星空文庫
ヴァル 迷子のドラゴン Chapter 4-5
せっか 作
4
日曜日に地図を持って出かけた冒険はもちろん魔法の冒険だった。僕たちは緑の麦畑を海にみたてて、ドラゴンの親戚で雲を吐くという龍をさがしに遠い東の水の国をめざして海賊船でのりだした。はてしない旅で、途中でセイレーンの歌声にあって船がしずみそうになったり、渦の底からオバケダコが出てきて闘ったりした。何か月もかかってようやく目的地にたどりついたら、今度は背中のまがったあやしげなカエル男にだまされて、僕たちは命からがら逃げだして、やっとのことで海賊船に転がりこんだ。カエル男たちは塩水がヒフにしみて痛いので、海までは追ってこられなかった。
「危なかったな」
息を切らして、愉快そうにヴァルが言った。龍のところへ案内してくれるというのを、僕はあやしいから断ろうって言ったのに。ヴァルは罠にはまるのが好きだった。
「あいつは河童だ。水の妖怪ヴォドニークの親戚だ」
「龍には会えなかったね」
「まあ、いいさ」
ヴァルは甲板に寝そべって僕の地図を見ていた。それがこのあたりのじゃなくて本物の世界地図だったらよかったのかもしれない。ヴァルが遊びながら地図の見かたを勉強しているって、僕は気がつかなかった。
***
日曜日の冒険は、僕にとっても困りごとの引き金になった。礼拝に出ないでヴァルと遊んでいたという話が広まって、それが村の子たちと僕との間に橋を渡してしまった。海賊が船を襲うときに板を渡したりはしごをおろしたりするみたいに。
ある朝、学校に行ったら僕のつくえの上に大きなネズミの死骸が置いてあった。誰かがピューッと口笛をふいて、ざわざわしていた教室がしんとしずまりかえった。
「誰のしわざ?」
僕はみんなの顔を見渡した。みんな僕がどうするのか見ている。誰も手をあげない。
そこへ先生が入ってきて、僕のつくえを見てキャッと悲鳴をあげた。ついでに誰がやったのかきいて犯人をとっちめてくれればいいのに、先生は僕に「早くかたづけなさい」と命令しただけだった。僕は、ハンカチで触るのだって嫌だったけど、しかたがないからハンカチを出してかわいそうなそいつのしっぽをつまみ上げて、みんなのうめき声をあびながら窓のほうへ運び、外へ放り出した。うす汚いかたまりはガサッと音をたてて庭木の中へ消えた。席に戻ってみて、ネズミの下にしかれていたメッセージが目にとまった。つくえの上に白墨で、何人かの字で書かれていた。
「きみのペットへ」
「黒魔術のいけにえに」……
僕はぐっとこらえて椅子に座った。先生が話をはじめていたけれど、誰も聞いていなかった。僕がくやしがるのを見ておもしろがってる。泣くか怒りだすのを待っている。
ヴァルはペットじゃない。ペットじゃないし、あんなものは食べない。ヴァルは炎を食べるんだ。それに僕たちは黒魔術なんかしない。ヴァルは遊びでそういう言葉を口にすることはあっても、こわがりだから本当に残酷なことなんかできやしないんだ。
くやしくて、今すぐつくえをひっくり返して学校を飛びだしたかった。でも、それじゃ僕の負けになるから我慢した。誰の字か、つきとめてやる。でも、犯人をつきとめた後はどうする?
