家族が亡くなって葬儀が終わったらやるべき相続・手続きのまとめ
突然、大切な家族が亡くなり、ご自身が中心となって葬儀の準備や役所の手続きなどをすることになると、悲しんでいる訳にもいかず、着手すると怒涛のように対応すべきことがでてきます。
「やっと葬儀関係もひと段落、相続や手続きはゆっくりやろう」
ついついこのように考えがちですが、のちにご自身たちを苦しめることになりかねません。
亡くなられて5日ほどで葬儀などのドタバタが落ち着き、やっと悲しみにふけることができると思い少し気が楽になります。しかし、光熱費や年金などを止めないと支払いが発生してしまったり、揉めるかもしれない相続財産の分割の話し合い、期限内の相続税の対応など、実はまだまだ気が抜けない日々が続きます。
図1:葬儀が終わっても「葬儀・手続き」が必要で気が抜けない
※自社調べ
亡くなられた方の相続や手続きは、人によって全く異なる財産や契約などをヌケモレなく調べて対応することになります。日ごろから相続に特化した業務をおこなう専門家でも大変なこの作業ですが、ご自身でもすべてを対応することが可能です。
今回は、亡くなられた方の相続や手続きの方法について、ご自身で判断できる内容をご紹介します。
Contents
- 1.ご家族が亡くなった。葬儀が終わったあとの相続・手続きの総まとめ
- 2.STEP1:亡くなってから5日以内にやるべき手続き
- 3.STEP2:喪主が四十九日の法要を目途にやるべき5つのこと
- 4.STEP3:喪主が3ヶ月以内に判断すべきたった1つのこと
- 5.STEP4:相続税の申告の対象か確認し、進め方を決める
- 6.STEP5:相続財産をどう分割するか決める
- 7.STEP6:遺産の分割と名義変更等の手続きは意外に時間がかかる
- 8.STEP7:相続税の申告・納税は対象者だけが実施
- 9.まとめ
1.ご家族が亡くなった。葬儀が終わったあとの相続・手続きの総まとめ
家族が亡くなられて最初の5日間は怒涛のように対応すべきことがでてきます。その一つは相続や手続きの準備・対応であり、最初の5日間に効率よく対応できたかによって、その後のスムーズさも大きく変わります。葬儀関係が終わると、すぐに相続や手続きについてヌケモレない対応が必要となります。ご自身でやるにしても専門家に依頼するにしても、何が必要であるか把握することが大切ですので、ぜひ押さえておきましょう。
図2:相続・手続きは誰もが必要
1-1.全員必須!相続・手続きを無事に完了させる流れの全体像
葬儀が終わったら四十九日の法要の準備をして、四十九日が終わったら落ち着いて相続や手続きを順次していこう、と多くの方はこのように考えます。また同時に「相続の話を四十九日の法要より前にすることは不謹慎だ」と思われる方も多く、実際に相続の話を早く持ち出し過ぎてトラブルになったケースもあります。
図3:「争続」にならないために喪主が下準備を進めましょう
俗に言う“争続”にならないようにするためには、喪主となった方が現実を見て亡くなった直後から着々と下準備を整えていくことが大切です。相続財産をもらう権利がある相続人の皆さんの気持ちが落ち着いた頃に相続財産の話などを慌てずに切り出し、本記事の内容をもとに相続・手続き完了まで進めていきましょう。
図4:相続・手続きを無事に完了させるスケジュールの全体像
※自社調べ
※相続税の対象者:国税庁「平成27年分の相続税の申告状況について」より
1-2.知っておきたい遺産相続の7つの期限
相続に関わる7つの期限があり、この期限を守って相続の手続きをする必要がありますので、確認しておきましょう。
※7つの期限はこちら ⇒ 「遺産相続のための7つの期限と遺産相続全体の流れの総まとめ」
1-3.相続に関わる診断シートで難易度をチェック
相続は財産の多い・少ないに関わらず、全員が必要なものです。相続する方がお一人であったり、配偶者とお子さんお一人の様な場合にはもめ事が起きるケースは少ないのですが、相続する方が多いほどいろいろな意見が出たり、財産の分割が複雑になったりと、争いが起きるケースも増えます。図2の簡易診断シートを確認して、チェックが少ないほど、早めに相続の準備に取り掛かることをオススメします。
図5:相続の簡易診断シート
※自社調べ
2.STEP1:亡くなってから5日以内にやるべき手続き
ご家族が亡くなったあと、怒涛のようにおとずれる葬儀の準備から5日以内にやった方がよい手続きまでこちらにまとめました。
いざという時になって、何が必要かヌケモレなく調べること、冷静に考えて効率よく動くことはむずかしく事前準備が大切になります。ぜひ、ご確認ください。また、遠方から来られる方が仕切る場合、5日以内に可能な限り手続き関係も済ませましょう。
