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 主権を我が手に取り戻す――そんな熱狂の中で、英国が国民投票で欧州連合(EU)からの離脱を決めて23日で1年。ようやく始まった離脱交渉の先行きは依然不透明だ。英国経済は減速の兆しがみられ、政治は不安定化している。テロや大規模火災も起き、社会の憂いは深まるばかりだ。

 30ポンド(4200円)~50ポンド(7千円)ほどのポロシャツやジーンズが並ぶロンドン市内の衣料品店。「ここ数カ月、お客さんの入りが悪くなった」とモハメド・アリ店長(46)は嘆く。

 5月の売り上げは1年前より10%ほど落ちたという。ポンド安で、パキスタン製などの仕入れ値が上がり、販売価格を数%値上げせざるを得なかった。

 離脱に端を発した物価上昇に、国民の間には不安の声がもれる。

 ポンドは離脱決定後に急落。対ドルでは、今も離脱決定前より15%安い。輸入品の値上がりで、5月の消費者物価上昇率は前年同月比2・9%とインフレ傾向が強まった。物価上昇を受け、5月の小売り売上高指数は前月比1・2%低下した。消費低迷のあおりを受け、英国の1~3月期の国内総生産(GDP)成長率は前期比0・2%と、昨年10~12月期の0・7%から減速している。

 英中部バーミンガムの政府機関で働くフランシス・バーンさん(56)は「いろんなものが値上がりして、生活が苦しくなる一方だ」と不満を漏らす。保守党政権による緊縮策で政府職員の賃上げは年1%未満に抑えられている。バーンさんは昨年の国民投票で「離脱」に投票したが、総選挙では「離脱より生活だ」として、反緊縮を掲げる労働党を支持した。

 ポンド安で輸出競争力が高まる…

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