僕は前の学校でのことを思い出した。復讐してやりたいけど、うまい方法なんかないような気がして、ずっとムカムカしながら、その日の授業をやり過ごした。
ヴァルならきっと黙ってなくて何か思いつくだろうけど、大変なことになるような予感がした。だから僕はこの件をヴァルにも誰にも言わないでおくことにした。それで、元気のない顔をしていて気づかれでもしたら困るから、わざと元気な顔を作って、ただいま! っていきおいよくドアを開けたんだ。
でも、中にいたのはおばさん一人だった。
「ヴァルは?」
「今日はまだよ」
ぽかんとしていると、おばさんも針仕事の手を止めて、カウチのところからけげんそうな目をあげた。
「知らないの? このところ毎朝ひとりで出かけるのよ。あら嫌だ、何をしてるのかあなたは把握していると思ってたのに」
おばさんは舌打ちをして、窓の外を睨んだ。
「ろくでもないことでなけりゃいいけど」
春になってヴァルは急に大きくなりだした。犬のベルントと並んだのがほんの二週間前で、つい昨日、後ろ足で立ち上がったらもう僕を見下ろすんだと気づいたばかりだった。飛ぶのもどんどんうまくなって、ケガが治ってすぐの頃は飛べるといってもニワトリくらいだったのに、高いところをずいぶん長いこと飛べるようになってきている。
「いつから?」
「先週ぐらいからかしらね」
僕は、先週だったか少し前に、不思議に思ったことを思い出した。夜中に風を感じて目をさましたら、屋根裏の窓が開いていて、ヴァルがいなかったんだ。どうしたんだろうと思いながらうとうとしていたら、しばらくして帰ってきた。どこへ行ってたの、ときいても、なんだかよくわからないことを言って教えてくれなかった。
体も大きく強くなってきて、ヴァルがお昼から僕と遊ぶだけじゃ物足りなくなってきているのはわかる気がした。だけど内緒で何をしているのかなんて、僕たちにはまるで想像もつかなかった。僕がお昼を食べ終える頃になっても、戻ってこない。おばさんもピリピリしてきていた。それで、宿題もあったけど、ヴァルをさがしに外へ出た。それにはおばさんも反対しなかった。
ヴァルはすぐに見つかった。うちの家畜を囲ってあるところでおじさんと立ち話をしていた。そばにはベルントもいて、ヴァルはウシを蹴るまねをしてからかいながら、おじさんをためしているみたいだった。おじさんは柵の外にじっと立って、ヴァルの言うことすることに首を振っている。ヴァルはクマみたいにいかつくてあまりしゃべらないおじさんを前から気にしていた。こわいと思う気もちと、遊んでほしいって気もちがまぜこぜになっている感じ。自分が大きくなったから、「こわい」のほうがうすれてきたんだ。
「ヴァル」
僕が呼ぶと、ヴァルはこちらへ飛んできた。
「来いよ、ハンス」
「どこへ行ってたの? もう、僕、心配しちゃったよ」
僕は文句を言ったのに、ヴァルはなんだかニヤニヤして答えない。そのまま僕を連れてどこかへ出かけようとする。
「僕が帰ってきたときはまだおじさんと一緒じゃなかったよね」
「いいから俺に従え。墓場でガキどもが石合戦をしていた」
あれはおもしろそうだ、と思っているのが顔に出ていた。
僕は嫌な予感がした。
「僕は行かない」
ヴァルは止まって、僕を振り向いた。
「行かない? 俺様の命令に逆らうのか」
「だって、石合戦には魔法とかは出てこないよ。たのしくないよ、きっと」
「わかんねぇやつだな。だったら弾の当たらねぇとこに隠れて見てな」
僕はヴァルの気が変わるのを期待した。僕なしでも行くとは思えなかった。僕がここを動かないでいればそのうち諦めて戻ってくると思った。けれど、ヴァルはもう振り向きもしないでぐんぐん遠ざかっていく。僕はしかたなく後を追った。すぐにベルントが追いついてきた。子どもたちがヴァルを見てぎょっとした顔でもしたら、なんとかして連れて帰るつもりだった。
