身勝手な主張

日々感じた様々なことを、自分勝手につぶやき主張します。

ひどすぎる新「小学校学習指導要領解説 算数編」の2年生の「乗法」についての記述 ~執筆者の数学の能力の欠如を疑う

2017年06月24日 | 算数教育・初等理科教育
2017年6月24日(土)


  加計学園の獣医学部を巡る内部文書で大きく信頼を落とした文部科学省・・・その文部科学省が平成20年度から実施される
学習指導要領の文科省版の解説を6月21日に発表した。「〇〇学校学習指導要領解説 〇〇編」は、著作こそ文科省であるが、
あくまでも文科省版の解説というだけで市販の学習指導要領解説本と何ら変わらない。

  「学習指導要領解説」に法的拘束性などなく、教員は読む必要もないし参考にする必要もない

と言えよう。ただ教科書会社は教科書検定のこともあって、必要以上に学習指導要領解説の1字1句を気にする傾向がある。それこそ
「忖度」して学習指導要領解説に合う教科書づくりをする可能性がないではない。その意味で、批判はきちんとしておく必要があろう。

  私も、おおざっぱに「小学校学習指導要領解説 算数編」を読んでみた。そして、はっきり言って、あきれ果てた。また、現行
の「小学校学習指導要領解説 算数編」よりさらに悪くなっていると思った。問題点は、

① 小学校2年生の項目で、「かけ算順序の強制」
② 5年生の項目で、0を偶数に入れながら相変わらず0は2の倍数でないとする。
③ 本来比に割合の概念はないが、一方的に比の値を定義している


など、数学からみたらおかしなことが書いてある。総じて

  「小学校学習指導要領解説 算数編」は、最もあほらしい解説書

と言い切っていいだろう。上の3つのうち特にひどいのは①である。
  ①については、既に東北大助教の黒木玄氏「積分定数」氏、「Eijiro Summi]氏など、多くの人がTwitter等で批判している。
そのことを承知で私もこのブログを追加することは、屋上屋を重ねる嫌いがないでもない。しかし、私も今まで「かけ算の順序」問題で
ブログでも述べてきたこともある。こんなあほらしい文書を教科書会社が算数教科書編集の指針にしたり、教育委員会の指導主事などが教
員の研修に使うことを黙ってみているわけにもいかない。私も一言、述べさせていただく。

  ①で問題になっているのは

 「小学校学習指導要領解説 算数編」の「第二学年の内容」の「乗法」(P112~P117)

の項目である。私は正直これを読んだとき、執筆者の数学の能力を疑った。そして、あきれた。個別に批判してもいいのだが、今まで何度
もこのブログで述べていることもあり、そしてあまりにもこの文章がひどすぎるので、詳細を検討する気になれない。「小学校学習指導要
領解説 算数編」の該当部分をそのまま引用しておこう。ただ、次の三点だけは指摘しておきたい。

  第一に、かけ算の順序に対する従来の文科省の姿勢とこの「乗法」で書かれていることが全く違うと言うことである。

文科省は

  かけ算の順序については、中立である

とのスタンスをとってきた。事実、全国学力テストにおいてもかけ算の順序が違っていても正解としてきた。しかし、今度の「学習指導要
領解説」では、

  上に述べた被乗数と乗数の順序が、この場合の表現において本質的な役割を果たしていることに注意が必要である(P114)

として(一つ分の大きさ)×(幾つ分)=(幾つ分かに当たる大きさ)としなければならないような書き方である。

  文科省の姿勢は乗法の順序について従来通りか、それとも「小学校学習指導要領解説 算数編」の方が勇み足なのか

  第二に執筆者の5×4についての数学としての認識の危うさである。

  式 5×4=5+5+5+5 と 式 5×4=4+4+4+4+4の書き方に、優劣などない。

どちらで表示しても構わない。式自体が必然的に意味を持っているわけでないからである。しかし、ここの執筆者は

  「しかし、5個のまとまりをそのまま書き表す方が自然である」(p113)
 
として、式5×4=5+5+5+5であるかのような書き方をしている。しかし、「自然」かどうかは人の感じ方による。執筆者は、式5×4が
4+4+4+4+4と表すことはだめであるような印象を与える書き方をしている。同じようなことは、

  一つ分に当たる大きさを先に、倍を後に記す。「例えば、2mのテープの3倍の長さ」を表す場合、2×3と記すことにする(P113)

ともある。正直、あほかと思った。2mのテープの3倍の長さを表すのに

  2×3=6  でも 3×2=6

のどちらでもいいことは、数学では常識である。2×3=6や3×2=6に特別な意味などない。また、倍を後に書かなければならない理由もない。

  第三に、第二と関連するが「3×5」の式が必然的に(一つ分の大きさ)×(幾つ分)=(幾つ分かに当たる大きさ)を表しているわけでない
ことである。式「3×5」に意味があるわけでない。問題作りで、

  「プリンが3個ずつ入ったパックが5パックあります。プリンは全部で幾つありますか」 (p114)

でなければならないとしている。そして、

  被乗数と乗数の順序に関する約束が必要であることやその良さを児童に気づかせたい(p114)

とあほみたいなことを書いている。式「3×5」に意味があるわけでない。したがって、

  「プリンが5個ずつ入ったパックが3パックあります。プリンは全部で幾つありますか」

という問題を子ども作っても正解である。

  ほかにも指摘したいことがあるが、とにかくこの執筆者の「乗法」の記述は、いい加減である。こんなあほなことを書いた執筆者が誰であるか
知りたい。いずれ、作成協力者の名前が公表されるから、その中の誰かか国立教育政策研究所の所員か文科省の担当官であろう。こうした執筆が
「小学校学習指導要領解説 算数編」の価値を著しく下げていることは事実である。もう一度、繰り返そう。

    「小学校学習指導要領解説 算数編」に法的拘束性などなく、教員は読む必要もないし参考にする必要もない 


  最後に、引用した「小学校学習指導要領解説 算数編」の文科省のホームページへのリンクと私の「乗法」に関するブログへのリンクを載せておく。

 (私のブログへのリンク)
  かけ算に関すること
  松本幸夫氏の「3×5vs5×3の問題」を読んで1 ~かけ算の順序に意味があるか? (2015年1月12日)
   松本幸夫氏の「3×5vs5×3の問題」を読んで2 ~等分除・包含除の区分の無意味さ  (2015年1月13日
  かけ算の順序問題再び  ~かけ算の順序を強要する算数教科書(2015年4月27日)
  かけ算の順序問題再び2 ~かけ算の順序にこだわる算数教科書(大日本図書) (2015年5月10日)
  算数教科書『たのしい算数2』の「考え方重視」が「考え方の強要」になっている ~掛け算の順序問題(2015年7月5日)
  小学校2年生「かけ算」でのアレイ図 ~その私見と感想(2015年9月21日)
  数学者志村五郎氏の『数学をいかに教えるか』を再度読んで ~掛け算の順序について(2015年12月1日)
  かけ算の順序について1 ~論文「算数を教えるのに必要な数学的素養」を読む(2016年1月6日)
  かけ算の順序について2 ~論文「算数を教えるのに必要な数学的素養」を読む(2016年1月7日)
  6×8、8×6 のどちらが多いだろうか?(2016年1月24日)

 (文科省) 
   「小学校学習指導要領解説 算数編」  









 

(追記)

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