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 文部科学省の組織ぐるみの天下りあっせん問題を受けて、内閣人事局が全府省庁の実態を調べた結果を先週、公表した。

 現役職員が就職先を紹介するなど、再就職規制違反の疑いのある事例は12省庁で27件あった。情報提供などのOBの関与も複数、確認された。

 しかし、人事課や事務次官らがかかわった、文科省のような組織ぐるみのあっせんの疑いは確認できなかったという。

 まず納得できないのは、違反が疑われる事例の具体的な中身を明らかにしなかったことだ。少なくとも、省庁名や事例の概要を示さなければ、国民は天下りの実態を理解できない。

 さらに納得しがたいのは、報告書の核心部分である、組織的なあっせんが確認できないとした根拠の弱さだ。任意調査の限界とはいえ、説得力に欠ける。

 調査は1月から弁護士3人を含む約40人で行った。現行の天下り規制ルールが導入されて以降、昨年末までの8年間に再就職した6372人に調査票を送り、再就職の経緯を尋ねた。回収率は87%で、その中から問題事例を探し出した。

 各省庁の事務次官や人事担当者ら285人からの聞き取りもした。だが、規制違反を見聞きしたと答えた人はいなかった。

 当然だろう。自ら違反を申し出る人はなかなかいまい。

 だが本当に組織的な関与はなかったのか、疑問が残る。

 たとえば、税関と地方財務局の職員60人が15年7月1日に辞め、9月1日に40人が一斉に再就職したことが、先の国会で指摘された。似た動きは国土交通省や農林水産省でもあった。

 今回の調査で、なぜ再就職日が同じなのかを問われた省庁側の答えは「個別の事情はわからない」がほとんどだった。

 国会審議を避けるように、会期末のどたばたの中で発表したこととあわせ、この問題に本気で取り組む気があったのか、政府の姿勢に首をかしげざるをえない。

 かつては離職後2年間、密接な関係のあった企業への再就職を禁じる規定があった。第1次安倍政権が撤廃し、かわりに官民をつなぐ人材交流センターなどを設けたが、十分に機能していないのが実情だ。

 離職直後でも関係企業に再就職できたり、同一省庁の出身者が特定ポストに就き続けたり。現状のままでは、霞が関と企業や外郭団体との「持ちつ持たれつ」の関係はなくならない。

 癒着を断つせめてもの一歩として、「2年」規定の復活を検討すべきだ。

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