***
僕とベルントが追いついたとき、子どもたちはヴァルのおしゃべりにきょとんとしていた。あちゃー。きっとみんながやってるところへいきなり割って入って、いつもの調子で魔法の戦闘ごっこの話をはじめちゃったんだ。僕はやぶのかげで赤くなりながら、集まっている子たちの中に今朝の犯人が混ざってそうでないか観察した。正直言って、犯人の見当がついているわけではなかった。そのうちに、一番体格のいいやつが手をあげて前に出た。カールという、成績もよくて目立つやつだ。
「わかった。いいぜ、ヴァルドーも入れてやってみよう。おまえら三人、そっちの傭兵になってやれよ。こっちは五人だ。俺たちはこの線からこっちを陣営にする」
カールに指示された三人がのろのろとヴァルのほうへ動く間、ヴァルは何か勝手なことを言っていた。おしゃべりが終わらないうちにカールの号令で闘いの火ぶたが切って落とされた。両陣営は墓碑のかげに隠れて隙をみては敵に石を投げつける。
僕はハラハラして見ていた。ベルントに誰かおとなを呼んできてもらおうか考えた。でも、そもそもお墓で遊んじゃいけないんだから、みんなが叱られることになっちゃう。
ヴァルはどうしているかといえば、思った通り、自分では石を投げないんだ。ヴァルドーは無敵軍団の総司令官で、嬉々として空中から陣頭指揮をとっている。
案外うまくいくんじゃないか、と思った。
けどそれもつかのま、誰かが投げた小石がヴァルの鼻づらを打った。
「あっ」
僕が息をのんだときには、ベルントが飛びだしていた。ヴァルは一声、「ウワーッ!」って叫ぶと一人の子に襲いかかっていった。驚いたその子は後ろにバランスをくずす。割りこんだベルントがヴァルの首筋に飛びかかる。すべてが止まっているみたいに見えた。ヴァルはベルントを振り落とすと、真っ赤な口をカッと開いた。
次の瞬間、ヴァルの口からすさまじい炎の渦が吹き出した。
あんぐりと口を開けた子たちの前で、転んだ子の前髪に赤い火の粉がふりかかった。
「う、うわーっ!」
どの子もてんでに叫んで、ばらばらに逃げていった。転んだ子だけが腰が抜けて動けない。ヴァルがもう一度襲いかかろうとしたところで、僕はいましめが解けたみたいに体が動いて飛びだしていった。
「邪魔だ。どけ」
両手を広げて立ちふさがる僕に、ヴァルはこわい目をして言った。
僕は必死に首を振った。首を振るだけで精一杯だった。
「た、たすけて」
僕の後ろで蚊の鳴くような声がした。
「ひ、ひ、人殺し」
「殺してやる!」
怒りの声に、「やめてよ」という僕の声も思わずかすれた。
ヴァルが火を吐くなんて知らなかった。いつから? これも大きくなったから?
頭の中がくらくらした。
そのうちにカールともう一人大きいのがこそこそ戻ってきて、いつまでも立てない仲間を抱えて逃げていった。「おぼえとけよ」っていうやつらの声が聞こえた気がした。
最悪。おまけにヴァルがとどめを刺すみたいに、
「おまえら次はないからおぼえとけよ。今度俺様を怒らせたら、ぶっ殺す!」
って、やつらに向かって吐きすてた。
「ヴァル!」
ヴァルは怒ったように僕を見た。悪いとは少しも思ってないみたいだった。
「なんで邪魔した? あいつが俺を打ったんだ。目にもの見せてやるのが当然だろ」
「だって、そういう遊びだよ。ヴァルがやるって言ったのに」
「遊びじゃねぇ。俺はあいつの目を見たんだ。あいつは俺をねらった。俺を侮辱するつもりでやったんだ」
「だからってこんなの、めちゃくちゃだよ。みんな遊んでくれなくなるよ」
「なんでだよー!」
ヴァルは引き裂かれたように叫んで地面にひっくり返った。
「俺を怒らせるやつが悪いんだよーッ!」
昨日よりも大きな体でひっくり返って、後ろ足で地団駄をふむ。
めちゃくちゃだ。
僕は目の前が暗くなった。なぜだかネズミの犯人はあの三人だろうなって気がした。
最悪だ。こっちではおとなしくしてようと思ってたのに。
5
「きみが今度町から来た子か?」
こっちに来てはじめて学校に行った朝、話しかけてきた大きな子がいた。うなずくと、あごに手をやりながら、ふうん、とうなって言った。
「意外だな。きみみたいなおチビが何をやったら学校をクビになるんだ?」
