N-MOSFETドライブ回路

このページはMOSFETのスイッチング動作の続きです。「MOSFETのスイッチング動作」ではゲート電圧、ゲート抵抗の決め方について解説 しましたが、ここでは実際の回路を幾つかとりあげ、設計時の要点についてついて解説します。
ここで取り上げる例はすべてNチャンネルMOSFETです。もちろんここで取り上げる例以外にもPチャンネルで構成する回路やPチャンネル、Nチャンネルの両方で構成する回路もあります。

バイポーラトランジスタの代替えとして使う

N-MOSFETドライブ回路
図1

図1はロジックICでN-MOSFETをドライブする例です。
ロジックICでN-MOSFETをドライブする場合は、ロジックICの出力電流とドライブするN-MOSFETの ゲート入力容量 Qg に着目します。

MOSFETの選択

ロジック回路からMOSFETをドライブする場合はVGS(th)が出来るだけ低く、ロジック回路の出力電圧で希望する電流 を充分流せるMOSFETを選択する必要があります。図1では2SK2232を選択しています。このMOSFETはVGS(th)が0.8V~2Vですから ロジックICで充分にONさせることが出来ます。

ゲート抵抗RGの計算

ゲート抵抗RGはMOSFETのON、OFFの立上り、立下りの速さを決めます。このMOSFETの入力容量 Qg は比較的低くロジックIC でドライブしても高速動作が得られます。図1で使われているロジックIC、74VHC04はゲートが6ヶ入っているICです。図1では3ヶ並列にして使っていますが これは出力電流を稼ぐためです。このような使い方はメーカーでは保証しているわけではありませんがトーテンポール出力のCMOSICは並列接続しても問題はありません。

図1では6ヶのゲートのうち3ヶは他の回路で使用し、残りの3ヶをMOSFETのドライブ用に使うという想定で設計しています。この状態では24mAで ゲート入力容量 Qg を充電することが出来ます。このときの立上り、立下りの速度は凡そ1.6μSになります

ゲートドライブICを使う

ブートストラップ回路
図2

図1において、ソース側に負荷をおいた場合、 VGS を確保できずN-MOSFETを継続的にON状態に出来ません。ブートストラップ 回路はこの問題を解決する方法です。

図2はゲートドライブICとブートストラップ回路を組み合わせたN-MOSFETのドライブ回路です。

MOSFETが開発された当初は ゲートドライブ回路もディスクリートで組んだものですが現在はゲートドライブ用の専用ICが各社から多数販売されています。これらのICを利用したほうが設計時間の短縮、 コストダウンにもなります。

ブートストラップ回路の動作

IR2302の出力は入力信号がLoのときLO(ピン5)がHiになります。HiのときはLOがLo、HO(ピン7)がHiになります。つまり入力パルスがLoのときは Q2がONし、パルスがHiのときはQ1がONします。Q2がONするとD1を径由し、Cbsが充電されます。この充電された電圧がQ1のVGSになります。

この状態でパルスがHiになるとQ2はOFFし、Q1がONし、Q1のソースに接続されているCbsの0V側を持ち上げるように動作します。この結果Q1 のゲート電圧VGSはソース電圧よりコンデンサの電圧分高くなりON状態を保持できます。ただしQ1のVGSはコンデンサ Cbsですから漏れ電流などで放電し、電圧が下がると入力信号がHiであってもVGSが不足し、Q1はOffします。図2では パルス入力ですので、Q2がONする毎にCbsは充電され、継続してパルスを出力できます。

コンデンサを電源に使うブートストラップはパルス信号でMOSFETをドライブする場合は安価で有効な手段です。

コンデンサCbsの選択

通常Cbsの電荷容量はQ1のゲート入力容量Qgの10倍以上が選ばれます。

例えば図2の場合は2SK2232のQgは38nCであるから380nC以上あればよいことになる。静電容量に変換するには Q=C・Vの公式から算出することができます。Vはコンデンサに印加される電圧であるから大まかにVCC - D1のVF=10-0.6=9.4Vとなります。 まとめると

ブートストラップコンデンサの計算式

ゆえに図2のCbsは0.04μF以上のコンデンサでよいことになる。
コンデンサの種類はセラミックコンデンサが望ましい。

ダイオードD1の選択

ダイオードD1にはQ1がONする度にVDDに等しい電圧が逆電圧として印加されるので、スパイクノイズなどを考慮してVDDの2倍以上の耐圧を持つ ファーストリカバリングダイオード(FRD)が望ましい。実際にダイオードに印加される逆電圧は VDD - VCC となります。

フローティング電源を使う

N-MOSFETフローティング電源
図3

図3はブートストラップの替わりに絶縁型DC/DCコンバータをグローティング電源として応用した例です。フローティング電源を使うと 直流からパルスまでダイナミックなドライブが出来ます。図2のQ2はL負荷の場合の逆起電圧を速やかに回生させ立下り特性を改善させます。

DC/DCコンバータの絶縁耐圧はVDDの電圧に充分耐えうる耐圧でなければなりません。

MOSFETゲートドライブICに関して

ここで取り上げたゲートドライバICはInternational Rectifier社(IR)のICです。IR社にはこの他に数多くのゲートドライブICがあります。なかには 発信機を内臓したものもあります。

IR社のサイトはこちら→International Recifier

ブートストラップ部品の選択の詳細を知りたい方はこちら→ コントロールIC用ブートストラップ回路部品の選定

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