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 30年前に打ち立てられた将棋界の大記録に、まだあどけなさの残る中学3年生がデビューから半年で肩を並べた。年上の棋士を次々と破る快挙に、将棋ファンのみならず日本中が沸いている。21世紀生まれの14歳の勢いは、どこまで続くのか。

 終局直後、対局室でカメラに囲まれる弟子の姿を、師匠の杉本昌隆七段(48)はじっと見守った。

 藤井四段は、5歳のころ祖母に将棋を教わり、のめり込んだ。小学1年でプロ志望の子どもが集まる日本将棋連盟東海研修会(名古屋市)に入会。会で指導にあたる杉本七段は、藤井少年の指し手に目をみはった。経験を積まなければ身につかないとされる優れた大局観が、随所に見てとれたからだ。

 勝負師に欠かせない負けず嫌いの強さも際立っていた。小学低学年のころ、うっかりミスで反則負けとなり、泣き出して将棋盤にしがみついたまま離れなかった。「この子は10代半ばでプロになるかもしれない」と感じた。幼いころから詰将棋を解くのが大好きで、没頭するあまり道路脇のどぶに落ちたこともある。高い集中力で読みを鍛え、12歳のとき詰将棋解答選手権で最年少優勝した。

 小学4年でプロ養成機関「関西奨励会」に入会後、約3年で三段に到達。難関の「三段リーグ戦」を初参加で突破し、昨年10月に史上最年少でプロになった。

 まな弟子のプロ入りに「7割ぐらい勝つだろう」とみていた杉本七段は「まさかここまで勝つとは」と驚く。藤井四段が奨励会二段の時に指導役だった西川和宏六段(31)は、17連勝がかかった先月12日の対局で完敗。「勝負させてもらえなかった。どんどん強くなると思う。ついていけるよう努力したい」と話す。

 現在、名古屋市の中高一貫校に通う中学3年生。両親と4歳上の兄の4人家族で、愛知県瀬戸市に住む。読書好きで沢木耕太郎や司馬遼太郎を愛読。社会問題への関心も強く、20~30分かけて新聞を読むのが日課だ。地図や積雪量などの気象データを見るのも好きだという。

 対局日には新幹線で東京や大阪の対局場へ。勝ち進むほど日程が過密になるが、移動中は車窓の景色を見ながらのんびり過ごす。「大変に感じる部分もありますが、なんとかうまくやっていければ」と自然体だ。(深松真司、村瀬信也)

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