※亡くなって5日以内の対応は ⇒ 「家族が亡くなってから5日以内にやるべき手続きのまとめ」
3.STEP2:喪主が四十九日の法要を目途にやるべき5つのこと
1-1.でご説明したように“争続”にならないために、喪主となった方は必要な下準備を進めていく必要があります。四十九日の法要を待たずして、この下準備を進めていく主な理由は「相続放棄」の判断のためです。亡くなられた方に借金が無いことが明確であれば良いのですが、分からない場合やもしものことを考える場合には「相続人の確定」と「相続財産の把握」をした上で「相続放棄をするかどうかの判断」と「家庭裁判所への申立」の2つを3ヶ月以内にしなければなりません。四十九日の法要が終わったら・・・と思っていると、短期間に大慌てをすることになります。
【相続放棄の申立件数は年々増えている】
平成27年の相続放棄の申立件数は約18万9000件(最高裁判所「司法統計年報」より)となり、毎年増えています。借金の話は生前に家族にしないケースが多く、のちに発覚して慌てることが多くあります。亡くなられた方の財産を早く確実に把握することが大切となります。
図6:四十九日を目途に実施する流れ
※自社調べ
3-1.届いた郵送物はすべて段ボールにまとめる(亡くなってすぐから)
相続にむけて財産を探すにしても、株などのように証券会社のシステム上にしか情報が無い財産もあります。そういった情報を明らかにしていくためには、郵便物が役立つことが多々あります。また、借金などの支払いの必要なものは滞った時点で書類が届く可能性があるため、亡くなられた後に届いた郵便物は、関係ないと思う広告であってもすべて段ボールにまとめて取っておくと役立つ可能性が高いです。
図7:届いた郵送物は段ボールにまとめるイメージ
3-2.遺言が無いか探す
遺言があると全ての相続財産の分割に対して優先されます。つまり相続人全員で集まって協議をしても、そのあと遺言が見つかり、財産の指定があると基本的には遺言どおり分割することになります。相続財産は亡くなられた方の財産ですから、亡くなられた方の意思を最も尊重できる遺言は最優先となります。亡くなられた方の自筆で書かれた自筆証書遺言であれば家庭裁判所で検認の手続きをして開封します。
※自宅で遺言を見つけたら → 「遺言書は開封しても大丈夫!?遺言を見つけたときの対応のすべて」
3-3.相続の対象となる相続人は戸籍謄本を取得して確定
亡くなられた方を基点として、相続の対象となる相続人を確定させます。相続では戸籍上の相続人を把握して例え疎遠であったり、連絡先を知らなくても全員に連絡して一緒に進める必要があります。手順としては、「亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本の取得」と「相続関係図の作成」です。
3-3-1.出生から死亡までの戸籍謄本を集める
亡くなられた方が生まれてから亡くなるまでの間に、戸籍がどう変化したのかについて市町村役場で戸籍謄本を取得して確認していきます。そうすると、思いがけない家族関係が見えてくることがあります。再婚をされた場合のお子さんとの戸籍の関係や、過去にお子さんを認知したことが無いか、養子縁組がされていないかなど戸籍を確認しますが、確認して初めて分かる事実もあります。
※自社調べ
3-3-2.相続人を確定して、相続関係図を作成
戸籍が揃ったら図5のような相続関係図を作成して、誰が相続人となるか確定していきます。のちの相続手続き等でも利用しますので、正しい情報で作成しましょう。
図8:相続関係図
3-4.相続財産は4つの分類から11個の相続財産を把握
相続財産は、大きく4つに分類できます。この財産を全て確定させないと、相続税の対象であるかどうかの判断ができません。生前に財産を明確にご家族に伝えていれば良いのですが、配偶者でも把握していないケースが大半ですので、少しでも多くの時間を財産の把握に使いましょう。
また、本来の財産については、プラスの財産だけでなく借金などマイナスの財産も把握が必要となりますので、忘れないようにしましょう。
図9:相続財産の4つの分類
※自社調べ
3-4-1.預金額の確定
預金は各金融機関に残高の照会をかけ、残高証明書を取得する手続きをとれば把握できます。ただし、照会すると口座が凍結しますので、自動引落等もできなくなりますのでご注意ください。
また、近年はネットバンク(楽天銀行など)を利用されている方も多いのですが、通帳も印鑑もありませんので、気がつかないことや見つけられないことも考えられます。パソコンやスマートフォンでネットバンクのページがブックマークされていないか確認をしましょう。
なお、残高証明書の発行に必要な書類は、金融機関ごとに異なりますがおおよそ次の書類を揃えれば大丈夫でしょう。
