「はじめてのひと」は谷川史子による漫画作品。
月刊ココハナで連載中。
はじめてにまつわる連作短編集であるが、前回から続く橘与(たちばな くみ)編から始まる。
こんな風に人を好きになったの、はじめて──
恋の始まりを思い出させてくれた16歳上のあのひと 大きな手で素敵なチェロを弾いて 朗らかで笑った顔が少年みたいで 人懐っこくて、でも時々ちょっと淋しそうで いつだってやさしく頭を撫でてくれる 好きだといったら俺もだよ、と返してくれたのにごめんねって言ったのは、どうして…?(はじめてのひと 2|集英社マンガネットより)
前回はこちら。
美術館で絵画修復の仕事をしている橘与(たちばな くみ)は、先輩の田中久緒に誘われていったライブで、チェリストの諏訪内(すわない)と出会う。
彼のライブに通う内に、その言動に、だんだん惹かれていく。
彼女の日常は色づき始めていた。
大家さんにもかわいがられているようだ。
敷地内の離れを借りて住んでいるため、一人暮らしの割には広いうちで、雨戸も自分で開け閉めしている。
産みたての卵での朝ごはん、部屋も整っていて、丁寧な暮らしをしていることがうかがえる。
最近の彼女は浮かれていた。
彼のことを考えるだけでとても幸せそうで、周りにも何かいいことがあったなとバレバレなんだけど、仕事にはむしろいい影響を与えているようでもある。
「ささやかだけど、好きな人と約束をした未来がある。
それだけでこんなに嬉しくなること、頑張れること、世界が輝くこと、
はじめて知った気がする。」
問題は、諏訪内が独身なのかどうかということ。
16歳年上の人である。
すでに結婚していても不思議はない。
彼は弦楽器奏者なので指輪では判断しにくいし、これまで家族の話には触れていない。
ライブハウスの知りあいらしき人も、いい年してこの人は、くらいの反応であった。
何より、与は妻帯者がちょっかいを出してくるわけがないと思いこんでいる。
大事に育てられてきた彼女は人を疑ってみることがあまりないのかもしれない。
そんな彼女を久緖は心配する。
かわいい後輩が変な男に引っかかったりしないか、しかも自分が誘ったことが原因で、与を傷付けることになったりしたら後悔では済まない。
言葉に気を使いながらも的確に与に伝えるところはさすが先輩である。
そのことを本人に確かめたらなんと答えるか。
与は覚悟を決めるのだった。
諏訪内め。
今回は1巻まるごと与と諏訪内二人の話である。
そして3巻もそんな雰囲気なので、もはや連作短編集とは言えないのかもしれない。
表紙で察せられるように、予想される通りなのだが、どう転んでも与が泣く流れになりそうなのがつらいね。
最終的には彼女が幸せになる結末になるといいけどね。
次は1年後かな。