特集
2017年6月22日
去年に引き続いて、またヘボコンをまたアメリカで開催することになった。
初イベントどころか初渡米だった去年の衝撃から、はや1年。2度目ともなると「いいイベントにしなきゃ」というプレッシャーもある。果たしてどうだったのか、レポートしていきたいと思います。 前の記事:「アメリカに行く前に覚えておくべき知識集・答え合わせ」 人気記事:「チーズ across ハンバーグ」 > 個人サイト nomoonwalk ヘボコンとは、そして忘れられない初渡米ヘボコンというのは僕が2014年に始めたイベントで、正式名称は「技術力の低い人 限定ロボコン」。ロボットを作る技術のない人が無理やり作った「自称・ロボット」を、戦わせて遊ぶイベントだ。今では25カ国で130以上の大会が開催されている。詳しくはこの動画を見てほしい。
去年開催した世界大会の様子
世界中で開催されているといっても、ふだんは各地の主催者が自由にやっている。僕はあとで写真を見せてもらって、いいねボタンを押したり、このロボ最高!とかってコメントしたりする程度。でも今までに一度だけ、海外に自分で行って大会を主催したことがある。それが、昨年の5月、アメリカでのイベントだ。
昨年の様子
これがもう、僕にとってはたいそう感動的なできごとだった。自分が始めたイベントが言葉の壁を越えて、海外の人たちが盛り上がっているのを目の当たりにしたのだ。
一生に一度の、忘れられない体験。だった。 実は2回目があったで、その一年後。あの「一生に一度の忘れられない体験」は、実は一生に一度じゃないことがわかったのだ。つまり、今年もまたアメリカに行かせてもらえることになった!(ここで謝辞:お誘いいただいたMaker Faire Tokyoの皆さん、本当にありがとうございます。みんな、8月にMaker Faire Tokyoあるよ!)
で、またここに来ちゃった
会場は去年と同じ、Maker Faire Bay AreaというDIYフェスティバルの中。ちょっとだけどんなイベントか紹介しよう。アメリカのDIYはちょっとスケールが違う。
今年は巨大ロボもいた
火を噴く巨大なモニュメントあり
子供が自転車をこいで発電した電気で大人がライブをやっている
謎のごっついロボットとカジュアルに触れ合う子供
そんな会場内に、ひときわゴチャゴチャしたブースが…
片付けのできない人たちが集まる一角
ガラクタ…いやロボットが並ぶ
これこそ、我らがヘボコンである。
ブース内には資材置き場と作業スペース、そして土俵がある。出場者はこの中で自分のロボットを作り、2日間で6回あるトーナメントの中で戦わせるのだ。 進化する材料ロボットを作るといっても、技術力の低い人のためのイベントである。ちゃんとしたロボット用の部品を使うのではなくて、われわれが用意したのは、中国製の動くおもちゃたちだ。
例えば箱いっぱいのアヒル
こういったおもちゃを改造してロボットと言い張るのがヘボコンの趣旨。これらは事前にネットで注文して、アメリカに直で届けてもらった。アリババで「electric toy」で検索したものを安い順にソートして、頭から順にカートに入れていく作業。1個3ドルほどである。
これは去年のイベントでロボットの見本として作った通称「犬」。本体である犬のおもちゃ、当時これは茶色やピンク等の単色しかなかったのだけど…
今年はシマシマやスカート&サングラスがついたものなど、一気に種類が増えていた
これらのおもちゃは不必要に派手で、そして不必要に光る。そのうえ年々を輪をかけて派手になっているようなのだ。ちょっとでもおもちゃを目立たせ、たくさん売りたいという中国メーカーの商魂であろう。
光りながら左右に揺れて踊る!
商魂 vs 創作意欲ただ忘れてはいけないのは、これだけ主張が強いものでも、我々にとっての役割は材料だということだ。
おもちゃ単体でおなか一杯なのに、そこにアメリカ人の全力のDIY精神がぶつかるのである。 口から炎でなくメルヘンを吐いている
「箱に詰める」という武装のありかた
縦に積む。
出場者には年齢制限を設けていないが、なにぶんMaker Faire自体が子供の多いイベント。今回のヘボコン出場者も7割以上は子供だった。
子供は「ほどほど」を知らず、もともと派手なおもちゃも力の限りデコる。足す。積み上げる。これは日本もアメリカも変わらない。 時にそれはもう神々しさを帯びる(そして尻尾に札)
もう建て増しすぎて元がなんだか分からなくなっている
犬が、板になった!
前提としてヘボコンはロボットとロボットの戦いの場である。しかし今回は、その影にもうひとつの戦いがあった。少しでもおもちゃを目立たせ売りさばきたい中国人の商魂と、アメリカの子供たちのむき出しの創作意欲。それらが力と力でぶつかり合う。ここは二重の意味で、戦場だったのである。
強力な助っ人さて、そんな混沌とした場を運営するにあたり、一つ大きな問題がある。僕は英語ができないのだ。ヘボコンを初めて3年間、チャットやメールでいろいろ海外とやり取りしてきてそれなりに読み書きはできるようになった。でも会話となると話は別だ。
しかしこの3年間のうちに、僕は英語力以外にものすごく強力な味方を手に入れた。 この男だ
彼はエイドリアンといって、シカゴでヘボコンにインスパイアされたイベント「Robot Riot」を主催している。初めて話したのは去年の秋。彼が東京に来た時に会って、「いつか一緒にイベントをやろう」と約束した。その「いつか」が半年もたたずにやってきたのだ。彼は今回のヘボコンで、全トーナメントの司会を務めてくれた。
エイドリアンが見本用に作ってくれたロボット。海賊顔にぐるぐるパンチが最高。ダンボールのストッパーをはずすと走る
エイドリアンが友人に託されたというロボット。友人は動物園勤務で、骨はすべて本物!
彼の司会ぶりは本当に素晴らしかった。気分を盛り上げる煽り、機転の利いたコメント、出場者への気遣い!手伝ってくれた人や遊びにきた知人のだれもが「彼はプロなの?」と聞いてきた。僕は彼のキャリア(科学館のエンジニア)を知っていたけど、それでも「昔なんかやってたの?」と聞き直してしまったほどである。
マイクを握るエイドリアンの雄姿
雰囲気だけでも動画でどうぞ
彼の司会ぶりは今回のヘボコンのイベントとしてのクオリティを5段階くらい持ち上げてくれたと思う。しかし、そこには別の問題もあった。そのトークが流暢すぎて、リスニングの苦手な僕は全然ついていけなかったのである…!
あちらを立てればこちらがたたず。…と仕方がないことのように言ってみたものの、突き詰めれば単に僕の能力不足である。がんばろう、俺。 そういうわけで、試合の様子は帰国後に映像を一生懸命見返しながら、理解度2割のリスニングでなんとかぼんやり把握した次第である。次ページからはそんな若干頼りないレポーターによる、全6試合の結果レポートだ。
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