<残高証明書の取得に必要な資料一覧>
※自社調べ
3-4-2.手元現金の確定
ご自宅にある現金や、亡くなる直前に支払いを目的にして下ろした現金は亡くなられた時点から相続財産となります。亡くなられたあとは葬儀の準備や手続きが怒涛のようにやってきますので、亡くなった時点でいくら現金があったのか、分かるようにメモをしておくことと使った場合には領収書の保管をオススメします。他の相続人に亡くなられた方のために使用した費用だと明確に示すことで相続財産の分割の際にトラブルを回避できます。
3-4-3.不動産価値の把握
不動産の価値は、なかなか素人の方が確定させることは難しいものです。特に、土地の形が正方形や長方形ではない場合(不整形地)や、奥行きが長い土地など相続の評価額を下げる考え方は難しいもので、専門家へご相談されることをオススメします。まずは、法務局に行き「登記簿謄本」と「公図」をもらって相続する不動産の正しい情報を得ます。
次に、財産としての目安の価値を知るために、各市町村役場に行き固定資産税の評価証明書をもらいます。評価証明書に記載のある固定資産税評価額は売却する場合の参考となる公示価格の約70%です。この時点では、この価格を仮の相続財産として考え、相続税の申告の対象かどうか確認していきます。もし、不動産を入れた相続財産の総額が相続税の申告の対象かどうかギリギリであった場合には、この時点で専門家に相談しても良いかもしれません。後の相続の手続きの期間が異なってきます。なお、相続税の申告の対象については、5-1を参照してください。
3-4-4.株式価値の把握
株の取引をしていることを知っている場合や、亡くなったあとに証券会社から取引報告書が届いた場合など、株式をお持ちのときは、株の価値を市場の価格から算出します。ただし、亡くなられた当月の取引が終了しないと判断ができませんので、おおよその価値は亡くなられた日の株価で把握しましょう。また、お知り合いの会社や自分の会社など上場していない非上場株式を持っている場合には、その会社へ連絡して価値を確認することと、今後どうしていくかについても話し合いをしましょう。
※株の相続については → 「株式の相続税の考え方は?上場株と非上場株の違いとポイント!」
3-4-5.車の価値の把握
車の価値は、購入した額ではなく、売却できる金額での評価となります。一度、買取査定をしてもらい算出された金額を車の価値として利用します
3-4-6.ゴルフ会員権、リゾート会員権の把握
取引がある会員権は、市場価値を確認してその取引価格もとに評価をします。ゴルフの会員権で取引相場がある場合には取引価格の約70%の金額で考えます。ただし、現在では施設の利用は継続的にできるものの売買の値がつかない会員権も多く、その場合は価値なしで扱います。
3-4-7.生命保険金の確定
生命保険会社の保険証書を確認することで金額を把握できます。ただし、生命保険は受取人が決まっていることから、分割の対象にはなりません。
3-4-8.死亡退職金の確定
死亡退職金は、勤めている会社の人事に確認しましょう。ただし、受取人が各会社の規定で決められており、それに準ずることから分割の対象にはなりません。
3-4-9.生前贈与・相続時精算課税の確定
亡くなる前3年以内に贈与を受けた財産については、贈与税を納税していたとしても、非課税枠の中で贈与したものであっても相続財産として持ち戻して相続税の計算をおこないます。また、生前に相続時精算課税制度を利用して贈与を受けている場合には、その名のとおりすでに贈与された財産を相続財産として持ち戻して相続税の計算を行います。亡くなられたことで相続財産とあわせて計算をした結果、支払いが発生する場合があります。また相続時精算課税の申告書を探しておきましょう。
※相続時精算課税は → 「相続時精算課税って何?基本知識とメリット・デメリットを知ろう」
3-4-10.お墓、仏壇、位牌など非課税財産の確定
お墓や仏壇、位はい、神棚など、日ごろから礼拝に使用されているものは、祖先をまつる習慣を尊重する意味から、課税の対象となりません。また、公益事業用の財産を引き継いだ場合や、相続税の申告期限までに国や地方公共団体等に寄附した財産についても「非課税財産」となります。
3-4-11.借金、葬儀費用、税金などの未払い金の把握
借金は相続の対象となります。借金で気をつけることは、相続放棄をする場合は3ヶ月以内に手続きをすることで免除となることと、借金の相続は法定相続分にそって分割されるため相続する財産に偏りがある場合には返済の進め方に注意が必要なことです。詳しくは4章を確認しましょう。また、葬儀費用や未払い金の費用は、相続税の計算をする際に「債務控除」として財産から差し引くことができます。
3-5.年金・光熱費などの解約は1ヶ月を目途に!
