この一葉の写真にはいくつかの重要な、象徴的要素が含まれている。
1つ目は「独島」。正面に独島の姿が写っている。独島は韓国人が日本の関係において最も敏感に反応する素材の1つだ。
2つ目は「日本軍」。言うまでもなく韓国人にとって日本軍は侵略と加害者のイメージとともに、恐怖、怒りの感情を呼び起こす刺激剤のような存在である。
3つ目は「旭日旗」。前述した通りここ10年ほどで唐突に韓国が条件反射、あるいはアレルギー反応を示すようになった素材であり、現在、韓国において反日感情を煽り立てるために、最もよく使われている素材だ。
この3つの要素が、1つに集まっているこの映像を見たら、韓国人のほとんどが条件反射的に日本に対して反感を抱くことだろう。しかし、この映像には非常に深刻な問題が含まれている。
私がこの写真を見て、すぐに違和感を覚えたのは左側最前列に立っている兵士の服装だ。鉄帽、鉄帽の後ろの部分に白線で階級が表示されている点、そして、決定的だったのは左側の肩に縫い付けられたワッペン。どう見ても日本軍の服装には見えなかった。また、上陸用舟艇はどうみても米軍の上陸用舟艇(LCVP)にしか見えなかった。
嫌な予感が的中した。調べた結果、この写真はノルマンディー上陸作戦で米軍従軍記者が写した写真に日本軍と旭日旗を巧妙に追加し、それを独島の写真の上にコラージュした捏造写真だったのだ。
2つの写真を並べて比較してみればこれが捏造だということは子供の目にも分かるのではないだろうか。
左側最前列の軍人、そして正面の歩板、さらに右側手前に見えるロープを見れば米軍上陸用舟艇の写真だということは明らかだ。米軍の写真をベースに日本軍と旭日旗を張り付け、まるで独島に上陸しようとする姿のように作り上げたのだ。そして、その写真は韓国の公営放送KBSを通して、全国の視聴者たちに届けられた。
捏造された映像は1つではない。次の写真には独島に向ってボートを進めている日本軍の姿が写し出されているが、やはり旭日旗を掲げている。しかし、この写真のネタ元はノモンハン事件で、渡河作戦を展開する日本軍だった。原本の写真に写っている日章旗を旭日旗に変え、背景を独島に替えられた合成写真なのである。
果たしてこれは許される行為だろうか。韓国人視聴者の中には「当時の状況を再現しようと作った<イメージ画像>を<捏造>と騒ぎ立てることもないのでは?」とKBS側の制作意図を汲み取り、擁護する人もいるかもしれない。
だが、問題はこの映像を通じて、これを「事実」として認識した人が確実にいるということだ。そして、それは日本に対する反感と怒り、すなわち「反日感情」を定着させる要因として働くことになる。