まいど憶良(おくら)です。
心斎橋からも本町からも徒歩分の所にパクチーへの愛が半端ないパクチー専門店があると聞いて来たのですが・・・。
ああ、ここだ、ここだ。
その名もGoGoパクチー。
お店は地下にあります。
ここを降りると入り口は一つ。
あれ?選挙事務所?
おそるおそる扉を開けると、いくつかの突っ込みどころが見えます。
謎の肖像画、謎の格言?
謎の鍋掴み?
「いらっしゃいませ」
うあぁっ!
へ・・・変態?!
パクチーを愛するあまり、パクチーマンになってしまった男
パクチーマン : 当店ではパクチーの専門店として、パクチーの良さを実感して頂ける料理を提供させていただいています。
憶良 : は、はぁ。
パクチーマン : パクチーチャーハン、油淋鶏(ユーリンチー)にパクチーを効かせたパクリンチー、パクチー麻婆豆腐など、どれも食べて頂きたい自慢の料理です。
憶良 : えっと、色々食べるのは大好きなんですが、実は私、小食でして・・・。
パクチーマン : でしたら、色んな料理を楽しめるコースもありますよ。
こちらは2名様よりのご注文となっていますが、この店のコンセプトともなっています様々なパクチーの楽しみ方を感じて頂けるコースとなっております。
憶良 : あ、えっと、はい、ではコースをお願いします。
パクチージャンキーコース、
そしてオマールエビも食べられるパクマールコースと人気の3コースの中から、
パクチー入門編としても最適な
こちらのパクチーライトコースを注文しました。
料理が出来上るまで、パクチーマンさんにインタビューをさせて頂きました。
そもそも、パクチーマンって、何者?
憶良 : そもそもなんですが、パクチーマンって、一体何なんでしょう。
パクチーマンは、誰と…いや、何と戦う人なんですか。
パクチーマン : ・・・。
パクチーマン : パクチーマン。それは、愛の伝道師。
憶良 : えっ?
パクチーマン : パクチー、それは愛の象徴。
憶良 : なっ、なに?
パクチーを通じて、私は愛を問いたいのです。
憶良 : ええっと、おっしゃっている意味がよくわかりません。
パクチーマン : パクチーマンは、誰とも、いや、何とも戦いません。
むしろ戦わないことと戦っていると言っても過言ではありません。
憶良 : (ううっ、なんだか難しい話のようだ)つまり、かみ砕いて言うと?
パクチーマン : あ、じゃあ、もう普通に話していいですか。
憶良 : ええ。お願いします。
パクチーマン : 私の願いは、どんな形でもいい。パクチーの魅力をこの日本で伝えたい、その一点なんです。
パクチーがこの日本に来て、諸説がありますがざっと800から1000年。
水菜や三つ葉の陰に隠れて日本の食卓に定着しきれなかったパクチーを、この日本の常備菜にしたいという思いでパクチー専門店を作り、パクチーの良さを伝えるために日々様々な料理を作っているのです。
素材の味を引き出すパクチーの魔力
と言っている間に一品目が出来たようです。
パクチーマン : 一品目はよだれ鶏、カルパッチョ、生春巻きの3種盛りです。
よだれ鶏は特製よだれソースを付けてお召し上がりください。
よだれソースは豆鼓醤、ナッツ、粉山椒、オリゴ糖、ラー油、そして直前に擦った、香りの立った擦りゴマで作っています。
よだれソースだけでも美味しいのですが、パクチーを乗せて一緒に食べると、
より一層美味しいんです。
何このパクチー、旨っ!!