年金の支給は手続きをしないと停止されません。亡くなった翌月以降の支給分は返還する必要がありますので、早めに手続きをして止めましょう。また、光熱費・賃借料・NTT・NHK・携帯電話・レンタル契約など月々の費用が発生するものについては解約手続きをしないと支払いが膨らんでいきます。ただし、配偶者の方がご健在であったり、同居の家族がいらっしゃる場合には名義変更をしましょう。なお、これらの支払いが亡くなられた方の口座からの引き落としとなっている場合には、口座が凍結されているため支払いが滞ってしまいますので注意しましょう。
ただし、実家(亡くなられた方の自宅)が空き家になる場合には、光熱費の支払いを止めてしまうと空き家のトラブルに発展することになりますので、注意が必要です。
※空き家の詳しいことは → 「実家が空き家になる前に決めておきたい3つのこと」
4.STEP3:喪主が3ヶ月以内に判断すべきたった1つのこと
喪主が亡くなられてから3ヶ月以内に判断するべき内容は「相続放棄」です。これがあまり知られていないのは、放棄しない場合には何も対応しなくてよいことや、亡くなった方に借金がたくさんあって困った話はあまり他人にしないことから期限を知らない方が多い傾向にあると考えられます。
借金が多く相続したくない場合にはすみやかに判断して相続人全員に連絡のうえ、全員が各々に3ヶ月以内に家庭裁判所へ申し立てが完了できるようにサポートしましょう。
注意:四十九日の法要が終わったらあっという間に3ヶ月
四十九日の法要は名前のとおり49日前後で実施します。その後、相続放棄の期限まで残り1ヶ月と10日前後となるため、その間に全ての手続きを終わらすにはかなり厳しくなります。
※相続放棄については → 「相続放棄を3ヶ月以内に判断しないと遺産相続で借金を背負うことに!」
図5:喪主が3ヶ月以内に判断すべきこと
※自社調べ
5.STEP4:相続税の申告の対象か確認し、進め方を決める
平成27年の相続税の申告から、相続税の非課税枠である基礎控除が大幅に下げられました。具体的には、改正前と改正後では40%の基礎控除が下がりました。この影響もあり平成27年は前年の約2倍である約8%の方が相続税の申告の対象となりました。
では、相続税の申告が関係しない約92%の方は何もしなくてよいかと言うとそんなことはありません。不要なのは相続税の申告と納税だけであり、相続財産の分割や各種手続きは誰もがやらなければなりません。
図6:
※自社調べ
5-1.相続税の申告は相続財産が3,000万円以上の場合に発生
相続税に関わる8%の方は、図7の式のとおり相続財産から基礎控除を引いた結果、プラスになる方です。この方々は相続税の申告の対象者であり、その他の控除により納税額がゼロとなる場合もあります。
図7:相続税の課税対象の考え方
※自社調べ
<例>
相続人:配偶者、お子さん2人(長男・長女)
財 産:7,000万円(不動産4,000万円、現金3,000万円)
相続財産7,000万円-基礎控除4,800万円=2,200万円
よって、相続税の申告対象となる
5-2.財産の分割や相続手続き、相続税の申告をどう進めていくか決める
相続や手続きに関しては全てをご自身で対応することができます。契約関係を解約する手続きや相続財産の分割の話し合い(遺産分割協議)に関しては、ご自分たちご家族で必ず実施しましょう。相続や相続財産に関わる手続きは複雑であったり難しい場合があることを理解して、ご自身で進めるか専門家に依頼するか決めましょう。
5-2-1.相続手続きはご自身でも全ての手続きが可能
相続に関わる手続きの中で、専門家に依頼しないとできない手続きはありません。すべての手続きはご自身でできます。ただし、相続税の計算や相続人を確定するための書類集めなどは複雑になる場合があります。法律などルールは記載されていますが、それをご自身に当てはめるとどうなるのか、難しさが残ります。書店で販売されている書籍やインターネットの情報も大切ですが、相続税を専門に扱う税理士がいる会計事務所の無料相談等を活用してゴールまで辿り着きましょう。
5-2-2.相続手続きを専門家に依頼すると良いケース
