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「エスカレーターで歩くな」と無茶言う人の末路

江戸川大学の斗鬼正一・社会学部現代社会学科教授に聞く

2017年6月23日(金)

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――①のデパートやショッピングセンターなど急ぐ必要のない場所は、片側空け賛成派もまあ納得だと思います。②の階段がすぐ傍にある場所も、本当に傍にあるならいいと思います。ただ③の長いエスカレーターの場合は? 長いエスカレーターほど片側空けにしてもらって先を急ぎたいところですが。東京で片側空けが始まったのも長いエスカレーターがある駅ですよね。

斗鬼:そこは錯覚で、実は、長いエスカレーターほど歩かなくなるんです。そして、その場合は、片側空けを廃止し、全員が両側に乗った方がトータルとしての効率は上がります。英国などでは、一定の条件下では歩行禁止・両側立ちの方が、片側空けより輸送量が30%向上するといった社会実験もあります。

長いエスカレーターは、意外に人は歩かない、と。確かにしんどいですしね。

斗鬼:こうした使い分けに加え、エスカレーターの幅を広げることも有効です。建築基準法の規定ではエスカレーターの幅は110cm以下。一方で公共の階段は140cm以上にせよという規定があります。幅を多少広げるだけで接触事故は確実に減ります。また場所によっては、エレベーターの運転速度を見直してもいいかもしれません。

なるほど。確かに一律で片側空けを続行する、廃止するではなくて、時と場合で使い分けるのはいいアイデアかもしれません。

全面支持派も否定派もろくなことにはならない

斗鬼:これからの時代は、社会ルールも多様性を前提とした設計が欠かせません。片方の立場だけを主張する極端な意見をぶつけ合っていては、世の中はますます生きにくくなります。みんなが折り合いをつけて尊重しあって初めて暮らしやすい社会ができるんです。

とすると、一律で片側空けを廃止せよと言う人や、逆に一律で片側空けを続行せよという人の末路は…。

斗鬼:ろくなことにはなりません。その実例が米大統領のトランプさんですよ。単純で極端な考え・主張は分かりやすいし、一部の人には確実に支持されます。しかしこの世界が多様性に満ちている以上、長続きしない。必ず周囲に摩擦と軋轢を生み、やがてその人もその人を支持する母体も衰退していきます。欧州の人々が、移民排斥など極端な思想を掲げる政治家を思ったほど支持しなくなったのも、トランプさんの存在が大きい、と私は思っています。

なるほど。とりあえず新しいルールが作られるまでは、歩きたい人は止まっている人に気をつけて、止まっている人も歩いていく人のためになるべくスペースを空けるなど、互いに思いやりながらエスカレーターを使うしかなさそうですね。

「末路本」の詳細が気になる人は…

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「「エスカレーターで歩くな」と無茶言う人の末路」の著者

鈴木 信行

鈴木 信行(すずき・のぶゆき)

日経ビジネス副編集長

日経ビジネス、日本経済新聞産業部、日経エンタテインメント、日経ベンチャーを経て2011年1月から日経ビジネス副編集長。中小企業経営、製造業全般、事業承継、相続税制度、資産運用などが守備範囲。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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