離脱後もEU市民の権利保証 メイ首相、首脳会議で表明
テリーザ・メイ英首相は22日、ブリュッセルで欧州連合(EU)の首脳会議に出席し、合法的に滞在するEU市民の権利はEU離脱後も守られると表明した。
メイ首相は、「誰も崖っぷちに立たされたりはしない」と述べた。
新たに設けられる「英国定住資格」では、英国で5年間暮らした人に医療サービスや教育、福祉や年金面で、英国民と同様の権利が与えられる。
EU市民の権利保護は、今月19日からブリュッセルで正式に始まった離脱交渉で優先的な議題となっている。
メイ首相の今回の提案に先立ちEUは、英国内のEU市民と他のEU各国に住む推計120万人の英国民に同様の権利を与え、離脱後も欧州司法裁判所(ECJ)が管轄することを求めていた。
離脱交渉ではこのほか、英国の未払い分担金の支払いや、アイルランドと北アイルランドの国境管理が争点となっている。
現在英国内で生活する推計320万人のEU市民の間では、離脱後の権利をめぐって懸念が高まっており、一部には強制送還を心配する人さえいた。
メイ首相は、「誰も住む場所を離れざる得なくなったり、家族が引き離されるようなことは、英国は望んでいない」と述べ、他のEU加盟27カ国を安心させることに努めた。
各国は慎重な反応を示した。
ドイツのアンゲラ・メルケル首相は、「良い出発点」だとしつつも、離脱をめぐる多くの課題が残っていると指摘した。
あるEU高官はBBCに対し、英国の提案の詳しい内容が来週26日に明らかになれば、「1行、1行」詳しく精査されるだろうと述べた。
首脳会議全体では、メイ首相の離脱に関する発言はわずかな部分にとどまった。意見の対立を表面化させまいとする首脳らは議論を避けた。
英国で今月8日に実施された総選挙で与党・保守党が単独過半数を割ったことで、メイ首相の指導力は著しく弱まっており、離脱の過程全体をめぐる不透明感も増している。
離脱通告を受けた最終的な離脱の期限は約2年後の2019年3月30日。離脱前に英国で暮らし始めたものの、「英国定住資格」の取得資格を得るのに必要な5年に達していないEU市民には猶予期間が与えられるが、どの時点から住んでいれば良いのかは明らかになっていない。
一方英国は、貿易協定の交渉をできるだけ早く始めたい考え。しかしEUは、EU市民の権利保護や英国の未払い分担金、アイルランドと北アイルランドの国境の扱いを優先的に協議すると主張し、英国に同意させている。
EUのドナルド・トゥスク大統領(欧州理事会常任議長)は首脳会議で、英国がEUに残留する道も依然として残されていると強調した。トゥスク氏は、故ジョン・レノンのヒット曲「イマジン」の歌詞を引用し、「夢見る人だと言われるかもしれないけれど、私だけじゃない」と語った。
首脳会議ではテロ対策も大きな議題となっている。20日には、ブリュッセルの中央駅で自爆攻撃未遂が起きたばかり。
このほか英国やフランス、スウェーデンを含む複数の国でテロ攻撃が最近発生している。メイ首相は加盟国の一つに対する攻撃はすべての加盟国に対する攻撃だと語った。
首脳会議では、グーグルやツイッター、フェイスブックといった大手インターネット企業に対し、イスラム教聖戦主義者たちの主張を載せたコンテンツをより早期、より能動的に削除するよう圧力をかけることで一致した。
(取材:ローレンス・ピーター記者、BBCニュース、ブリュッセル)
(英語記事 Brexit: EU citizens offered 'UK settled status' by PM May)