これは今まで食べたことのないパクチーです。
生春巻きにはパクチーソース。
このパクチーソースがこれまた、やたらと美味しい。
生春巻きにたっぷりつけて食べてももちろん美味しいんですが、パクチーソースをパクチーにつけて食べても、でら旨い。
パクチーのイメージとして一般的に定着している、苦い、臭いという感じは全くありません。
なんじゃ、こりゃ。
カルパッチョはその日によってネタが変わります。
この日はマハタ。
ハタは高級魚のイメージがあり、その代表としてはクエが有名ですが、このマハタも美味しい魚です。
パクチーマン : その日に仕入れられる、いわゆる「イイ物」を使います。今日はマハタのいいのがあったので。
憶良 : こういう繊細な甘みがある白身魚にパクチーを合わせてしまうと、パクチーの強烈な個性が表に出過ぎるんでは、と思って食べたんですが、邪魔しないどころか・・・。
パクチーマン : でしょう? パクチーは決して自己主張が強いだけの野菜ではないんです。
意外と思われる方も多いようですが、素材のいいところを引き出してくれる存在なんです。
憶良 : 話だけで聞くと、本当にィ?となりそうですが、今まさにその現象が口の中で起こっているところですので納得です。
ユーリンチーではなく「パクリンチー」
なるほど、私にもパクチーの魅力がわかってきました。
次はどんな一面を見せてくれるんでしょう。
油淋鶏(ユーリンチー)は、言わずと知れた鶏肉のから揚げに刻んだ長ネギを載せて、甘い酢醤油のタレをかけた中国料理。
それに対してパクリンチーはゴーゴーパクチーのオリジナル料理。
ネギの代わりにパクチーを使い、衣にもパクチーをふんだんに入れています。
もう既にパクチーを乗せるのが当たり前になってしまっています。
この甘酸っぱいユーリンソースとパクチーがまた合うんです。
普通よりちょっと甘めで、ちょっと酢が柔らかなソースにパクチーが加わる事で味がキュッと締まる。
と同時に、次の一口の甘さが際立って、その後爽やかな苦みで口の中がサッパリとしてしまうものだから、箸に加速がついてしまうんです。
アミシートは魚のすり身を揚げたもの。
ポリポリっと楽しい食感で美味しいです。
いいパクチーには、甘味がある!麻婆の深みが増す「パクチー麻婆」
パクチーペーストがたっぷりと入った、ゴーゴーパクチーの人気メニューです。
花椒油(かしょうあぶら)、豆鼓醤(とうちじゃん)、花椒粉(かしょうこ)、ラー油、肉味噌、醤油と、刺激たっぷりの麻婆。
豆腐は凝固剤としてすまし粉を使った嵯峨豆腐。
しっかりとした豆腐です。
水溶き片栗粉を投入してさらにあおります。
単体ではかなり辛め。
パクチーと一緒に食べると、辛さは少し抑えられて、味に深みが増します。
パクチーの量は少しでもいいのですが、
座ると出てくるパクチー食べ放題のグラスから、「追いパクチー」をして
どうせならたっぷりとパクチーの魅力に浸りたい物です。
どんどん乗せて、思う存分。
色んなものにパクチーを乗せて食べて、色んな味の物とパクチーが合う事がわかりました。
それどころかパクチーソースをつけて、ユーリンソースをつけて、パクチーだけをパクパクと食べても美味しいことがわかりました。
では、何もつけずにパクチーだけを食べ続けたら?
・・・? あれ?
憶良 : 甘味、清涼感、苦み、噛んでいるうちに味が変化していくのがよくわかります。
パクチーマン : そうなんです。
良い土壌で、丁寧に育てられたパクチーは、甘味があるんです。
憶良 : 確かに。これは初体験です。
最後の一品はパクチーまみれのパクチーチャーハン
パクチーライトコースも、最後の一品になりました。
パクチーチャーハンも大人気メニューです。
ここまでは至って普通のチャーハン。
そこにたっぷりとパクチーソースを投入。
あおっていくうちに、緑が全体に広がります。
鍋肌に少量の醤油を回しかけて、香ばしさもプラス。
円運動と上下運動で踊ったコメが、パラパラに仕上げられます。
そして、パクチーの香りがメチャクチャ美味しそう!
緑のチャーハンです。
旨いっ。こら旨いっ。
完食です。
意外と知られていないパクチーのあれこれ
憶良 : 今回初めて知ったのが、パクチーに甘みがある事でした。
パクチーマン : 旨味もあるんですよ。
パクチーから出汁がとれるって聞くと驚きますか?
