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白河桃子 すごい働き方革命

「落ち着け!経営者」 その働き方改革、間違ってます サイボウズ 青野慶久社長インタビュー(前編)

2017/6/22

 こんにちは、ジャーナリストの白河桃子です。

 2017年5月中旬、東京、品川、新橋の各駅に貼られた、ユニークなポスターが話題になりました。

 キャッチコピーは次の通り。「ノー残業、楽勝!予算達成しなくていいならね。」「労働時間削減、結局現場にムチャぶりですか?」「結果出せおじさんと、早く帰れおじさん…ふぅ…(ため息)」「さようなら深夜残業。こんにちは早朝出勤。(苦笑)」

青野慶久社長(写真:吉村永)

 上司からは一方的に残業時間の削減を強いられ、それでも仕事量は今まで通り。働き方改革が注目される中、混乱する現場の本音を見事に表現した広告です。このユニークな広告をリリースしたのは、ソフトウエア会社のサイボウズ。業務効率化のためのグループウエア「kintone(キントーン)」のポスターです。

 こうして多くのビジネスパーソンの心に刺さるメッセージを発信した同社も、かつては典型的なベンチャーの「ブラック企業」でした。社員が終電で帰宅するのは日常茶飯事。会議室に寝泊まりするのも当たり前。青野慶久氏が社長に就任した直後の2005年、離職率が28%まで高まってしまったのです。強い危機感を覚えた青野社長は、抜本的な人事制度改革を行いました。結果的に、5年間で4%まで改善することに成功。その後も同じ水準を維持しています。

 劇的な変化をもたらすことに成功したサイボウズの働き方改革とは、今働き方改革の現場に何が起きているのか? 最も未来形の働き方改革を実現した青野社長と対談しました。

■「早く帰れ」との上司命令に、現場は混乱

白河(敬称略、以下同) 「kintone」の広告、バズり(=ネット上で爆発的に広まる)ましたね!

青野 5月のゴールデンウィーク明けに、東京駅、品川駅、新橋駅で、通路をひとつジャックして4種類のポスターを貼ったんです。それを見た方が、ツイッターで画像とともに「上司を煽るのにお使いください」と発信したのが発端でした。最終的に2万リツイートを超えたんですよ。僕らにとっても想像以上の反響でしたね。

白河 サイボウズでは、私が「働き方改革の未来形」と思う働き方の形が実現しています。それが選べる働き方。ぜひまだ知らない読者のために説明してください。

青野 大きな柱は三つあり、一つは、ライフステージの変化に合わせて働き方を選択できる制度です。育児、介護に限らず通学や副業など個人の事情に応じて、勤務時間や場所を決めることができます。現在は、9種類から働き方を選択できます。

 二つ目は、時間や場所の制約を取り払った「ウルトラワーク」。当社のグループウエアを使うことで、チーム内のコミュニケーションを取りながら、場所と時間を自由にして仕事ができる仕組みをつくりました。

 三つ目は、6年間という長期間の「育自分休暇制度」。退職から6年間は復帰が可能という制度で、長い期間を使って留学をしたり、やりたい活動をすることで、自分の幅を広げる経験をすることができます。

ネットで話題になったポスターのうちの2つ

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