ヤフー 視覚障害者に対応した選挙の特設サイト公開へ

ヤフー 視覚障害者に対応した選挙の特設サイト公開へ
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東京都議会議員選挙が23日告示されます。IT大手のヤフーは、視覚障害者がインターネット上で選挙の情報に十分にアクセスできない現状を変えようと、視覚障害者に対応した特設サイトを作り、22日から公開することになりました。
特設サイトのトップページをクリックすると、真っ黒な画面が現れます。「何もメッセージが出ないと思われた方へ」という右隅の文字をクリックすると、その理由が示されます。

総務省の調査によりますと、視覚障害者の9割がインターネットを利用し、文字を音声にして読み上げるソフトなどを使って情報を得ていますが、候補者の訴えや経歴を記した選挙公報は、ホームページ上では文書全体を画像化した「PDFファイル」で掲載されているため、文字を識別できず、視覚障害者はそのままでは内容を知ることはできません。

東京都選挙管理委員会によりますと、選挙公報の改ざんを防ぐためPDFファイルで「そのまま」掲載することを求めた総務省の通知を受けて、こうした対応を取っているということで、サイトではこうした現状が説明されています。

サイトでは、都議会議員選挙の告示後に掲載される各候補者の選挙公報を文字化し、音声読み上げソフトによって内容を知ることができるようにするということです。

サイトの開発に当たったヤフーの鈴木宏一さんは「視覚障害者を取り巻く問題を知ってもらいたいと考えました。インターネットを使って情報の格差を乗り越える一助になればと思っています」と話しています。

都や国の対応

東京都選挙管理委員会は、候補者から提出された経歴や訴えなどを記した原稿をもとに選挙公報としてまとめて各世帯に配布しているほか、選挙管理委員会のホームページにも掲載しています。
しかし、ネット上の選挙公報は文書全体を画像化したPDFファイルの形式で掲載され、音声の呼び上げソフトが文字を識別できないため、視覚障害者はそのままでは書かれている内容を知ることはできません。

総務省は5年前(平成24年)、選挙公報が改ざんされるのを防ぐため、ホームページ上にはPDFファイルで「そのまま」掲載することなどを求める通知を全国の自治体に出しました。

これを受けて、東京都選挙管理委員会は「選挙公報には写真やイラストなども掲載されているため、文字だけを音声化すると候補者間の公平性が保たれないおそれがある」として、画像化したPDFファイルを掲載しているということです。

都選挙管理委員会は、選挙公報を点字にしたり、テープに録音して配ったりして視覚障害者にきめ細かく対応しているとしていますが、「総務省の見解や法的な根拠なしに、独自に選挙の啓発活動を行うことには限界がある」と説明しています。

専門家「対応の見直し必要」

国連の障害者権利委員に日本人として初めて選ばれ、障害者の政策に詳しい、静岡県立大学教授でみずからも全盲の石川准さんは「日本は公共の建物や交通機関のバリアフリーなどは頑張っていると思うが、情報へのアクセスに関する法制度や政策は立ち後れている」と指摘しています。そのうえで、石川さんは「日本も批准している障害者権利条約では、政治への参加を権利として保障することを認めているため、国は視覚障害者の選挙公報へのアクセスを可能にするべきだ」と述べ、これまでの対応を見直す必要があるという考えを示しています。