【私のルールブック】(09) プレイボーイの代名詞・火野正平に学ぶ

今回も前々回に引き続き、私の“忘れられない人”をご紹介したいと思います。というか、まだご存命なので“結構影響を受けた人”かな。それは、火野正平さん。正平さんと言えば未だにプレイボーイの代名詞と言いますか、例えば、今時のイケメン俳優くんがどこかの美女とスクープされたりすると、“平成の火野正平”と例えられるほどモテ男としての認知度が高い俳優さん。それだけでもある意味凄いことですが、実際にお付き合いすると「そりゃあモテるわな」と深く納得してしまうんです。言っちゃあ悪いですが、見かけはね。私は敬愛を込めて、正平さんが酒を飲んで赤ら顔になると“タコチュウ”呼ばわりさせて戴いておりますが、正統派のイケメン顔でないことは確か。でも、正平さんを見ていると「男は顔じゃない」ということをまざまざと見せつけられる訳です。

先ず、コソコソしない。オープン過ぎるほど彼女をどこにでも連れて行く。そりゃあ、彼女は喜びますよ。そして、こっちが恥ずかしくなるぐらい人前でも平気で甘えることができる。正平さんほど嫌味無く甘えられるおじさんを、私は見たことがありません。極め付きは、自分の見っとも無い部分も曝け出すことができてしまう。これ、ある意味究極だと思います。だって、格好いい面と少年のような顔と、その上、無様な姿まで見せられたらどんだけ振り幅広いのよって。で、人目も憚らず全力で愛してくれる訳ですからね。この辺りに、「男は顔ではない」極意があるのではないかと。ただ、私が正平さんの本当の凄さを感じるのは、そういった正平さん流の色恋が芝居に滲み出ているところ。我々役者がある程度のキャリアを積み、ある年齢に達すると意識し始めるのは“艶”。所謂“色気”なんです。歳を重ねれば、見栄えが悪くなって当たり前。でも、それらを補えるのは艶しかない。じゃあ、艶ってどうやったら手にすることができるんだ? 何をすれば得られるんだ? 答えなんか無いですよね。艶なんて自分で見極められるモノじゃないし、形あるものでもない。しかも、飽く迄も他人からの評価で成立するものですから。でも、「色気とは?」と問われて敢えて答えるとするならば……「生き様」でしょうか? 生きるということはいいことばかりじゃない。格好いいだけでは済まされない。時に醜悪で不様で、白と黒、善と悪、全部ひっくるめてその人の生き様ですから。その生き様がその人なりの色気となって、艶として人を惹き付ける。




大袈裟に聞こえるかもしれませんが、火野正平さんという男は、自分が理想とする色気を手にする為に、酒を呑み、女を愛し、博打を打ち、見方によっちゃあ修行僧にも見えてくる。正平さんを見ていると、「“格好いい役者”を夢見る前に“男”であることを求めよ!」と一喝されたような感覚に陥る時がある。稀有な俳優さんだと思います。でもね、正平さんとは16歳の頃からの付き合いですが、私は早々に真似するのを止めたんです。だって、真似したところで正平さんには勝てないから。同じ土俵で戦っても損するだけですからね。私は別の“男道”を探すことになったのです。女性にもモテれば、男子の後輩にも多大な影響を与える男・火野正平。これからも目が離せませんね。あ~、何か久しぶりに正平さんと呑みたくなってきたな。電話してみよっと。


坂上忍(さかがみ・しのぶ) 俳優・タレント。1967年、東京都生まれ。テレビ出演多数。子役養成に舞台の脚本・演出等、多方面で活躍中。


キャプチャ  2015年7月9日号掲載


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