転勤などに伴ってマンションを中古で売る人が価格を下げる動きが東京や大阪で広がっている。過去数年間で価格が高騰し、購入に二の足を踏む消費者が増えているのが背景だ。売却するまでに長い時間がかかるのを嫌い、値下げに動くケースが目立ってきている。
「思ったより値上がり益が出なかった」。今年になって東京都江東区でマンションを売却した40代の男性はこう漏らす。分譲時の購入価格よりは高値で売れたものの、当初の売り出し価格では買い手がつかず、5%ほど値下げをしたという。
東京カンテイ(東京・品川)が22日発表したデータによると、東京都区部で販売されている中古マンションのうち、直近3カ月で値下げをした住戸の割合は5月時点に32.4%。7カ月ぶりの高水準を記録した。販売中の中古住戸の3戸に1戸が値下げをした計算だ。30%を超えると値下げが活発な状況で、将来の価格下落につながりやすいという。
値下げが広がっている背景にあるのが需要の鈍化だ。都区部の中古マンションの平均売り出し価格(70平方メートル換算)は5月時点で5317万円。3年前と比べて3割高い一方、昨年末と比べるとほぼ横ばいだ。「価格が上がったことで購入できる人が限られてきており、さらなる上昇が見込めなくなってきた」(東京カンテイの高橋雅之主任研究員)
仲介業者のケイズワン豊洲店(東京・江東)によると、東京都の江東区、中央区の湾岸エリアは今年、350戸を超える値下げ事例が出ている。1棟だけで100戸近い中古住戸が売りに出たタワーマンションもある。「湾岸エリアはインフラ整備が進むため価格が大きく下がる状況でもない」(三井不動産リアルティ・ららぽーと豊洲センターの佐藤達也所長)との声は多いが、供給が多いだけに、なかなか買い手が現れない住戸も目立つ。
東京に限らず、投資目的にマンションを購入していた富裕層が「高値のうちに売却しようとする動きもみられる」(東急リバブル)。大阪市は5月の平均価格が2844万円と昨年末比で1.4%下落。値下げをした住戸の割合は26.3%と前年同月より5.1ポイント高い。
これまで中古マンションは新築に対する割安感から成約件数が伸びてきたが、足元では頭打ちになりつつある。今後、値下げの動きがさらに広がる可能性もありそうだ。