米医療保険制度改革 上院共和党案に一部与党議員が懸念
ドナルド・トランプ米大統領が公約にする医療保険制度改革法(オバマケア)の破棄と代案をめぐり、上院共和党は22日、医療保険制度改革の素案を公表した。しかし、同党の上院議員4人が慎重な態度を示しており、先行き不透明となっている。
テッド・クルーズ(テキサス州選出)、ロン・ジョンソン(ウィスコンシン州選出)、マイク・リー(ユタ州選出)、ランド・ポール(ケンタッキー州選出)各議員は共同文書を出し、「この法案に賛成票を入れる用意は意志は固まっていない」ものの、「交渉する用意はある」と述べた。
上院で来週予定される採決で、共和党が過半数の賛成を得て法案を可決するには、党内の造反を2票にとどめる必要がある。野党・民主党は全員反対する見通し。
上院共和党のオバマケア代替法案作成は、ミッチ・マコネル上院院内総務が中心となって秘密裏に進められていたが、内容が22日に公表された。
22日には、マコネル議員の事務所前で行われた法案への抗議デモで43人が逮捕された。
共同文書を出した4議員は保守派に属し、現在の法案ではオバマケアの撤廃と制度の費用削減が十分でないと主張している。この一方で、より穏健派に近い2議員が法案の内容が厳しすぎるとして懸念を示している。
法案は、低所得者向けの公的医療保健「メディケイド」に対する政府支出を大幅に削減することで得られる財源を、富裕層や保険会社、製薬会社への減税に充てようとしている。
ディーン・ヘラー議員(ネバダ州選出)は、法案が地元州に与える影響について「深刻に懸念」していると述べた。来年の中間選挙で再選を目指すヘラ―議員は、「繰り返し表明してきた通り、ネバダにとって良い法案であれば賛成するし、そうでなければ賛成しない」と声明文で述べた。
スーザン・コリンズ議員(メーン州選出)は、法案に賛成するかどうかを決めるのは「まだ早過ぎる」と語った。
コリンズ議員は、法案に盛り込まれたメディケイドの削減や非営利団体「プランド・ペアレントフッド」(家族計画連盟)助成の1年停止に「懸念がある」としている。
142ページに及ぶ素案は、個人の保険加入義務付けなどが含まれる2010年に成立したオバマケアの大半を廃止する内容となっている。
オバマケア成立を主導したバラク・オバマ前大統領はフェイスブックで、上院共和党の案は「根本的に意地悪」だと批判した。
オバマ氏は法案が「中間層や貧しい家庭から米国で最も裕福な人々への巨額の富の移転」を意味すると指摘した。
下院では先月初めに、多数派を占める共和党によってオバマケアの改廃法案が可決されている。
上院案の内容
上院案を22日に公表したマコネル上院共和党院内総務は、「共和党は行動を起こす責務があると考えており、その通りにした」と語った。
上院案は下院案に大方沿っているが、現行のオバマケアと同様に、個人に対する連邦補助金を年齢ではなく所得に応じて決定する。
一方で、所得条件により厳しい規制を設けることで、補助金の認可をより難しくした。
下院案に反対する向きからは、補助金を年齢と結びつけることで高齢者を罰しているとの批判が出ていた。
上院案は、メディケイドの拡大を止める仕組みを下院案よりも段階的にした。ただし、メディケイドの削減幅はより大きくなっている。
また、オバマケアが保険会社に義務付けていた緊急医療や出産、精神科などの基本的な医療サービスについては、各州が選択する余地を拡大した。
今後の見通し
マコネル院内総務は上院案を来週にも採決にかけたい考え。党派性の薄い議会予算局(CBO)は来週、上院案が政府予算や米国民に与える影響の試算を発表する見通しとなっている。
上院で法案が可決されれば、下院に送付される。上院案が現状のまま下院で可決されれば、トランプ大統領が署名し次第成立するが、下院が修正を加えれば、上院で再可決される必要がある。
トランプ大統領は先に、下院案を「意地悪」だとして、上院議員らにより「気前の良い」案を作成するよう強く要請していた。
(英語記事 Republican senators' revolt puts health bill in jeopardy)