思わず顔を見た。ニタニタ笑って僕を見下ろす目がつめたかった。それがカールだったような気がする。
***
だからつけいられるようなことをしたくなかった。
あのテオというヴァルをからかおうとしてひどい目にあった子は、次の日から三日間も連続で学校を休んだ。たぶん、カールがそうするように指示したんだ。カールのやつは頭がよくって敵に回すには最悪だった。味方につけたいとも思わないけど。おかげでみんなの間じゃ、僕はネズミの件のしかえしにドラゴンをさしむけた卑怯者ってことになった。テオはみんなの同情を買って、ようやく学校に出てきたときには死の淵から戻りでもしたかのように大げさに歓迎された。それを見たら僕も、尻もちついて前髪がちょっとこげただけのくせに、と思った。
それもあの事件だけがもとならやり過ごすことだってできたんだけど、もっと悪いことには、ヴァルがあのことを根にもって、村の子たちを目の敵にして、騒動をおこしまくった。はじめはテオだけを憎んで、テオを倒すって言い続けるのをなだめるだけの苦労だったのに、次の日にはあの助けに来たやつら、って言いだして、そのうちあのときいた八人みんながバカにしたっていうふうに飛び火して、しまいには僕をのぞく子ども全員にまで広がって手に負えなくなってきた。バカにする、のけ者にするって、ヴァルは言い張る。でもすることは本当にひどくて、何度言っても火を吐くのをやめないし、一度なんか目が合っただけの子をツメのするどい足でけろうとして、あやうく大けがさせるとこだった。ただふざけている子たちを見かけただけで自分には全然関係なくても、ヴァルはわざわざ行ってそういうことをした。
「ねえ、ヴァル」
ある日、ヴァルはついによその犬をかんだ。それもカールの犬。僕はさすがに学校がしんどくなっていて、ウシみたいに大きくなったヴァルを途方にくれて見つめた。ヴァルはうんざりしたようにそっぽを向いて、ほおづえなんかついて地面に寝そべっている。
「血が出てぐったりしていたよ。死んじゃうかもしれない」
「死ねばいいさ。俺に吠えついたんだ」
声がかん高いままなのが不思議なくらい、ヴァルは大きくなった。泣きたいのに、涙が出ない。ヴァルに見せてやりたいのに。
「もしそんなことになったら、ここにいられなくなるかもしれないよ」
オレンジの夕日が目を焼く。いろづきはじめた麦の穂がきたなく見えた。
「このままじゃ僕たち、一緒にいられなくなるよ」
そんなこと言っていいのか、という声が僕の中に響いた。僕は体中が痛かった。学校でこの頃すもうがはやりだして、といってもやらせるのはカールなんだけど、体の一番小さい僕がみんなの挑戦を受けた。それで、一番弱いからきたえてやるとかでみんなの荷物をもたされて歩いてたら、ヴァルが助けてくれたんだ。どこからともなく飛んできて、ここで会ったが百年目、なんていばりくさって口上をはじめた。ほとんどの子たちはヴァルを見ただけで逃げてったけど、カールはよゆうの顔をしていた。途中で合流して主人の横にぴったりくっついていた猟犬が勇ましく吠えた。
ヴァルがぎらりと目を光らせたとき、やれって、僕は思った。
僕が思ったんだ。
でも。
「いい子にしてよ」
「うるせぇなぁ」
ヴァルは沈んでいく太陽のほうを向いたまま言った。
「俺は腹の中に火の玉を飼ってるんだ。あんな屈辱を受けても怒りもしねぇ、くぐつのピエロみたいなおまえとは違うんだよ」
ズキッときて僕は奥歯をかんだ。だって、ここもだめってことになったら、僕にはもう行くところがない。ヴァルはゆっくりと体を起こして大きくツバサを広げた。
その背中を見てふと、僕はヴァルの体格がすっかり変わったことに気づいた。大きくなっただけじゃなくて、たくましくなった。いつのまにかツバサの腕はがっしりと太く、長くのびた頑丈そうな指の間の飛膜もゾウの耳みたいにぶあつい。
僕は兄さんのイマヌエルが急におとなに変わっていった夏のことを思い出した。
ヴァルはおとなになる。
ヴァルの中で、おとなのドラゴンが目をさます。
