ネコは自ら家畜化した、遺伝子ほぼ不変、最新研究

「ネコはありのままで完璧だった」と研究者、ぶち柄の出現は中世

2017.06.21
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ぶち柄の登場は中世、品種改良は19世紀から

 古代から現代までのさまざまなネコのDNAを比較することにより、彼らがどのような変化を遂げてきたのかが少しずつ見えてくるとオットーニ氏は言う。人間がネコを世界各地に連れ回すようになる以前の変化も推測できるそうだ。

 驚くべきことに、野生のネコとイエネコの遺伝的な構成に大きな違いは見られない。両者を区別する数少ない違いのひとつは、ぶち柄の毛皮であるという。

「パンサー・キャット」を抱える女性を描いたイタリアのルネサンス絵画。(ILLUSTRATION BY FRANCESCO D'UBERTINO VERDI; PHOTOGRAPH BY PETER HORREE, ALAMY)
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 英語で「タビーキャット(tabby cat、縞模様や、縞が途切れたぶち柄の毛皮を持つネコの総称)」と呼ばれるネコのうち、ぶち柄が登場したのはごく最近だった。その遺伝子の起源はオスマン帝国時代初期の14世紀に遡り、のちにヨーロッパやアフリカで広まっていった。

 とはいえ、こうした模様がイエネコで一般的になったのは18世紀になってからのこと。ネコの愛好家たちが愛玩用の品種を作るためにあえて特定の性質を持つネコを選ぶようになったのは19世紀になってからだった。

米国では7400万匹が飼われている

 つまりネコは大きな変化を経ないまま、人間と一緒に暮らす仲間になったのだと、論文の共著者で進化遺伝学者のイヴァ=マリア・ガイグル氏は言う。イエネコはヤマネコとよく似ているものの、単独行動を好まず、人間や他のネコがいる環境を受け入れている。(参考記事:「ナショジオだから撮れた!ビッグキャットたち」

 こうした成り行きは、家畜化された最初の動物であるイヌとは対照的だとガイグル氏は言う。イヌは何らかの仕事をさせるために選択され――そうした動機はネコの場合には存在しなかった――、特定の習性を持つものが選ばれていった結果、現在のように多様な種に分かれることになった。(参考記事:「イヌ家畜化の起源は中国、初の全ゲノム比較より」

「ネコがそうしたふるいにかけられることはありませんでした。なぜならネコに関しては、変える必要がなかったからです」とガイグル氏は言う。「ネコはありのままで完璧だったのです」

 ネコが完璧かどうかについては異論を持つ人もいるだろうが、彼らは現在、世界でもっとも人気のあるペットであり、米国の家庭では7400万匹ものネコが飼われている。

「我々の研究によって、ネコがどこからやってきたのか、どれほど遠くまで到達したのか、人間にどのような影響を与えてきたのかについて、驚くような事実がわかってきています」とオットーニ氏は言う。(参考記事:「音声学者がネコ語の研究を本格始動」

「ネコについての研究を進めれば、家畜化のプロセスがさらに詳細に判明することでしょう」

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