「私は反安倍政権ではありません」「むしろ、安倍さんに感謝していることもあります」。
前川喜平・前文科省事務次官は2017年6月22日、都内でBuzzFeed Newsの取材に応じ、こう語った。発言の真意とは?
前川氏は、加計学園をめぐる一連の疑惑で、菅義偉官房長官が当初「怪文書」だと言った文書を「見た」と証言し、一躍注目を集めた。
そのことで「安倍政権に反旗を翻した官僚」と喝采される一方、野党や自民党内の「安倍降ろし」に呼応しているとして、批判も浴びた。
しかし、前川さんはこうした見方を否定する。それが冒頭の発言だ。
何を感謝しているのか?
それは、安倍政権の教育政策。とりわけフリースクール政策、そして給付型奨学金だという。
「私は文科省でずっとフリースクールを認めるべきだ、と言ってたんです。いまの学校制度では対応できない不登校問題をどう考えたときに、学校の外に学校ではない選択肢があっていい、と」
「文科省ではそんなことを言う官僚は少数派だった。ところが、安倍さんはフリースクールを支援しようと、施政方針演説でおっしゃった」
フリースクールなどでの多様な学びを、国として支援してまいります。(2015年、施政方針演説)
フリースクールの子どもたちへの支援に初めて踏み込みます。子どもたち一人ひとりの個性を大切にする教育再生を進めてまいります。(2016年、施政方針演説)
この話をしながら、前川さんは冗談めかしてこんな話をした。
「私だってね(フリースクール問題に関して)これは『総理のご意向だ』って言ったことはありますよ(笑)」
不登校支援も
今年2月に施行された、不登校支援を目的にした教育機会確保法も重要だったと振り返る。この制定には前川さんも関わっていた。
「馳(浩・自民党衆院議員)さんらが中心になってフリースクールや夜間中学の問題で、教育機会確保法につながる議員立法をやろうとしていたんです。超党派の議員連盟もできていました」
「私は、この法律をぜひやってほしいと思ったので、いわば黒子になって、条文作りに携わったんです。これは非常に楽しい作業でした」
「フリースクール認めるべきだ、夜間中学をもっと作るべきだと言っても、文科省に内なる『岩盤』があった。それを総理の一声と議員連盟、つまり政治主導で突破するんですよ」
今年の施政方針演説、安倍首相はこんな言葉で言及している。
先般成立した教育機会確保法を踏まえ、フリースクールの子どもたちへの支援を拡充し、いじめや発達障害など様々な事情で不登校となっている子どもたちが、自信を持って学んでいける環境を整えます。(2017年、施政方針演説より)
給付型奨学金も
安倍政権で実現した返済不要の「給付型奨学金」についても、前川さんは賞賛する。
「この前の会見でも言及していましたね。これは安倍政権の非常に大きな成果ですよ。安倍内閣じゃないとできなかったことは、たくさんあると思っています」
前川さんは文科省官僚として、安倍政権や自民党議員とも連携して、政策を実現してきた。党派色はない、という。
「あいつは政治的な意図をもって、民進党や共産党や、自民党の石破さんや麻生さんと結びついているんじゃないかと言われているようです。しかし、政権転覆どころか、私はそもそも反安倍政権ではありません」
前川さんが投げかけているのは、加計学園による獣医学部の開設が本当に公平・公正に決められたのか、という疑問だ。
BuzzFeed Newsは前川さんと、国家戦略特区の有効性を主張してきた認定NPO「フローレンス」の代表理事、駒崎弘樹さんの対談を取材した。前川さんは何を考えているのか。対談を詳報する。
バズフィード・ジャパン ニュース記者
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