相続人の確定など役所と何度もやり取りをする可能性のある作業や、遺産分割協議書等の書類を作成したり、預金口座の解約などの手続きも専門家に依頼することができます。また、財産の評価など相続財産の価値を決めたり、相続税の申告書を作成することも依頼ができます
・忙しくて相続関係の手続きをする時間が無い方
・ご自身で勉強して勧めていくのではなく、専門家に任せたい方
・相続税の申告が必要なため、可能な限り税金の支払いを押さえたい方
・相続財産の分割をする話し合いを始めたら揉めてしまった
【全て任せる場合は税理士に相談が吉】
相続の手続きに関わる全ての事を依頼したい場合には、税理士に依頼することが最適です。税理士は財産の評価や次の相続に向けた対策など、税金をベースにアドバイスをしてくれます。また、税理士には行政書士や司法書士との連携があるため、相続の専門部隊のある会計事務所に依頼すれば、最後までワンストップでサービスを提供してくれますし、費用も安くなります。
※税理士の選び方については → 「知識がなくても大丈夫!相続税が発生したときの税理士選びのポイント」
【ワンポイントで任せる場合は専門家へ直接相談が吉】
不動産登記の名義変更だけしたい、亡くなられた方の出生から死亡までの戸籍を揃えたいなどの場合には、司法書士を、家族内でもめ事が発生したら弁護士を選ぶなど、依頼したい内容がピンポイントの場合には、それぞれの専門家に依頼した方が効果的で、費用も安く済みます。
※専門家の選び方については → 「相続手続き・相続税相談で悩んだ人がとるべき4つのSTEP」
5-3.相続税の申告の有無で期間が変わる
相続税の申告が必要な方は、申告・納税の期限が亡くなられた日の翌日から10ヶ月のため、早めに対応して10ヶ月以内に必ず完了させましょう。相続税の申告が必要ない方は、期限はありませんが次の相続が発生する可能性もあり複雑にならないためにも1年を目安に終わらせましょう。
6.STEP5:相続財産をどう分割するか決める
相続財産を具体的に分割していきます。先に記載したとおり、遺言があった場合は遺言が優先となります。3章で四十九日を目途に把握した財産をもとに、全ての財産の価値を確定させ、相続人全員で分割します。相続人には、「相続順位」があり、相続順位の考え方を用いて相続人を確定させます。
※相続順位については → 「遺産相続の順位が簡単に図解で理解できる5つの法則【完全版】」
6-1.相続財産の分割の話し合いは「早めに」「お互いに配慮」がポイント
相続財産を分割する段階になるとご家族から思いもよらない発言が飛び出して、家族仲が悪くなったり揉めたまま何も決まらないケースも珍しくありません。裁判所に申し立てをして、仮にご家族内で争うことになったとしても、余程のことが無ければ法定相続分という法律で定められた割合で分割をすることになります。大切なことは亡くなられた方の意思を尊重しながら、相続人同士がお互いへ配慮をして、早めに決着をすることです。
6-2.相続財産を確定させる
3章で把握した相続財産を全て確定させます。また、生命保険や退職金など分割対象とするものとしないものを分類します。
6-3.全員の参画が必要な相続財産を分割する話し合い
原則としては、相続人全員が集まって相続財産をどのように分割するか決めます。遠隔地の方など参加ができないは場合については、メールやFAXなどを通じて合意していただくことも可能です。分割をする場合には法律で決められた法定相続分というルールを基準として、相続人の間で調整をしていくことが、円満に進めていくコツです。
また、ケースとして多いのが「財産の大半が自宅」という場合です。配偶者が自宅を相続すると現金等の相続財産がほぼ無いため、偏ってしまいます。こういった場合には、皆さんの話し合いと配慮で分割をまとめましょう。自宅を相続した方が、代償としてご自身の財産から他の相続人に支払う代償分割という方法が取られる場合もあります。
※遺産分割については → 「はじめての遺産分割。遺産分割の4STEPと分割方法の基本ガイド」
6-4.相続財産の分割で揉めても結局は法定相続分で決着
もし納得がいかず「裁判ではっきりさせよう」として申し立てをおこない、調停や審判に至ったとしても、結局裁判官は「法定相続分」という法律で定められた分割割合の基準を基に分割する判決になることが多く時間と弁護士費用を使い、家族仲が悪くなったのに得るものがないというとてもさみしい状態になります。労力とお金をかけて後から反省するのであれば、最初から知っておいて冷静に対応することをオススメします。