憶良 : それは、驚きです。
パクチーマン : 例えば、これ。
パクチーの根から旨味が出るんです。
根の部分をしっかり洗って水気を抜いたものからも出汁が取れます。
パクチーを買われた時には根を捨てるなんてもったいないことをせずに出汁を取ってみてほしいですね。
同時に食材の臭みをとる作用もあるんですよ。
憶良 : じゃあ、パクチーから取った出汁をしゃぶしゃぶのベースにして、しかも臭みのある猪肉とか…
パクチーマン : 鹿肉とかをしゃぶしゃぶしたりしてね。あはは、それはイケるかも。
憶良 : そんなこんなを考えると、パクチーっていう素材は、ものすごい可能性をまだまだ秘めている、面白い食材なんですね。
パクチーマン : そうなんです。 まさに私がしたい事、それがパクチーの可能性を引き出すこと。
そして、冒頭でも言いましたが常備菜として認めてほしいという事なんです。
憶良 : に、しても、なぜそこまでパクチーにこだわるのでしょうか。
パクチーマン : それは私の生い立ちにも関係がある事になるのですが。
実は私は台湾のお母さんと日本人のお父さんとのハーフなんです。
ハーフの人には共感して頂けると思うのですが、どこか日本に馴染んでいないというか、かなり昔から共存しているにも関わらず、なんだか引け目を感じずにはいられないという宿命めいたものを無理から背負わされている、みたいな。
ハーブのパクチーも、ハーフの人達と同じような立場にいるのではないかと。
そういう立場にいるパクチーに、この日本に存在するのが当たり前となって欲しい。
そういう、いわばパクチーに対する感情移入が、私の原動力となっているのかもしれません。
憶良 : つまり、パクチーの一種独特でとっつきにくいというイメージを払拭して、当たり前の存在と認められることが…
パクチーマン : 愛につながると、そう考えているのです。
そして本当は、こんなに魅力的な野菜なんだよと伝えたい。
憶良 : なるほど。なんだか、分かる気がします。
知っている様で知らないパクチー
中国では香菜(シアンツァイ)、タイではパクチー、英語ではコリアンダー。
でもなぜかアメリカではコリアンダーよりもシラントロと呼ばれています。
生の葉には強力な消化促進作用、食欲増進効果があることが知られ、夏バテに有効なんだそうです。
元々薬草としても使われているパクチーはデトックス効果も期待できるなど、体にいい野菜。
また、スーパーなんかで見るパクチーはひょろりと細いイメージですが、かなり太い株にも育つんですって。
そして、知らなかった。パクチーがこんなに美味しいなんて。
そして、いいパクチーにこんなに甘みがあるなんて。
付き合ってみると、本当にパクチーって奥深いんですね。
パクチーマン : ここにパクチー料理を食べに来てもらって、食べた物をヒントにして日頃の食事にもパクチーを取り入れてもらいたいです。
憶良 : でも、パクチーって、高価な野菜というイメージがありますから、ちょっと日常使いはむつかしいですね。
パクチーマン : そういう方が多いので、もっと安く気軽にパクチーを食べてもらえるような工夫もしています。
島根の大根島の農家さんと一緒にパクチー栽培をしたり、全国からパクチー愛に呼応してくれる農家さんに呼びかけたり。
またパクチーに親しんでもらうために銭湯と一緒にパクチー風呂のイベントを展開したり。
この店でも安価にパクチーを買って貰えるパクチー市を開催するなど、益々精力的にパクチーの魅力を伝えたいと思いますので応援を願います。
パクチーを通じて愛を運ぶため、パクチーマンは今日も「戦わない」のだ。
紹介したお店 GoGoパクチー
プロフィール
憶良(おくら) : 元ゲームプランナー、元ゲームプロデューサー。
ゲーム企画講師や駄菓子屋店長などを経て現在に至る。
休日は高速道路を使わずに名古屋から鳥取あたりの温泉に行って浸かり、道中や行先の地元スーパーで珍しい食材を買い込むと例え深夜に帰ったとしても料理する。
その際食べ歩きにも積極的と、食に対してはかなり貪欲。
「美味しいものを食べている時、美味しいものについて話している時に悪いことを考える人はいない。」という持論を持っている。
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