もしかしたら言葉では通じ合えない、残忍で凶暴な、本物のドラゴンが。
そんな思いが胸をよぎった。
***
学校へ行かなきゃ。
とにかく行くんだと思って、歩いていた。一日でも休んだら、二度と行けない。休んだら負けだ。負けたくない。
「うぇっ」
いきなりよろめいて、道ばたに吐いた。黒くてぬるぬるしたものを吐いた。吐いたものを見てギョッとした。
オタマジャクシだった。
オタマジャクシが百匹くらい。しかも生きていた。動いていた。
うわあぁぁ、と声がもれた。
汗をびっしょりかいて、目がさめた。
「行くの、そんな青い顔して?」
当然休むと思っていたみたいに、おばさんが言った。
「ベルントに護衛してもらう?」
「ヴァルがカールの犬を殺しちゃったかもしれないのに?」
ききかえすと、おばさんは口のはしをちょっともち上げて、それから僕の頭に手をのばして抱きよせてくれた。黒っぽい服は台所と同じスパイスと煙のにおいがした。
「まずくなったら帰っておいで。ヴァルが十倍にして返すようなことをされる前に」
見上げると、おばさんはささやくように続けて言った。
「それか自分でやり返してごらん。私だったら、付けあがらせていないで一泡吹かせる作戦を立てるわね。力ではかなわない相手でも」
きつい眉の下で緑の目がしずかに輝いていた。やさしい声だった。
雲が低くて雨になりそうな日だった。学校へ行くまでには林をぬけて丘をこえて、小川をわたる。道が他の子の通学路と合流する手前まで来たところで、僕は足がすくんで動けなくなった。でも後ろを向いて、来た道を戻るのだって勇気がいる。
前に進もうとした。三歩もふみださないうちに、げぇってなった。
ひざをついて、手をついて、道ばたの草の上に吐いた。朝も昨日もほとんど食べなかったから中身のない苦い汁ばかり出てきた。つめたい涙がぽたぽたこぼれて、舌の根、頭の後ろ、てのひらがビリビリしびれて、目の前がチカチカちらついて見える。
そのとき、ピョォーッと汽笛を鳴らして汽車が通りかかった。そこはちょうど通学路で一番線路に近づくところで、シャカシャカ車輪のたてる音が聞こえる距離だった。
ここを出て、僕の町へ行く汽車だ。
ぼんやりとそんなことを思ったとき、大きな黒い影がスーッと空をすべってきた。
ヴァルだった。僕がいることには気づかずに、トンネルに向かう汽車へ近づいてゆく。機関士が気づいて、ピッピーッと警笛を鳴らしながら怒ったようにこぶしを振り回した。ヴァルはお構いなしにタンク機関車の背中に取りついて、
「食べるの……?」
僕は信じられなくって目をこらした。確かに積んである石炭に首を突っ込んで、むしゃむしゃやっているように、見えた。
数秒の間の出来事だった。ヴァルはトンネルに入っていく汽車から離れて、そのまま飛び去った。村の機関庫を目指しているみたいだった。
僕はふらふらと立ち上がった。足は自然とヴァルを追った。
つづく
『ヴァル 迷子のドラゴン Chapter 4-5』 せっか 作
弱みを見せたら負けの殺伐とした子ども時代、おとなしくなることでしか自分の場所を守れなかった。全年齢対象の児童文学。
更新日 | |
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登録日 | 2017-06-22 |
Copyrighted
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《これまでのあらすじ》
迷子のヴァルと、家族と離れて暮らす僕。村の人たちはドラゴンを歓迎しなかったけれど、僕たちはそんなことお構いなしに、冬の間、毎日ふたりきりで遊んだ。ひとりぼっちのよそ者同士、僕たちはすごく気が合ったんだ。ヴァルが作る冒険のおはなしは魔法とインチキだらけでめちゃくちゃだけど、おもしろかった。麦がのびて春になってきた頃、ヴァルは僕の地図に目を付けて、新しい遊びを考えついたんだけど……。
*Chapter 1-3はこちら http://slib.net/73443