6-5.相続財産の分割は次の相続(二次相続)を考える
相続税の対象の場合、今回の相続税では相続税が少しでも少ない方が良い。として特例を利用する場合がありますが次の相続の時に、大きな相続税の支払いが必要となるケースがあります。お父様が亡くなられて、お母様に相続する場合など注意しましょう。
6-6.相続税がかかる場合は「自宅」と「配偶者の財産」がポイント
亡くなられた方の自宅を誰が相続するのかによって、小規模宅地の特例が使えるかどうかが決まります。これで相続財産の評価を80%減額できるかどうかが決まります。また配偶者は1億6,000万円まで(または法定相続分まで)相続税が非課税です。
6-7.最後は遺産分割協議書にまとめて全員が署名と捺印
すべての相続財産の分割が決まると遺産分割協議書という書類を作成します。形式は特に決まっていませんが相続財産に関わる内容はあとで揉めないように、全て記載しておくことをオススメします。最後に全員が署名と捺印をして、全員に配布します。
7.STEP6:遺産の分割と名義変更等の手続きは意外に時間がかかる
遺産分割協議書が整ったら、実際に分割の手続きに入ります。それぞれ、いろいろな書類を集めて申請が必要となりますので、ご自身で進めるのか、専門家に依頼するのか判断が必要になります。
7-1.預金の分割・名義変更の方法
預金は金融機関に相続手続き書類をもらいに行って、分割する方全員が署名捺印をして提出をします。近年は余程金利が良い口座を維持するなどの特別な理由が無い限りは名義変更をせず、相続人の口座へ分割して振込をすることになります。一人で複数の口座を持てないなど、金融系のルールに沿った対応となります。
7-2.不動産の名義変更の方法
不動産の名義変更は、遺産分割協議書と登記関係書類をすべて整えて法務局に提出しますが、大半の場合は司法書士に依頼します。手続きが面倒なとこからも依頼することをオススメします。
相続した財産の中に土地や車など所有権がある場合は、早めに名義変更をする必要があります。いくら遺産分割協議で決めて、遺産分割協議書を作成していても名義変更がされていなければ第三者に自分のものだと主張ができません。もちろん売却する場合にも一度名義変更をする必要があります。
8.STEP7:相続税の申告・納税は対象者だけが実施
相続税の納税は必ずご自身で対応します。相続税の申告はご自身で行うか税理士に依頼するか考えます。相続税の申告では、相続財産の評価を特例を使って下げていくため、申告の必要はあるが、納税は不要と言う方も多くいます。税理士に依頼しなかったことで、相続財産の評価を高くしてしまい、払う必要が無かった税金を支払うことになります。
8-1.相続税の申告は期限内に、正しい情報でおこなう
相続税の支払いが期限内に出来ない場合には、延滞税というペナルティを受けます。また、申告した額が少ないと意図的でなければ過少申告税、意図的だと重加算税がかかります。これは税率が非常に高いため、申告は正しい情報でおこないましょう。期限内に正しい考え方でできない場合は、税理士に依頼します。
8-2.相続税の納税は期限内に現金で
納税は必ず現金でおこないます。一部現金の納税ができない場合は、物納という方法もありますが、原則は現金となります。
9.まとめ
大切な方が亡くなると、悲しむ暇が無いほどにいろいろと対応すべきことがあります。
初めての対応ではどうしたら良いのか、全く分からない状態になりますので、ぜひ本記事を参考にしていただければと思います。
本記事では、葬儀や手続きなどを亡くなられたあとすぐに対応したのち、それで終わりと思ったら訪れる相続や残りの手続きをどうすれば良いのかについて説明しました。
多くの課題となるのは「3ヶ月以内の相続放棄の判断」と「遺産分割で亡くなられた方の意思を大切にした話し合いができたか」ということです。
また、相続の手続きが完了しても、該当する方は相続税の申告・納税が終わるまでは気が抜けません。
大切な方が亡くなられて葬儀が終わったあとは、亡くなられた方の意思を大切にしながら相続・手続きを、「早めに」「お互いに配慮して」進めることを大切にしてください。