(英フィナンシャル・タイムズ紙 2017年6月19日付)

チェコのアンドレイ・バビシュ財務相(左)とオーストリアのセバスチャン・クルツ外務相(2015年2月撮影、肩書きは当時のもの)。 Photo by Bundesministerium für Europa, Integration und Äußeres, under CC BY 2.0.

 チェコ出身の亡命作家ミラン・クンデラ氏は1984年に発表した「中央ヨーロッパの悲劇」で、母国とその近隣諸国の窮状をこう嘆いた。これらの国は文化的には欧州の西部、地理的には中央に位置するが、政治的には東部に位置している――。

 原則としては、チェコスロバキア、ハンガリー、ポーランドでの1989年の共産主義崩壊とこれら中欧3カ国による1999年の北大西洋条約機構(NATO)加盟、2004年の欧州連合(EU)加盟で、この問題は消え失せた。脚本家でチェコ大統領を務めた故バツラフ・ハベル氏が好んで言ったように、チェコスロバキア――1993年にチェコ共和国とスロバキア共和国に分割された――とその近隣諸国は「欧州に戻った」。

 だが、プラハの政党が10月の議会選挙に向けて準備を進める中、一部のEU諸国の政府は、「欧州に戻った」にもかかわらず、チェコが今再び片足を玄関の外に出していると感じている。

 1つの懸念材料は、EUが処方した難民希望者の国別クオータ(割り当て)に対するチェコの反対姿勢だ。チェコはEUの2014~20年予算で地域支援基金から240億ユーロ分配されていることから、西欧諸国はこの態度を、EU全体としての連帯意識の欠落と見なす。

 2015年のクオータ制導入以来、亡命希望者を合計でも12人しか受け入れていないチェコは、9月の制度失効まで、もう1人も受け入れないと発表した。政治的にどんな色になろうとも、次の政府がこの強硬姿勢を少しでも後退させる可能性は低い。

 もう1つの懸念材料は、EUに対する国民の無関心だ。2014年の欧州議会選挙に参加したのはチェコの有権者のわずか18.2%だった。さらに言えば、チェコ人はユーロ圏参加に対する政府の消極的な態度に満足しているように見える。