死の熱波、2100年には人類の4分の3が脅威に直面

温室効果ガスを削減せずに放置した場合の最悪のシナリオ

2017.06.22
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ラマダンの8日目を迎えた2017年6月4日、猛暑を避けようと運河で水浴びをするパキスタンの人々。ラホールでは、最高気温47℃を記録した。(PHOTOGRAPH BY RANA SAJID HUSSAIN, PACIFIC PRESS, LIGHTROCKET, GETTY IMAGES)
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 現在、世界の30%の人々が、死に至る恐れのある暑さに年間20日以上襲われていることが、新たな研究によってわかった。こういった熱波は気候変動によって大きく広がっている。それはまるで山火事が広がるかのようだ。(参考記事:「熱波の原因は“人為的な気候変動”か」

 6月19日に気候変動に関する専門誌「Nature Climate Change」に掲載された分析によると、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出を大幅に削減しない限り、2100年には最大で世界の4分の3の人々が熱波による死の脅威に直面することになる。温室効果ガスの削減に成功したとしても、2人に1人はその熱波の中で少なくとも20日を過ごさなければならない。

 論文の筆頭著者である米ハワイ大学マノア校のカミロ・モラ氏は、「死者の出る熱波はありふれたものになっている。なぜ社会としてこの危機に関心を向けることがないのか、理解できない」と記す。「2003年に発生したヨーロッパの熱波では、約7万人が死亡した。これは、9・11の死者数の20倍以上にあたる」

 危険な熱波は人々が意識している以上に頻繁に発生している。その数は、死者を伴うものだけでも毎年世界中で60件以上だ。たとえば、2010年のモスクワでは少なくとも1万人が死亡しており、1995年のシカゴでは熱波の影響で700人が死亡している。(参考記事:「温暖化で平均気温8℃上昇の予測、北極が熱帯に」

 2017年もすでに熱波による犠牲者が出始めている。53.5℃という記録的な暑さに襲われたインドやパキスタンでは、2週間で20人を超える人が死亡した。米国でも、すでに暑さによる死者が複数名出ている。(参考記事:「気候変動、最新報告書が明かす5つの重大事実」

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