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トラビス・カラニック氏がUberCabという名のベンチャーをサンフランシスコで立ち上げたのは8年前のこと。今ではウーバー(Uber)は、シリコンバレー発の世界的な大企業になり、同時に多くの問題行動でも有名になった。
世界約600都市で展開する同社の企業価値は、約700億ドル(約7兆8000億円)と言われている。そして、40歳のカラニック氏の純資産は60億ドルを超えるという。
順風満帆と思われたカラニック氏とウーバーだが、この数カ月はスキャンダルにまみれ、4カ月にわたる調査の末、20人以上が解雇されただけでなく、カラニック氏も辞任に追い込まれた。
ジェットコースターのようなカラニック氏の人生を改めて振り返ってみよう。
Maya Kosoffは、この記事の過去のバージョンに貢献しています。
学校での成績は優秀で、アメフトや陸上競技をこなす運動神経の良い少年だった。しかし、幼少期に年上の生徒からいじめられたカラニック氏は、他人から圧力を受けまいと強く心に誓った。
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カラニック氏は、広告業を営んでいた起業家の母親の後を追うことになる。10代で調理用のナイフを売り歩き、18歳で初めて起業する。彼の最初のビジネスはニューウェイ・アカデミー(New Way Academy)と名付けた、SAT(アメリカの大学に入学する前に受けるテスト)の準備講座だった。
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Source:Business Insider
ウーバーがロサンゼルスで始まったとき、カラニック氏の両親であるドナルド(Donald )とボニー(Bonnie)は、初めてウーバーを利用したユーザーに与えられるタイトル「Uber Zero」を獲得した。
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カラニック氏はコンピューター・エンジニアリングを学ぶためUCLAに入学したが、1998年に退学。
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Source:Business Insider
大学を辞めたのは、クラスメートのマイケル・トッド(Michael Todd)氏とビンス・ブッサム(Vince Busam)氏と一緒に、仲間同士のネットワーク検索エンジン「Scour」を開発するためだった。
imgarcade.com
Source:Business Insider
カラニック氏はScourでフルタイムで働きながら、失業者たちを労働力として集めた。Scourは、共同創業者やその家族などエンジェル投資家に支えられた。
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Source:Business Insider
Scourは複数のエンタメ企業から訴えられ、総額2500億ドルにも及ぶ法的責任を問われると、すぐに連邦倒産法のチャプター11を申請した。
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Source:Business Insider
カラニック氏は、ネットワークソフトウエア開発企業Red Swooshで再起を図る。しかし、またもやトラブルに見舞われる。Scour共同創業者で、旧友のマイケル・トッド氏と対立関係に陥ったのだ。ニューヨークの同時多発テロ(9.11)後に株式市場が暴落したとき、Red Swooshは従業員の所得税分を企業の再投資に回し、法の境界線を越えてしまう。 結果、共同創業者たちは仲たがいし、Red Swoosh社はその後、上場することも企業を売却することもできなくなる寸前に陥った。
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Source:Business Insider
その後、両親が住む家に戻ったカラニック氏は、より多くの資金を調達。2007年には、Red Swoosh社をアカマイ社(Akamai)に2300万ドルで売却し、カラニック氏は億の金を手にする。
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億万長者(ミリオネア)になったカラニック氏は、世界旅行に出かけた。スペイン、日本、ギリシャ、アイスランド、グリーンランド、オーストラリア、ポルトガル、セネガル、それにカーボベルデ。ハワイとフランスには2回ずつ、旅をした。
Source:Business Insider,Instagram
2008年、「LeWeb テクノロジー・カンファレンス」に出席したとき、カラニック氏はウーバーにつながるビジネスアイデアを耳にする。そして、ボタン1つで黒塗りの配車サービスのコストを下げる、新たな方法を考え出していく。
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Source:Business Insider
カラニックのタクシー嫌いは、過去の経験によるものだ。ある時、運転手と口論になったカラニック氏は、腹を立てた挙句、動く車から飛び降りた。
Robert Johnson
Source:GQ,Fast Company
ギャレット・キャンプ(Garrett Camp)氏とオスカー・サラザー(Oscar Salazar)氏、そしてコンラッド・ウェラン(Conrad Whelan)氏の3人が、ウーバーの原形であるUberCabを築いた。カラニック氏の当時の肩書きはチーフ・インキュベーターだったが、むしろ企業を拡大するための「大胆なアドバイザー」の役割を演じた。UberCabは、通常のタクシー料金の1.5倍の金額がかかるが、サンフランシスコ市内であればボタン1つ、もしくはテキストメッセージで、車を呼ぶことができるというものだった。
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2010年初め、ライアン・グレイブス(Ryan Graves)氏がUberCabの事業責任者として取締役会に参加。その直後、CEOに指名される。
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Source:Business Insider
UberCabは2010年6月、サンフランシスコで始まった。利用者の大きな人気を集めたが、投資家からの出資の申し出はなかなか訪れなかった。
ウーバーのアプリの初期バージョン
Source:Business Insider
しかし2010年夏、ウーバーは投資家からの資金調達に成功した。ファースト・ラウンド・キャピタルやカラニック氏の友人であるクリス・サッカ(Chris Sacca)氏、ナップスターの共同創業者ショーン・ファニング(Shawn Fanning)氏が125万ドルを出資したのだ。ウーバーのVC投資による調達額は、115億6000万ドルに及ぶ。
ナップスターの共同創業者ショーン・ファニング氏
Reuters
Source:Business Insider
サンフランシスコの後、ウーバーはアメリカ国内で急速にサービスを拡大させていった。2011年5月にはウーバー最大のマーケットであるニューヨークでサービスを開始、1日平均16万8000件以上の利用がある。ウーバーは現在、北米260以上の都市で展開している。
