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市場が円高を警戒するなか、「ドル円レート」はどう動くか
株価を当てるのと同じくらい難しいが…

日米の金融政策と為替の動き

リーマンショック直後の2009年頃から、日本の株価指数(日経平均株価やTOPIX)と為替レート(ドル円レート)との相関性は極めて高い。

日銀による積極的なETF購入によって、従来と比較すると、株価指数の水準は現在の為替レート水準との比較ではやや高いところに位置しているようにみえるため、「真の株価水準が見えにくい」という批判もあるが、為替レートと株価の相関は現在も生きており、直近で日経平均株価が2万円を超えたのも、円安がきっかけであった。

ところで、将来の株価を当てるのも将来の為替レートを当てるのも同じくらい難しいが、為替レートの方が、マクロ経済の動向、特に経済政策の動向を反映する度合いが強いと思われるため、トップダウン・アプローチ(マクロ経済動向から将来の価格を予想する)を行う場合には、為替レートの将来予想の方がイメージがわきやすい。

この場合、マクロ経済動向の中でも特に為替レート(ドル円レート)の動きに強い影響を与えるのが、日米の金融政策である。

 

例えば、2012年終盤から2013年前半にかけての円安は、日本の政権交代とそれによる「リフレーション政策」遂行の気運が高まったためであったが、特に、日銀による「量的質的金融緩和政策」が大幅な円安をもたらしたことは記憶に新しい。

しかも、この「量的質的金融緩和政策」の続く中、短期の政策金利ばかりか、10年物国債利回りといった長期金利までもがゼロパーセント近傍で推移しているため、為替レートの変動に日本の金利が影響を与える余地はかなり小さくなっている。

例えば、よく、メディアでは、「日米2年物国債利回り格差が開いたので今後は円高になる可能性が高い」というようなコメントが出るが、日米の2年物国債がともにゼロパーセント近傍で推移している中、両者の金利差はほとんど「ミクロの世界」であり、その「ミクロ」の金利差をとるために為替レートが時にして2ケタ台の変動をするというのはあまりに滑稽である。

そこで、金利に代わってドル円レートに強い影響を及ぼしてきたのが、お金(日本で言えば「円」)の「量」、特に、日銀が供給する「マネタリーベース」と呼ばれるものである。