観光大国フランスの苦悩=テロとの戦い、根絶困難
2017年06月24日 15:03 発信地:フランス
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【6月24日 時事通信社】テロが頻発するフランスは、世界屈指の観光大国だ。多くの観光客でにぎわうパリのシャンゼリゼ通りやノートルダム寺院、南部ニースのリゾート地などがテロや襲撃事件の舞台になった。パリのミシカ副市長は「危険にさらされていない首都はない」と、困難なテロ根絶に苦悩を深める。警察官数を増やすなどの安全対策だけでは追いつかないフランスのテロとの戦いを現地で見た。
パリの象徴・エッフェル塔。土台の周囲に防弾ガラスの壁を設置する計画が進行中だ。2016年7月に海岸通りの遊歩道をトラックが暴走、歩行者らに86人の犠牲者を出したニースでは、車止めの設置など安全対策を急いでいる。
暴走トラックが停止した目の前のホテル、ハイアットリージェンシーでは、監視カメラの数を増やし、スタッフに安全管理の研修を徹底した。オスターバルダー総支配人は「客の求めるバカンス感と安全対策のバランスを取ることが大事」と話す。
しかし欧州各地で相次ぐ車両を使ったテロを完全に防ぐのは極めて難しい。今月19日にはシャンゼリゼ通りで乗用車が治安車両に突っ込むテロが発生した。同通りでは4月、イスラム過激主義者とみられる男の発砲で、警官が死亡するテロも起き、「世界で最も美しい」と言われる通りはテロの標的と化している。
観光地とともにテロが多発するのは、15年11月に130人の犠牲者を出したパリ同時テロでも狙われたサッカーなどの競技場だ。仏当局は昨年のサッカー欧州選手権でのテロ計画を未然に防いだが、ミシカ副市長はサッカー場での安全チェック強化を例に挙げ、「ゲート通過を待つ人が行列をつくれば、新たなテロリストの標的になり得る」と指摘。「解決策を講じても、それが新しい課題をつくり出してしまう」と危機感を募らせる。
フランスではパリ同時テロ以降の非常事態宣言は今も続く。それでも15年は大きく減少した日本からの観光客は今年、同時テロ以前の水準に回復すると見込まれる。パリは24年夏季五輪の有力候補地。ミシカ副市長は「それまでには安全面も大きく進歩するだろう。周辺国と協力し合い、過激派に関する情報交換をしっかりやっていく」と強調した。(c)時事通信社