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Source:Business Insider,Business Insider
ウーバーの直近の企業価値は690億ドル。世界で最も価値の高い非上場テック企業だ。
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Source:Crunchbase,Business Insider
カラニック氏は2015年、ウーバーの共同創業者であるギャレット・キャンプ(Garrett Camp)氏、ライアン・グレイブス(Ryan Graves)氏とともに、フォーブスの世界長者番付に初めてランクインした。カラニック氏とキャンプ氏の資産はそれぞれ63億ドル、グレイブス氏は15億8000万ドルで、保有株の量の違いが金額に表れている。
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Source:Forbes
2015年初め、ウーバーはペンシルベニア州ピッツバーグで自動運転車の走行テストを始める計画を明らかにした。プロジェクトはその後、サンフランシスコとアリゾナ州まで拡大。カラニック氏は、このプロジェクトにウーバーの未来がかかっているとして、特に情熱を注いでいる。
ウーバーの自動走行テスト車
Uber
カラニック氏は、彼をよく知る人々によれば、無鉄砲で傲慢。こうした彼の性格がウーバー成功の理由だと考えられてきた。
Re/Code
ウーバーのスキャンダルが最初に報じられたのは2014年。GQのインタビューで、カラニック氏は、同社のサービスを女性を誘惑するのに役立つとして“boob-er”と呼んだ。(編集部注:“boob”は女性の胸を指す俗語)
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Source:GQ
2017年2月、ウーバーの元従業員スーザン・ファウラー(Susan Fowler)氏は自身のブログで、社内でセクハラを受けたことや性的偏見にさらされたことを告白。カラニック氏はすぐさま、内部調査を行うよう指示し、元司法長官エリック・ホルダー氏に調査を依頼した。
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Source:Business Insider
それ以降、ウーバーに悪いニュースが次々と降りかかった。今年2月、ニューヨーク・タイムズは同社の複数の従業員が社員旅行中にコカインを使用した疑いがあると報じ、また、複数の女性への痴漢行為で幹部が解雇された。
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Source:The New York Times
今年3月には、カラニック氏がウーバーのドライバーと運賃の値下げをめぐり、激しく口論する様子を捉えた車載カメラの映像がネットに流れた。カラニック氏は謝罪し、同社のリーダーシップ強化のため、新たにCOOを雇うと述べた。しかし、今だこのポジションは埋まっていない。
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Source:Business Insider
以前は自身の移動に、必ずウーバーのサービスを利用していたカラニック氏だが、近頃は専属のドライバーを雇っている。
(Photo by Kevork Djansezian/Getty Images)
Source:The New York Times
カラニック氏はバイオリニストのGabi Holzwarthと2年間にわたり交際していたが、2016年8月に破局。Holzwarthは2017年3月、カラニック氏との交際中に目撃した女性差別を証言した。その中にはウーバーの複数の幹部が受けた韓国のカラオケ・バーでの接待も含まれている。
Paul Morigi/Getty
また、ウーバーは最近、自動運転技術をめぐり、グーグルとの訴訟を抱えている。グーグルは、ウーバーがグーグルの自動運転技術の核である「カバーアップ・スキーム」を盗むため、グーグルの元従業員アンソニー・レバンダウスキー(Anthony Levandowski)氏を引き抜いたと主張。ウーバーは今年4月、レバンダウスキー氏を解雇した。
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Source:Business Insider,Business Insider
5月、カラニック氏は悲劇に見舞われる。彼の両親がボート事故に遭遇したのだ。母親は死亡、父親も深刻な状態で病院に運ばれた。カラニック氏は6月初め、自身のFacebookに、父親の状態が徐々に回復していると書いた。
Chris Ratcliffe/Bloomberg via Getty Images
Source:Business Insider,Business Insider
また、ウーバーは同月、215件に及ぶハラスメント(嫌がらせ)の社内調査の結果を受け、20人以上の従業員を解雇。4カ月にわたる調査はアメリカの元司法長官エリック・ホルダー氏の事務所が行い、その結果は13ページの報告書として公表された。報告書は、ウーバーの企業文化の見直しや幹部のアカウンタビリティ向上、社内のダイバーシティ推進などを求めている。
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Source:Business Insider,Business Insider
カラニック氏は今月13日(現地時間)、休職を表明。その理由を「自分自身の問題に取り組む」とともに、最近身内に起きた不幸に向き合うためとしていた。 同社は復職後、カラニック氏の権限は縮小され、新たなCOOに移されると述べた。
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だが、20日夜半、カラニック氏が辞任するというニュースが流れた。「私はウーバーを世界の何よりも愛している。だが、プライベートで困難な時期にある今、私は投資家たちからの要求を受け入れ、辞任する。そしてウーバーは余計な問題に煩わされるのではなく、本来のビジネスに戻る」とカラニック氏は声明の中で述べた。
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ウーバーの投資家の間で「数時間のドラマ」があり、5人がカラニック氏の即座の辞任を求めたと伝えられた。次期CEOに推薦されていると言われるビル・グーレイ(Bill Gurley)氏は、「カラニック氏は、歴史に名を残す人物だ。世界にこれほど影響を与え続けた起業家はいない」とツイートした。
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カラニック氏はどうなるのだろうか? それはまだ分からない。カラニック氏は多くの議決権を持っており、取締役には残るようだ。「カラニックは、常にウーバーを最優先してきた。辞任は大きな決断であり、彼の献身とウーバーを愛する気持ちの表れだ。会社から離れることで、個人的な悲劇を癒やす時間を取っており、またウーバーの歴史に新たな一章を加える機会を与えてくれた」と経営陣は声明の中で述べた。
Spencer Platt/Getty Images
[原文:The life and rise of Travis Kalanick, Uber's controversial billionaire CEO]
(翻訳:編集部)