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観光地・奈良に必要なのはビジネスホテル?

更新:06/23 20:18

 JR奈良駅の駅前に今月末、新しいホテルがオープンします。元々は外資系高級ホテルになるはずだったんですが、紆余曲折を経てできたのはビジネスホテル。そう聞くと、ちょっと残念な感じもしますが、実はビジネスホテルこそ、いまの奈良に必要な施設なんです。

 今月、JR奈良駅の駅前にオープンする新しいホテル。東大寺や奈良公園など観光客で賑わうエリアからは少し離れた立地ゆえか、駅前にもかかわらず長らく空き地だった土地に建設されましたが、完成するまでには長い紆余曲折がありました。

 10年前、奈良市はホテルの誘致を目指して駅前のこの土地を東京の不動産会社に売却。外資系高級ホテルが進出する計画でした。しかしその翌年、不動産会社がリーマンショックのあおりを受け、破綻してしまいます。事業を受け継いだ別の企業も資金調達が難航し、翌年に撤退。

 「残念に思うとともに、結果責任を強く感じる」(奈良市 藤原昭市長(当時))

 当時の奈良市長が責任を取り、次の選挙への出馬を断念する事態となりました。その後、奈良市はあらためて土地の入札を行い、県内の不動産業者が落札。そしてできあがったのが外資系ホテルではなく、建物の半分がマンションになっているビジネスホテルだったのです。

 「(ホテルとして)まるまる全部土地を使うのはちょっと難しいかなという判断で、マンションと一緒に開発した」(フクダ不動産 福田文彦代表取締役)

 宿泊者数が全国46位と、なかなか観光客が泊まってくれない奈良。昼間は賑わう商店街も夜になると…

 「午後8時半ごろですが、すでにしまっている飲食店もあり、人の姿はほとんどありません」(中村武史記者リポート)

 Q.きょうは奈良に泊まる?
 「いいえ、大阪です」(外国人観光客)
 Q.なぜ大阪に?
 「その方が便利だから」

 苦戦の理由がホテル不足。魅力的な高級ホテルや旅館が少ないことが課題とされてきました。今回オープンするのはビジネスホテル。これでは観光客を呼び込めない気もしますが…さにあらず。あの「星野リゾート」によれば、日本ではビジネスホテルに泊まる人のうち半分以上が観光客なのだといいます。

 「私たちの調査結果によると、ビジネス客は半分以下。大きな観光需要が都市に行っている」(星野リゾート 星野佳路社長)

 つまり、ビジネスホテルこそ観光客争奪戦の主戦場。JR奈良駅の駅前でも、近年ビジネスホテルが次々と建設されています。今月オープンするホテルにも、外国人を意識した畳敷きの部屋や本格的なジャズバーなど観光客狙いの設備が…

 「宿泊施設が不十分だから宿泊ができないという状況は改善していく必要がある」(奈良市 仲川げん市長)

 奈良公園の一部を利用するなど行政主導で高級ホテルの誘致を急ぐ奈良ですが、ビジネスホテルが増えることこそ「泊まる街」につながるのかもしれません。

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