別府の隠しカメラ忘れない 大分の労福協、看板設置 「共謀罪」警察の暴走懸念

カメラが隠された木の切り株に設置された看板=19日午前、大分県別府市の別府地区労働福祉会館
カメラが隠された木の切り株に設置された看板=19日午前、大分県別府市の別府地区労働福祉会館
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 「警察の暴挙への怒りを忘れず、風化させないためにも、ここに経緯を記す」-。そう刻まれた看板が、大分県別府市の別府地区労働福祉会館に設置されている。昨年8月に発覚した別府署による隠しカメラ事件の舞台。「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法が成立したばかりで「ますます監視社会になるのでは」という関係者の危機感が設置へと駆り立てた。

 事件は昨年6月の参院選の公示前後に起きた。署員が選挙違反の捜査のため、野党候補を支援する選対事務所が入る会館の敷地内に無断で侵入し、カメラ2台を設置。当時の刑事官ら4人が建造物侵入罪で略式起訴され、5万~10万円の罰金刑を受けた。

 看板は、会館を管理する別速杵国東地区労働者福祉協議会が、カメラ1台が取り付けられていた木の切り株に、改正法が成立する3日前の今月12日に設置した。縦30センチ、横42センチで、事件の経緯、実際に使われたカメラの写真や撮影範囲を説明している。政治活動の自由という民主主義の根幹に関わる事件だったが、罰金刑で終結。看板では「プライバシー侵害と捜査の違法性は置き去りにされた」と訴えている。

 改正法で捜査機関は、犯罪を計画段階から取り締まれるようになる。協議会の矢須田士(ものぶ)事務局長は「署員は疑わしいからカメラを取り付けた。改正法は警察権力に新たな力を与えた。今後、監視活動が頻繁になるのではないか。暴挙を許さない姿勢を示すことが重要だ」と話した。

=2017/06/20付 西日本新聞朝刊=

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