見受けられるという点です。(これは僕が間違っているかもしれないし、後からルールが変更されるかもしれません)
すると自分のVAを上場する際「原価0」で賦与される保有VA数は、これ限りであり、一度それを売り出してしまうと、二度とシニョリッジ(発行特権)は享受できないことを意味します。
そうであれば、最初からガンガンVAを売り出すのではなく、VAの値段がある程度上昇し、売り手に有利な値段になったところでより多くのVAを売った方が得ということになります。
そこで問題なのはVAの価格です。
VAはビットコインで建値が表示されています。1BTCといった調子です。
いまビットコイン価格は31万円しているので、もし自分が売り出すVAの建値が1BTCなら、1VAを買うのに31万円も払わないといけません。
フェイスブック株は今155ドルしていて、値嵩株に分類されると思うけど、それでも1万3千円程度で購入できるわけです。
その事を考えると、たかがお遊びに過ぎないVALUのゲームに「ポン!」と1VAに31万円も払うような御仁は、そう多くは無い気がするのです。
僕の庶民的な金銭感覚から言えば、VALUの美人投票で遊ぶ際、ワンコインか、スタバのラテの値段くらいなら(まあ遊んでみるか?)という気になります。しかし1回で10万円を超えるような博打は、狂気の沙汰ですね(笑)
それからVALUは一株当たり利益(EPS)に相当するものが無いので、ファンダメンタルズの裏打ちはありません。しかしチャートは存在すると思います。
実際、株の世界でもファンダメンタルズを無視し、チャートだけで投資する、いわゆるモメンタム投資という手法が存在します。フェイスブック、エヌヴィディア、アルファベット、アマゾン、ネットフリックス……これらの株は、すべてモメンタム筋が好んでトレードする銘柄です。
これと同じように、モメンタム筋がVALUで跋扈することが起きても不思議は無いと思います。
まとめ
1. 最初から沢山のVAを売り出すのは不利
2. みんなが買いやすい売り出し価格を設定すること
3. VALUにもチャート分析は存在しうる
4. たぶん株で言うところのモメンタム投資の手法が好まれる
【お知らせ】
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最後にMarket Hack読者の親睦コミュニティ、Market Hack Salonは、現在、新規メンバーを募集中です。